エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.1221
2022.11.21 更新
文:編集部/撮影:pepe
ゲーム系のベンチマークが一段落したところで、CPUとグラフィックスカードの冷却性能をチェックしていこう。CPUのストレステストには「CINEBENCH R23:Minimum Test Duration:30 minutes」を、グラフィックスカードのストレステストには「3DMark Time Spy Extreme Stress Test」を使用している。
MSI「Trident X 12VTD-051JP」ではPL1が125W、PL2が160Wに設定されているため、テスト開始直後はPackage Powerも160W前後まで上昇し、CPU温度が91℃、Pコアクロックは4,900MHz、Eコアクロックは3,800MHzを記録する。しかし、その後Package PowerはPL1の125Wに調整されるため、CPU温度はおおむね80℃台前半、Pコアクロックは4,300MHz前後、Eコアクロックは3,500MHz前後で推移し、冷却性能が不足することはなかった。
続いてグラフィックスカードの挙動を確認すると、GPU温度は73℃前後で推移し、オリジナルデュアルファンクーラーの冷却性能は優秀。動作クロックも1,800MHzまで上昇しており、ブーストクロックを超えるパフォーマンスを発揮している。
なおCPUクーラーや電源ユニットの排気はケース下部から行う設計のため、テスト中は本体の下側からそこそこの熱風が排出されていた。PC周りに物を置いてしまうと、エアフローが阻害され冷却効率が悪化する可能性があるので注意したい。
最後に高負荷時の消費電力と騒音値を確認しておこう。なおストレステストは冷却性能テストと同じ条件で行っている。
アイドル時の消費電力はCPU、グラフィックスカードとも省電力機能が有効になるため75W前後にとどまる。また高負荷時でも最高455Wで頭打ちとなり、850Wの電源ユニットを搭載する「Trident X 12VTD-051JP」では、まだ十分に余力が残されている。
アイドル時の騒音は36dBでとても静かだが、高負荷時は46dBまで上昇し、それなりに風切り音が聞こえてくる。「Trident X 12VTD-051JP」は、その製品コンセプトからデスク上に置くことになると思うが、左側面に音源となるファンが集中しているため、ヘッドフォンをしていてもややうるさく感じた。一方、右側面は左側面に比べると騒音は控えめ。LEDのイルミネーションも楽しめることから、設置場所はデスク左側がオススメだ。
デスク上に無理なく配置できるほどコンパクトな「Trident X 12VTD-051JP」は、さながらゲーミング環境を構成する“ゲーミングデバイスの一員”と呼べるほど。それを可能にしているのがわずか10リットルの筐体なわけだが、このサイズにミドルハイ構成を詰め込むことは、制約の大きさから厳しいチャレンジになる。本来ならサイズ感以外のところにしわ寄せがいき、実際の性能や使い勝手に影響が出てしまうだろう。
しかし検証では、「Trident X 12VTD-051JP」はCore i7-12700KとGeForce RTX 3070の性能を十分に引き出しつつ、冷却性能が不足することもなかった。これは熱源を分散させる考え抜かれた冷却レイアウトの賜物で、スリムでコンパクトな(時には独創的形状の)ゲーミングPCを長く手がけてきたMSIのノウハウが活かされている。
多少ネックになりそうな騒音の問題も、デスクの左側に設置するなどの“付き合い方”で十分にクリア可能。製品のキャッチであるWQHD解像度の快適なゲームプレイはまったく問題なく、DLSSを組み合わせれば4Kプレイも視野に入ってくる。
リッチな設定でAAAタイトルを快適に遊べて、なおかつカッコよさも備えた扱いやすいゲーミングマシン。つい自作派も手を伸ばしてみたくなる、デバイスとしての魅力にあふれている。ぜひ高リフレッシュレートのゲーミング液晶と組み合わせ、小さく快適なゲーミング環境を手に入れてほしい。
協力:エムエスアイコンピュータージャパン株式会社