エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.1113
2022.03.05 更新
文:撮影・編集部 松枝 清顕
CPUクーラーは何を選べばいいだろう。グラフィックスカードは目的や価格帯が明確だけにある程度絞りやすいが、CPUクーラーは必ずしも性能と価格が見合わない事は往々にしてある。明確な”型落ち”という概念がないところも選択を迷わす要因のひとつだろう。日頃多くの製品に触れる筆者でさえ、製品選びだけは悩ましいところだ。
おさらいすると、Draco 10は高さ165mmまでのCPUクーラーが搭載できる。ミニタワーとは言え、ミドルタワー並の有効スペースが確保されており、中~上級レベルのサイドフロー型CPUクーラーが選択肢になる。エアフローに最適化されたPCケースだけに、風の力に頼る空冷が似合うはずだが、ここでは担当者のお勧めに従い、オールインワン型水冷ユニットを搭載してみよう。
用意したのはAntec「Symphony240 ARGB」。簡単にキャラクターを紹介しておくと、120mm冷却ファン2基を搭載する240mmサイズラジエターを採用。ラジエター厚27mmと120mmファン厚25mmを足すと、最低でも厚さ52mm以上の搭載スペースが必要になる。ラジエターが搭載できるのはフロントまたはトップだが、ここはセオリー通りトップ部を選択し、搭載作業を進めた。
開口部および内部に妨げるものがないだけに、搭載作業は至ってスムーズ。もしトップパネルが着脱式なら120点だが、それがかなわないとて、特別なスキルを必要としないだけにマイナス点は見当たらない。断り書きのあったメモリ高(134mm以内)も特に問題なく、メモリスロット上空のクリアランスは十分に確保できていた。
ラジエターを固定するネジ穴は約45mmのスリットタイプ。ラジエターの搭載位置が調節できるため、チューブの取り回しやスルーホールの位置、見映えなどを考慮して固定しよう |
拡張カードの有効スペースは、フロントファンが無い状態で360mm。そこで奥行き319mmのハイエンド志向グラフィックスカードGIGABYTE「AORUS GeForce RTX 3080 MASTER 10G」を用意し、搭載テストを試みた。拡張スロットを2本占有するため、切り取りタイプで塞がれた状態の拡張スロット金具を2つ取り外し、同梱のインチネジで固定した。
ハイエンドグラフィックスカードをチョイスしたところで、電源ユニットを奥行き170mmで80PLUS TITANIUM認証Antec「SIGNATURE Titanium 1000W」(型番:X9000A505-18)にチェンジ。 |
グラフィックスカードからフロントパネルまでの空きスペースは、実測で約45mmだった。タイトではあるものの、十分搭載は可能。25mm厚の冷却ファンとの共存も問題ない。さらにボトムカバーまでの距離は、厚さ70mmのグラフィックスカードに対し約20mmを確保。補助電源ケーブルもボトムカバー天板部のスルーホールを使えば、最小限の露出で接続できている。ミニタワーPCケースを忘れるほどのクリアランスは、グラフィックスカードにとっては思いの外、快適な居住空間ではないだろうか。
最近のPCケースについて、本当に粗悪品が減ったなぁと思う。自作PCブームの頃、今よりも倍のスピード(注※著者体感)で、新製品がバンバンとリリースされていた。冷静に振り返ると、外観に注力するあまり詰めが甘く、内部構造に難があったり、エッジで指を切って知らぬ間に血だらけになっていたり。そんな踏んだり蹴ったりのPCケースは市場からほぼ消え去った。
ここで何が言いたいのかというと、今回ご紹介したDraco 10は、市場想定売価税込約7,000円で購入できることへのオドロキだ。出来映えはAntecクオリティのそれで、工作精度は一定のラインが維持されており、中堅モデルとなんら違いはない。奇をてらわない設計も印象を良くしているが、ミニタワーを思わせない組み込みのしやすさは10点満点。ストレージ収納力については限られた内部容積だけに、ミニタワーならこんなところだろう。不満があるならミドルタワーを選択するだけだ。各構成パーツのクリアランスも十分だし、冷却性能も自由にカスタマイズできる余地が設計に盛り込まれている。
冒頭で触れた黎明期の粗悪品だって、7,000円以上の売価は普通だった。ハイエンド冷却機器よりも安価という事実は腑に落ちないが、この売価でこれだけの製品が販売できるメーカーの努力は素直に感心しかない。
協力:Antec
株式会社リンクスインターナショナル