エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.1329
2023.08.30 更新
文:撮影・編集部 松枝 清顕/池西樹(テストセッション)
まずはJIUSHARK(2018年設立)について触れておこう。国内市場では株式会社サイズにより2022年12月から流通がスタート。これまで比較的オーソドックスなサイドフロー型CPUクーラー数種に交え、20mmファン搭載の小型M.2 SSDクーラー「M.2-THREE/M.2-TWO」が店頭に並んでいる。
“比較的オーソドックス”ゆえ、熱心な自作派意外あまり馴染みがないだろう。しかしこれらはいわゆる”挨拶代わり”。今回取り上げる「JF13K DIAMOND」は、突然どうしちゃったのと思えるほど、これまでの路線とは一線を画す外観で、国内市場発売前より海外サイトを中心に話題になっていた。
JIUSHARK「JF13K DIAMOND BLACK」(型番:JF13K-BK) 市場想定売価税込7,980円(2023年9月15日発売) 製品情報(JIUSHARK / 株式会社サイズ) |
概要をお伝えすると、120mmファン2基を並べたトップフロー型CPUクーラーは左右に広いヒートシンクを備え、7本のヒートパイプでCPUからの熱を全体に拡散させている。見ようによっては240mmサイズのラジエーターに近く、スリム型CPUクーラーが2基結合された派生形とも言える。
JIUSHARKおよび株式会社サイズ曰く、コンセプトは「CPUのみならず、メモリやVRMヒートシンクすべてが冷却できる」というもので、言わばCPUクーラー+ボードクーラーと言ったところだろう(サイズはこれを「オールレンジ冷却」と呼んでいる)。これまでにあまり例を見ないスタイルだけに、かなりキニナル存在である事は間違いない。
JIUSHARK「JF13K DIAMOND WHITE」(型番:JF13K-WH) 市場想定売価税込7,980円(2023年9月15日発売) 製品情報(JIUSHARK / 株式会社サイズ) |
なおラインナップは非発光ファンと全身ブラックな「JF13K DIAMOND BLACK」(型番:JF13K-BK)と、ARGBファンを載せたホワイトバージョン「JF13K DIAMOND WHITE」(型番:JF13K-WH)が用意される。市場想定売価はいずれも税込7,980円。思いの外コストパフォーマンスモデルといった側面もアピールポイントであろう。
次にスペック表から製品概要を掴んでおきたい。パッケージに「Dual Fan CPU Radiator」「Downforce Radiator」と記載されたJF13K DIAMONDは、15mm厚のスリム120mmファンを2基で運用。外形寸法は幅241mm、奥行き121mm、高さ92mmとされ、左右に大きく、高さが低い。さらに目を引くのは全重量で、見た目のインパクトとは裏腹に冷却ファンを含め895gしかない。直近で検証を行ったサイズ「FUMA3」は1,095gだから、ちょっと意外に感じる。
対応ソケットはIntel LGA1200/115x/1700、AMD Socket AM4/AM5で、多くのCPUクーラーがそうであるように、現行主力CPUすべてに対応している。ただしJF13K DIAMONDが一筋縄でいかないのは対応マザーボードサイズが存在する点だろう。
国内代理店の株式会社サイズによる製品資料によると(記載ママ)、ATX規格は縦234mm、横245mm以上の基板サイズに対応。さらにMicroATX規格は縦235mm、横245mm以上の基板サイズとされ、ATX/MicroATX共に横幅235mm以下は搭載できない。さらにMini-ITXマザーボードでは搭載不可とされている。一見、全高92mmのロープロファイル型CPUクーラーという側面もありつつ、マザーボードサイズを選ぶ点には注意が必要だろう。
パッケージサイズは幅180mm、奥行き147mm、高さ127mmで、付属品および梱包品を含めた総重量は約1,232gとされる。外観画像のイメージから判断すると、意外にもパッケージ寸法の数字が小振りに思えるかもしれない。近頃のハイエンド志向のCPUクーラーはいずれも大型のパッケージが陳列棚を占有している。JF13K DIAMONDの分類はトップフロー型だが、あれだけの異型でもコンパクトに収められているのは意外にも感じる。
外装パッケージは、画像正面は非発光ファン搭載のブラックモデル用、裏面は発光ファン搭載のホワイトモデル用のハイブリッド仕様。同梱品はシールで対応する合理的な考えだ |
実はJF13K DIAMONDの資料が手元に届き、筆者が真っ先に思い浮かんだのが2006年12月に発売された、Cooler Master「風神匠」(型番:RR-CCH-ANU1-GP)だ。120mmファン2基を搭載するのはJF13K DIAMOND同様(風神匠の場合120mmファンは別売り)。編集部所有の個体を引っ張り出して見ると、なるほど約17年前に発売された風神匠と同じコンセプトである事が分かる。
Cooler Master「風神匠」(型番:RR-CCH-ANU1-GP) 想定売価税込7,400円前後(2006年12月発売) |
両者を並べてみよう。風神匠はヒートパイプが6本で銅素材がまる出しの外観。一方のJF13K DIAMONDは、ニッケルメッキ処理が施された7本のヒートパイプで構成されている。左右に広いヒートシンクは、CPUソケット周辺のコンポーネントを冷却する「ボードクーラー」を兼ねている。JIUSHARKの開発担当がこの存在を知っていたかは分からないが、風神匠を愛用していた”いちユーザー”として、このスタイルは非常に懐かしさを感じている。
JF13K DIAMONDの全高は冷却ファンを含めて92mmに対し、風神匠は25mm厚120mmファンを搭載すると149.6mmなので、その差は57.6mm。単に設計やコンセプトの違いかもしれないが、細部を確認すると製造における違いは歴然で、恐らく同じ土俵に上げたところで性能差も出るのではないかと想像できる。なお風神匠の対応ソケットはIntel LGA775/AMD Socket AM2/939/940/754だから、JF13K DIAMONDとシンクロする部分はない。
風神匠に比べ、JF13K DIAMONDのヒートシンクがすいぶん長い事が分かる |