エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.1270
2023.03.29 更新
文:撮影・編集部 松枝 清顕
冷却にはオールインワン型水冷ユニット「iCUE H100i ELITE CAPELLIX」(型番:CW-9060046-WW)をチョイスした。iCUE 4000D RGB AIRFLOWは前面に最も長尺な360mmサイズラジエーターが搭載できるが、3基のiCUE AF120 RGB ELITEファンが装備されているため、今回はトップ面に240mmサイズラジエーターを搭載する事にした。ここは組み込むシステムにより、自由に選択してほしい。
組み込みについてはまったく問題無く、配線を除けば30分も掛からずに作業は完了できる。特にiCUE 4000D RGB AIRFLOWのトップ部は最大280mmサイズのラジエーターが搭載できるスペースだけに、240mmサイズの固定もポジションが選択できるほどの余裕をもって組み込む事ができた。もちろん小型CPUヘッドも持て余すことなく、すんなりと作業を終えている。特筆すべき点がなく拍子抜けされるかもしれないが、それだけ組み込み易いという事を表している。
拡張カードの有効スペースは最大360mm。ここに長さ304mm、幅137mm、厚さ61mmで3スロットを占有する「GeForce RTX 4090 Founders Edition」を搭載してみた。拡張カードスロットはハンドスクリューが使用されており、3段分のスペースにネジ固定。CORSAIR「RM1200x Shift」標準の12VHPWRケーブルにより電源供給を行った。
GeForce RTX 4090 Founders Editionの重量は実測で2,183g。ここは慎重に本体を横倒しにして搭載作業を行った。有効スペース最大360mmに304mmのグラフィックスカードを搭載したところで、計算上では56mmの空きスペースを残す事になる。実際に標準装備品となるiCUE AF120 RGB ELITEまでの距離を測ったところ、約62mmだった。
ひと頃に比べ、最近では大型VGAクーラーを備えたハイエンドグラフィックスカードの選択肢は多い。ユーザーのハイエンド志向の高まりも一因だろう。例えば前面にラジエーターを設置した場合、約30mmはスペースを余分に必要とし、グラフィックスカードの居住スペースが短くなる。スペック表の表示はあくまで最大値であり、構成よっては公称値以下になるため、構成パーツ選定は多少の余裕と事前の情報収集が重要であることは、黎明期から変わらぬ自作PCの鉄則と言える。
標準装備ファンとの折り合いも良好。ただし全長が350mmに迫る超ハイエンド志向のグラフィックスカードを選定した場合、前面にラジエーターは搭載できなくなる可能性が高い。iCUE 4000D RGB AIRFLOWに見合った構成パーツを上手に選定しよう |
冒頭から総括すると、CORSAIRらしいPCケースだった。それはどの部分かと言うと、細部の作りであったり、素材の使い方であったり、工作精度であったり。メジャーなPCパーツメーカーの筐体にはそれなりに個性があり、CORSAIRはそれを強く感じさせるメーカーのひとつに数えられる。デザイン面でもフロントパネルのエッジにCORSAIRらしさがあり、余計な装飾をしないスマートな出で立ちは、多くの自作派から受け入れられるはずだ。
ちなみに組み込み易さの基準は、PCケースよりも構成パーツに依存する部分が大きい。近頃のPCケースはゴテゴテの仕掛けを盛り込む事が稀で、ことメインエリアとなる左側面はシンプルで構造物が無い長方形(または正方形)がほとんどだ。iCUE 4000D RGB AIRFLOWも例外ではなく、余分なものが無いだけに作業はし易い。また内部容積もミドルタワーPCケースのそれで、十分に平均レベルをクリアしている。
要改善点なども指摘しておきたいが、コレといったところが見当たらない。それは完成度の高さもさることながら、iCUE 4000D RGB AIRFLOWが決してアグレッシブにチャレンジしたPCケースでは無い事を意味する。
恐らくベースとなる4000Dは、当初より性格の異なるバリエーションを複数展開する事が想定されていたのだろう。これまでの計4モデルはそれぞれに個性を持ち、幅広いニーズに応える事ができている。これを可能にしているのが、奇をてらわずに設計された4000Dがあってこそだ。今後も息の長い製品になるべく上手に熟成させれば、熱心な自作派達の記憶に残るPCケースのひとつになるだろう。
協力:CORSAIR