エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.1168
2022.07.12 更新
文:撮影・編集部 松枝 清顕
ここからはHAF 700 EVOの複雑な内部構造を解説していく。特徴的なマルチチャンバーレイアウトが織りなす各エリアの最適化と、広い内部容積を無駄なく使う設計は、イマドキのハイエンドPCケースそのものだ。満載に詰め込んだ仕掛けの数々をご紹介しよう。
HAF 700 EVOは広大なスペースを生かし、SSI-EEB、SSI-CEB、E-ATX、ATX、MicroATX、Mini-ITXの各マザーボードが搭載できる。つまり特殊なEmbedded向けサーバーボードを除けば、全ての規格に対応しているというワケだ。実際どれだけ広いかと言えば、試しに170mm四方のMini-ITX規格マザーボードを固定したところ、おそらく合計6枚は搭載できるであろう圧倒的な広さが見てとれる。現行モデルでここまでの広さがあるPCケースは希少で、HAF 700 EVOはコンシューマ向け最大クラスの筐体である事は間違いない。
トレイの広さを知るべく、GIGABYTE「B550I AORUS PRO AX」を搭載してみたところ。Mini-ITX規格がこんなにも小さく見える |
マザーボードトレイ右横に固定されている「Infinity Mirror」。視覚的な演出向けの”小道具”で、最も効果的な使い方はのちほどご紹介しよう |
ここまでHAF 700 EVOに触れて気が付かされたのは、「ツールフリー」が設計のテーマにあること。プラスチックコックのようなアクションで、ロックと解除を行うシンプルな機構は、主にドライブを固定するブラケットに採用。決して頻度に比例しているワケではなく、主に組み込み時における作業のし易さや、さらにレイアウトを変更する際の手軽さと利便性を両立したものだろう。ユーザーに工具=ドライバーを握らせないという設計ポリシーは、HAF 700 EVOのこだわりと言えよう。
随所に見られるツールフリーのロック機構。HDDを固定したブラケットを垂直状態でもしっかり固定できるだけの剛性が確保できている |
HAF=Hi Air Flowとあって、HAF 700 EVOが最も得意としているのが、PCケースとしての冷却能力だろう。熱源に対して直接接触するヒートシンクとは異なり、直接風を当てたり、風の道(エアフロー)を最適化する事で、筐体内部における熱ごもりを改善する事ができる。結果、安定した動作や精密機器の長寿命化にも貢献。ここからはPCケースの評価基準として重要な、冷却ファンレイアウトを見ていこう。
まずはフロントパネルを外し、シャーシ側の冷却ファンをチェックしよう。出荷時よりSickleFlow PWM Performance Ed. 200mmファン2基が装備され、フロント面の大部分が大型インペラに占有されている。いかにも大風量を生み出しそうなシステムだが、採用ファンがカタログモデルの「SickleFlow 200 ARGB」(型番:MFX-B3DN-08NP2-R1)だとすれば、回転数は0~800rpm±10%、騒音値15.7dBA、風量102.8CFMとなる。なおAddressable Gen 2 RGBを搭載し、専用ソフトウェア「MasterPlus+」の制御にも対応する。
また任意で120/140mmファン3基への換装も可能で、最大360/420mmサイズラジエーターの設置にも対応。構成によってカスタマイズすればいい。
後方スライドによりトップパネルを外し、シャーシ面の天板に着目すると、通気孔と冷却ファン固定用のスリット(ネジ穴)が確認できる。トップパネル部はいかにも大型PCケースといった様相で、幅279mm(本体部)のスペースを生かし、120mmファンなら最大6基、または140mmファン3基、または200mmファン2基が増設できる。
もう少し説明が必要なのは、120mmファンの最大搭載可能数の6基だろう。これまでCube型サーバーケースのようなスタイルで採用例があったが、コンシューマ向けフルタワーPCケースの装備としては珍しい。広大な天板のフィールドを生かし、120mmファンを2列/縦3基ずつ増設が可能で、これに合わせラジエーターも360mmサイズを並べて搭載できてしまう。本格水冷の中でもハイエンドかつ上級者が選択する構成だが、将来的なアップグレードを見越した”十分過ぎる備え”となるだろう。
120mmファン6基をフル装備するには、サイドファンの480mmブラケットを外す必要がある。また資料によるとラジエーターは最大100mm厚までのサポートとされている |