エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.1059
2021.09.30 更新
文:撮影・松枝 清顕(解説)/ 検証セッション・池西 樹
Core i9-11900K、Ryzen 9 5950Xと、ハイエンドCPUに対しても定格動作であれば十分な冷却性能を発揮する事が分かっている。テストセッションの最後に、Ryzen 9 5950Xと同じTDP105Wながら、CCDが1基のため熱処理が難しいRyzen 7 5800Xでもテストを実施していこう。
Ryzen 7 5800Xでは、1つのCCDに熱が集中するため、Ryzen 9 5950Xより熱処理は格段に難しくなるがしっかりとブースト機能を発揮することができるだろうか |
「OCCT 9.1.0」では途中4回突発的に温度が上がるものの、その他は65℃前後で推移。動作クロックも4.60GHzまで上昇している。また「CINEBENCH R23」では、CPU温度はCPUが許容する最高値90℃まで上昇するものの、動作クロックは4.50GHzで安定したグラフ。こちらもブースト機能の能力を十分に引き出すことができている。
ファン回転数は、いずれもほぼ最高回転の1,550rpm、騒音値は42dBA弱となり、他のCPUと全く同じだった。この結果から、定格駆動のハイエンドCPUを無理なく冷却できるCPUクーラーである事が分かった。
最後に非接触型デジタル温度計によるヒートシンクのポイント別温度と、サーモグラフィの結果を確認していこう。CPUはCore i9-11900Kの定格駆動で、ストレステストは「CINEBENCH R23:Minimum Test Duration:30 minutes」を使用している。
高負荷時のポイント別温度計測結果 |
アイドル時のサーモグラフィ結果 高負荷時のサーモグラフィ結果 | 高負荷時のサーモグラフィ結果 |
ポイント別温度を確認するとCPUに触れているベースプレート上部の温度が42.5℃で最も高く、CPUから離れるに従って徐々に下がっていく順当な結果。そしてサーモグラフィの結果を確認すると、ヒートパイプの温度が周辺のヒートシンクより明らかに高く、発生した熱が効率よく移動しているようだ。なお、中心のモーター部は高負荷時の回転上昇に比例し、温度が高くなっている事を表している。
確かに外観はよく見かけるスタイルであるし、隣接するメモリの干渉を回避する設計は、多くの既存モデルでも採用されている。こう並べると、変哲のないサイドフロー型CPUクーラーだが、やはり130mmファンの採用と、それに見合ったヒートシンクの組み合わせがイチバンの見どころだろう。
冷却性能については、無茶をしなければハイエンド志向のCPUも十分に冷やすし、爆音で強制的に熱を抑え込むという手荒な感じもない。イルミネーションで存在をことさら主張する事もない「Silent Cooler OWL-SC200」は、与えられた役割をたんたんとやってのける”優等生タイプ”といったところ。扱い易さは自作経験の比較的浅いユーザーにも優しい。
定格を超える用途や常用にはまるで不向きだが、実直な仕事ぶりに安心感が備わり、純正クーラーからの乗り換え用途にはうってつけではないだろうか。このような製品はある意味貴重で、ハイエンド志向やヘビーユーザーをよそに、確実にニーズが存在するものだ。
協力:株式会社オウルテック