エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.1211
2022.10.28 更新
文:藤田 忠/撮影:編集部・松枝 清顕
続いては最速クラスの一角となるPCI Express 4.0(x4)対応NVMe M.2 SSDのWestern Digital「WD_Black SN850X NVMe」を使って、M.2ヒートシンクの冷却性能を見ていこう。
2TBモデルを取り付けて、テストを実行している |
ほとんどのマザーボードは、M.2ヒートシンクを標準で装備しているが、その冷却性能は、さまざまな要因が絡んでくる。「X670E VALKYRIE」では、M2.スロットがグラフィックスカード向け拡張スロットの直下にある。そのため、どうしてもグラフィックカードからの影響を受けてしまい、3スロットを占有するVGAクーラーだと、ヒートシンクのエアフローも、ほとんど塞がれてしまう。
実際、ストレージに負荷をかけていないアイドル状態でも、10分程度でM.2 SSDの温度は50℃台後半に達していた。ストレステストとして、「CrystalDiskMark 8.0.4」をデータサイズ64GiB、テスト回数9回で3回連続実行しても、サーマルスロットリングによる顕著なパフォーマンスダウンは確認できなかったが、テスト中の最大温度は89℃を記録していた。
10分程度のアイドル状態で、M.2 SSDの温度は56℃まで上昇している。なお、グラフィックスカード非搭載時では、40℃台だった |
1回目(左)と、3回目(右)でサーマスロットリングによる速度ダウンは確認できなかった |
ストレステストのような、負荷がかかるシーンは、現実にはほとんどないが、それでも89℃という温度は不安要素ではある。実測で10,000MB/sクラスを実現するとともに、その発熱量も大きくなるPCI Express 5.0(x4)対応SSDもあるので、ひとつ目先を変えていこう。
実は、温度上昇の要因となっているグラフィックスカードを利用することで、「X670E VALKYRIE」のM.2スロットの配置は高発熱なM.2 SSD搭載時のメリットに転じる可能性を持っている。最近のグラフィックカードは、VGAクーラーのファンがセミファンレス動作になっているが、この動作をオフにして、ファンを最低値で動作させることで、かなりの冷却性能を得ることができる。
実際、ストレステスト実行時の最大温度は、28℃もダウンした61℃になっていた。気になる動作音も、最低回転では感じることは少なく、テスト環境で使った3連ファンVGAクーラーを搭載したRadeon RX 6800 XTグラフィックスカードでも、ファン回転音が気になることはなかった。
テストセッションの締めくくりに、アイドル時とストレステスト実行時の消費電力を確認しておこう。OS起動後10分間何もせずに放置したアイドル時と、ストレステストの「CINEBENCH R23: Minimum Test Duration:30 minutes」実行中の最大値をまとめている。消費電力は、ラトックのWi-Fi接続ワットチェッカー「RS- WFWATTCH1」で確認している。
CPUがフルロードされ、オールコア5GHz以上で動作していた「CINEBENCH R23」実行中は、さすがに300Wオーバーだが、アイドル時は70W台と良好な消費電力になっている。
価格を抑えつつ、ハイエンドスペックを備えるVALKYRIEシリーズらしい仕上がりになっている「X670E VALKYRIE」。32スレッドのRyzen 9 7950Xを、オールコア5GHz超えでフルロードさせられる22フェーズの電源回路に、その電源回路をエアフローのない構成下でも60℃台に抑えこむ大型ヒートシンク。そしてAMD X670Eによる次世代インターフェイスのPCI Express 5.0に対応する豊富な拡張スロットや、M.2スロットに、充実のUSBポートと、新世代Ryzenの魅力を引き出している1枚となっている。
BIOSTARらしく、大きな変化や新しい独自機能の搭載といった点はないが、「X670E VALKYRIE」は、Ryzen 9で問題なく組むことができる |
極冷用スイッチ「LN2 Mode Switch」や、デュアルBIOSスイッチといった初めてPC自作を行うひとが、「?」に感じてしまう要素もあるが、これまでPC自作を楽しんできたひとなら、問題ないだろう。他社と比べると、どうしてもデザインを含め、全体的に目新しさはないが、デュアルチップセット仕様のAMD X670Eチップセットと105A Dr.MOS 22フェーズ電源回路を搭載しながら、5万9800円という価格は、十分AM5マザーボードの選択肢の中に入れる理由になるだろう。
協力:BIOSTAR Microtech International
株式会社アユート