エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.1072
2021.11.09 更新
文:撮影・こまめ
「UL Procyon」はアドビのクリエイター向けソフトの快適さを計測するベンチマークテストだ。こちらは重いデータや高度な処理を行なうため、ハイアマチュア/プロ向けの作品作り向きと考えられる。比較用のデータは前述の「PCMark 10」と同じく旧世代GPU搭載のエントリー向けクリエイターノートPC(Intel Core i7-1185G7/16GBメモリ/1TB NVMe SSD/NVIDIA GeForce GTX 1650 Ti with Max-Qデザイン、比較機①)と、ミドルレンジのクリエイター向けノートPC (Intel Core i7-10875H/32GBメモリ/1TB NVMe SSD/NVIDIA RTX 3060、比較機②)の2機種だ。
「Photo Editing Benchmark」は画像加工に関するテストを行なう。「Image Retouching」は「Adobe Photoshop」メインでメモリとGPUの性能が影響しやすく、「Batch Processing」は「Adobe Photoshop Lightroom Classic」メインでCPUとストレージの性能が影響しやすい。「Video Editing Benchmark」は「Adobe Premiere Pro」を使ったテストで、フルHD (H.264)および4K (H.265)動画の出力にかかった時間が計測される。こちらの結果は総合スコアのみだ。
このテストでは前述の「PCMark 10」の結果に反して、「Photo Editing Benchmark」全体で優秀な結果が出ている。おそらく32GBの大容量メモリと、超高速なPCI-Express4.0 M.2 SSDの効果が強く影響しているのだろう。画像や写真の加工であれば、エントリー向けGPU搭載の「Summit E16 Flip A11U」でも十分実用的に使えると考えていい。
しかしCPUとGPUの性能が強く影響する「Video Editing」では、かなり控えめな結果となった。旧GPU搭載機種のスコアを下回っていることから、テスト時になんらかの問題が生じたのかもしれない。前述のテストと同様、ドライバ関連の相性である可能性もある。
「CINEBENCH R23」のマルチコアテストを10分間実行し続けた際のCPU温度とCPUクロックを計測したところ、平均としてはCPU温度が82.3℃、CPUクロックが平均3.77GHzだった。テスト開始直後はクロックが4.5GHz前後まで上昇したが、その後は3.7GHz前後を推移している。CPUベンチマークの結果は優秀ではあるものの、高負荷の状態が長時間続く場合は熱対策としてクロックを抑えているようだ。
「CINEBENCH R23」のマルチコアテストを10分間実行し続けた際のCPU温度およびCPUクロックの推移 |
バッテリー駆動時間の公称値は、最大11時間とされている。ただしこれは「JEITAバッテリ動作時間測定法 (Ver. 2.0)」と呼ばれる測定法に基づいた省電力状態における比較用の結果で、実際の利用を想定した数値ではない。
結果は3時間50分で、公称値の最大11時間に比べてかなり短い結果となった。しかし今回のテストでは実利用を想定しているため、極端な省電力設定は行なっていない。消費電力の大きいGPUは有効のままで画面の明るさも40%までしか下げていないため、このような結果となったのだろう。公称値よりも短い結果だが、高性能パーツが使われていることを考えれば妥当な結果だ。GPUを無効化するなどの省電力設定を施せば、多少は駆動時間が延びるだろう。
ビジネス向けの2-in-1ノートPCと言えば、GPUなしでコンパクトな13.3型タイプが多い。これは外出先での会議やプレゼンなどで、相手に画面を見せることを主な目的としているためだ。文章や数値データ主体の資料を使うのであれば、それで十分だろう。
だが携帯性重視の2-in-1は、クリエイティブな業務に携わるビジネスパーソンにとっては物足りないに違いない。画像や動画、3Dデータなどを扱うのでれば、高いパフォーマンスや美しい映像のディスプレイ、そして直感的に使える扱いやすさが必要だ。ハイスペックな大型2-in-1である「Summit E16 Flip A11U」は、そのような用途にうってつけの機種だと言っていい。効率的なクリエイティブワークを目指す人には、ぜひ検討していただきたい。
協力:エムエスアイコンピュータージャパン株式会社