エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.1145
2022.05.25 更新
文:編集部 絵踏 一/撮影:松枝 清顕
素晴らしいパフォーマンスを見せてくれた「G-Master Hydro Z690 Extreme/D5」だが、その構成のキモと言えるデュアル水冷の効果はどうだろう。まずは高負荷時におけるCPUの挙動を確認するため、ストレステストの「CINEBENCH R23:Minimum Test Duration:30 minutes」を実行し、その際のログデータをチェックしていく。
ベンチマーク中のPコアクロックは、ほぼ4,700MHzをキープする安定したもので、クロックが落ち込むシーンはまったくなし。そしてCPU温度も概ね70~75℃程度であり、かなり動作温度が抑えられている。「G-Master Hydro Z690 Extreme/D5」は出荷時にリミットがPL1:155W、PL2:241Wに設定されているが、そのおかげで性能の落ち込みや過度の発熱が抑制されているというわけだ。
CPU高負荷時のクーラー動作音は、おそらくPCケースの定位置になるであろう足元にある状態なら、ほぼ気にならないレベル。パフォーマンスと騒音を天秤にかけた上で、バランスの取れた設定が選択されているということだろう。
グラフィックスカードの方は、ストレステストとして「3DMark Time Spy Extreme Stress Test」を動作させ、グラフはその際の挙動を示したものだ。注目は最大2,000MHzに迫る高クロック動作で、ベンチマーク中を通しても1,900MHz付近で安定して推移。それでいて高めのクロックながらGPU温度は85℃前後と、こちらもバランスの良い挙動を示している。高水準の冷却機構を活かし、より高いパフォーマンスを引き出すというコンセプトは達成されているようだ。
ただし一定の負荷を超えると動作音が目立って大きくなり、マシン内部に存在する合計10基のファンが揃って相応のノイズを奏でてくる。ゲームの音響次第では気にならないかもしれないが、最高峰のパーツを組み込むことによるトレードオフとして、ある程度の騒音は許容する必要があるだろう。
最後はハイエンドパーツを詰め込んだ「G-Master Hydro Z690 Extreme/D5」の消費電力をチェックし、すべての動作検証を締めくくろう。ストレステストには「3DMark Time Spy Extreme Stress Test」を使用し、実行中の最高値を高負荷時、起動後10分間何もせず放置した状態をアイドル時として、ワットチェッカーによる計測を行った。
さすがはCore i9-12900KSとGeForce RTX 3090 Tiを搭載するシステムだけはあり、高負荷時の消費電力は871Wに達していた。基本構成の850W電源ではまかなえない容量であり、1000W電源以上の組み合わせを要求するカスタマイズメニューの警告は、やはり間違っていなかったというわけだ。
昨年のGeForce RTX 3090/3080登場に合わせて、サイコムは水冷クーラーの大幅な刷新を行っている。120mmラジエターとブロアーファンを組み合わせた従来型クーラーでは満足のいく冷却効果が得られなかったため、新たに240mmラジエターを備えた新型クーラーに移行。カード側にも3連ファンクーラーを備える、大掛かりな冷却機構を完成させた。
ラジエターの放熱にNoctuaのプレミアムファンを採用するこのクーラーの冷却性能は確かで、TGP450Wに達する最新モンスターGPUのGeForce RTX 3090 Tiも余裕で冷却。リファレンススペックとほぼ変わらないカードがベースながら、強オーバークロックモデル同等の高クロック動作を実現している。
ここまで完成度の高い水冷グラフィックスカードを単体製品で見つけることは難しく、それを搭載していることが「G-Master Hydro」シリーズの魅力でもある。個人レベルでは実現が難しいデュアル水冷マシンをこれ以上ない形で組み上げてくれる、そのキモになる要素がこだわりの水冷グラフィックスカードというわけだ。
そこへ“世界最速のデスクトップ向けCPU”を謳うCore i9-12900KSを水冷仕様で加えれば、最強スペックのロマン構成が完成する。自作派のエンスージアストも唸る、老舗BTOメーカーのサイコムだけが作れるデュアル水冷マシン。今回の構成を再現しようとすれば貫禄のプレミアム価格は避けられないが、かけたコスト以上の満足感が得られること請け合いだ。
協力:株式会社サイコム