エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.1182
2022.08.23 更新
文:編集部 池西 樹/撮影:松枝 清顕
続いて人気FPSゲームの最新作「Far Cry 6」のゲーム内ベンチマークのスコアを確認していこう。画質は“最高”、解像度は1,920×1,080ドット、2,560×1,440ドット、3,840×2,160ドットの3種類で計測を行った。
これまでのゲームに比べるとRyzen Threadripper PRO 5965WXが健闘しており、4K解像度ではRyzen 9 5950Xとほぼ同等、WQHD解像度やフルHD解像度でもその差は約8%にとどまる。またRyzen Threadripper PRO 3995WXでは、フルHD解像度でも90fpsをクリアできないのに対して、Ryzen Threadripper PRO 5995WXではWQHD解像度で93fps、フルHD解像度では99fpsまでスコアが上昇しており、GPUの負荷がかなり高いゲームでもCPU性能の影響があることがわかる。
ゲーム系ベンチマークのラストは、オープンワールド型アクションゲームの大作「Watch Dogs Legion」のゲーム内ベンチマークのスコアを確認していこう。グラフィック品質は“最大”、解像度は1,920×1,080ドット、2,560×1,440ドット、3,840×2,160ドットの3種類で計測を行っている。
GPUへの負荷が高く、CPUがボトルネックになりにくいベンチマークだが、Ryzen Threadripper PRO 3995WXでは、WQHD解像度以下では完全にボトルネックが発生してスコアが伸び悩む。一方、Ryzen Threadripper PRO 5995WXではWQHD解像度まで、Ryzen Threadripper PRO 5965WXならフルHD解像度でもRyzen 9 5950Xに肉薄しており、CPUの差をほとんど感じることはないだろう。
続いて消費電力を確認しておこう。アイドル時は起動直後10分間放置した際の最低値を、高負荷時は「CINEBENCH R23」実行時と「ファイナルファンタジーXIV︓暁月のフィナーレ」実行時の最高値を採用している。
メニーコアCPUはどうしてもメインストリーム向けCPUに比べるとコア数が多いためアイドル時の消費電力が高くなりがちだが、Ryzen Threadripper PRO 5000WXシリーズはRyzen Threadripper PRO 3995WXから30W近く削減されている。
また高負荷時の消費電力を確認すると「CINEBENCH R23:マルチコア」ではRyzen Threadripper PRO 5965WXでもRyzen Threadripper PRO 3995WXより高く、CPUがフルロードするような処理では確実に増加している。ただし、「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ」では、Ryzen Threadripper PRO 5995WXでも25W以上低い結果で、シングルスレッド処理や比較的負荷の軽い処理を行う場合のワットパフォーマンスは大幅に改善されている。
また「CINEBENCH R23」のマルチコアテスト実行時のCPU温度は、Ryzen Threadripper PRO 5965WXでも最高78.9℃、Ryzen Threadripper PRO 5995WXでは合計8つのダイに熱が分散することもあり、最高65.3℃に留まり、今回の評価機に実装されていた240mmラジエターのオールインワン型水冷ユニットでも全く問題なかった。
Zen 3アーキテクチャへと進化を遂げたAMDの最新ワークステーション向けCPU Ryzen Threadripper PRO 5000WXシリーズ。従来モデルから最大コア数こそ変わらないものの、コアアーキテクチャを刷新したことでシングルスレッド処理はもちろん、得意のマルチスレッド処理でも確実に上積みがある。
そして今回の主役であるRyzen Threadripper PRO 5995WXに目を向けると、Windowsでは「プロセッサグループ」の制限があるため、その能力を最大限に引き出せる環境は限られるが、CGレンダリングなど対応アプリケーションでは無類の強さを発揮する。
さすがに100万円を超えるとあって、個人ユースで簡単に手が出せる製品ではないが、大規模なレンダリングを行うクリエイターや、大量のデータを行う研究者にとっては、処理時間が短縮できるメリットは大きい。さらにライバルであるIntelには同等のコア・スレッド数を誇るCPUがないことから、Ryzen Threadripper PRO 5995WXに魅力を感じる企業や研究室は少なくないだろう。
またそこまでのマルチスレッド性能は不要だが、128GBを超える大容量メモリや、128レーンのPCI Express 4.0といった拡張性を求めるならRyzen Threadripper PRO 5965WXがオススメ。今回販売が開始された中では最も安価な製品だが、「プロセッサグループ」の制限がある処理ではRyzen Threadripper PRO 5995WXを上回るパフォーマンスを発揮。さらにシングルスレッド処理も、メインストリーム向けハイエンドモデルに匹敵することから、パーソナルな用途で不満が出ることはないだろう。
協力:日本AMD株式会社