エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.1259
2023.02.27 更新
文:編集部 池西 樹/撮影:松枝 清顕
続いてオープンワールド型アクションゲームの大作「Watch Dogs Legion」のゲーム内ベンチマークのスコアを確認していこう。グラフィック品質は“最大”、解像度は1,920×1,080ドット、2,560×1,440ドット、3,840×2,160ドットの3種類で計測を行っている。
4K解像度やWQHD解像度ではスコアが横並び。しかし、フルHD解像度ではCore i9-13900Kを約6%、Ryzen 9 7950Xを約8%上回っており、重量級のゲームでもフルHD解像度では3D V-Cacheがかなり効果を発揮することがわかる。
ゲーム系ベンチマークのラストは「Cyberpunk 2077」をチェックしていこう。解像度はこれまでと同じ1,920×1,080ドット、2,560×1,440ドット、3,840×2,160ドットの3種類、クイックプリセットは“レイトレーシング:ウルトラ”で、こちらもゲーム内のベンチマークで測定を行っている。
すべての解像度でRyzen 9 7950X3Dが最も高いフレームレートを計測しているが、その差は最大でも1%未満。有意な差とは言えず、今回のグラフィックスカードとプリセットでは、CPUによる影響はないと言っていいだろう。
テストセッションのラストは消費電力を確認していこう。負荷テストには「CINEBENCH R23」のシングルコアテスト、マルチコアテストをそれぞれ10分間実施した場合と、「ファイナルファンタジーXIV︓暁月のフィナーレ」(解像度:フルHD)を使用している。
アイドル時の消費電力はRyzen 9 7950X3D/7950Xが約100W前後なのに対して、Core i9-13900Kは約65Wまで低下。またシングルコアテスト時についてもCore i9-13900Kが25W以上低く、アイドル時や低負荷時の省電力性能についてはIntel LGA1700プラットフォームのほうが優秀だ。
しかし、マルチスレッド処理時の消費電力はCore i9-13900Kが最高で約450W、平均でも400Wを超えるのに対して、Ryzen 9 7950Xは330W強、Ryzen 9 7950X3Dに至っては最大でも235W強で頭打ち。また「ファイナルファンタジーXIV︓暁月のフィナーレ」動作時の消費電力もRyzen 9 7950X3Dが最も低く、高負荷時のワットパフォーマンスはRyzen 9 7950X3Dが他のCPUを圧倒する。
続いて「CINEBENCH R23:マルチコアテスト」実行時のCPU温度を確認すると、Ryzen 9 7950X3Dは84.5℃で頭打ちになり、CPUの許容する最高温度89℃に達することは一度もなかった。このことから、280mmから360mmクラスのオールインワン型水冷ユニットを用意してやれば確実にRyzen 9 7950X3Dの発熱を抑え込むことができるだろう。
3D V-Cache技術を採用するコンシューマ向けCPUとしては第2世代にあたる「Ryzen 7000X3D」。Ryzen 9 7950X3DのようなCCD×2基のモデルがラインナップされたことで、先代のRyzen 7 5800X3Dからマルチスレッド性能は飛躍的に向上している。
さらに異なるCCDを組み合わせる「Asymmetric Chiplet Design」により、3D V-Cache搭載コアのクロックが低いという欠点も解消され、シングルスレッド処理ではRyzen 9 7950Xと同等のパフォーマンスを発揮できるようになった。
そしてメインターゲットであるゲーム性能では、4K解像度やWQHD解像度では差が小さいものの、フルHD解像度ではRyzen 9 7950Xから最大約22%、Core i9-13900Kとの比較でも最大約15%もスコアが向上し、AMDが標榜する“世界最速のゲーミングCPU”の名に恥じない仕上がり。
また消費電力が大幅に低下しており、イマドキのハイエンドCPUとしてはかなり扱いやすいのも大きなメリット。発売から約5ヶ月が経過し、価格がこなれてきているRyzen 9 7950X(税込96,000円前後)やCore i9-13900K(税込87,000円前後)に比べるとやや高価だが、ゲーム性能を追求したい人や、ハイエンド構成でも消費電力や発熱を抑えたい人にとってはRyzen 9 7950X3Dは最良の選択肢になるCPUだ。
協力:日本AMD株式会社