エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.1329
2023.08.30 更新
文:撮影・編集部 松枝 清顕/池西樹(テストセッション)
冷却性能の確認が一通り完了したところで、サーモグラフィの結果をチェックしておこう。CPUはCore i7-13700で、「CPU Cooler Tuning」は「Water Cooler」に設定。ストレステストは「CINEBENCH R23:Minimum Test Duration:30 minutes」を使用している。
アイドル時のサーモグラフィ結果 |
高負荷時のサーモグラフィ結果 |
まずアイドル時の結果を確認すると、ファンからの風で十分冷やされていることもあり、ヒートシンクは全体が青色で黄色や赤の部分はまったくなかった。一方、高負荷時はヒートパイプ部分を中心にヒートシンク全体の温度が上昇しており、CPUから発生した熱が効率よく拡散していることがわかる。
マザーボードの上半分を覆うように設置される「JF13K」では、ファンから吹きつける風によってVRMやメモリもまとめて冷却することができるという。そこでテストセッションのラストでは、実際にどの程度効果があるのか確認してみることにしよう。比較用のCPUクーラーには360mmラジエーターを搭載するCORSAIR「iCUE H150i RGB PRO XT」を使い、VRMの温度はHWiNFOの「MOS」の数値を、メモリの温度は「SPD Hub Temperature」の数値を採用している。なおストレステストの条件はサーモグラフィの撮影と同じで行っている。
「JF13K」搭載時のVRMのサーモグラフィ | 「iCUE H150i RGB PRO XT」搭載時のVRMのサーモグラフィ |
まずVRMの温度を確認すると「iCUE H150i RGB PRO XT」では最高77℃まで上昇するのに対して、「JF13K」では58.5℃で頭打ちになり、約20℃と大きな差がついた。サーモグラフィの結果も「JF13K」のほうが大幅に低く、実際に触れてみても温度の違いは明らかだった。
「JF13K」搭載時のメモリのサーモグラフィ | 「iCUE H150i RGB PRO XT」搭載時のメモリのサーモグラフィ |
続いて、メモリの温度を確認すると「iCUE H150i RGB PRO XT」の最高48.8℃に対して、「JF13K」は最高37.8℃でその差は約10℃。VRMに比べると差は縮まっているが確実に効果はあり、VRMやメモリの冷却についても「JF13K」は非常に優秀であることがわかる。
JF13K DIAMONDを「大型空冷クーラー」として認識された読者がほとんどだろう。しかし少しだけ見方を変えると、ロープロファイル向け小型CPUクーラーが2基横並びになったトップフロー型CPUクーラーとも言える。この格好でロープロファイルとは意外かもしれないが、冷却ファンを含めた全高は92mmしかない。
さて、冒頭に紹介した「風神匠」は17年前の発売当時、一部では若干イロモノ的な存在として扱われた感があり、セールス的には成功していたハズだが、実際の冷却性能を正しく評価される事はあまりなかったように記憶している。時を経て”偶然にも”同じようなスタイルであるJF13K DIAMONDを検証してみると、一見オマケのように思えるボードクーラー的要素が、キチンと機能している事が分かった。
CPU温度はもとより、安定動作(または長寿命化)に欠かせないVRMとメモリを同時に冷却する様はさながら「三刀流」で、しっかりとその役割を果たしている。ヒートシンクから放出される風は、主たる仕事である放熱フィンの冷却に使用された”排出後の再利用”だが、検証結果を見る限り、再利用とはとても思えない。
「オールレンジ冷却」を実現させたJF13K DIAMONDは、トップフロー型CPUクーラーの新たなカタチとして広く認知されるだろう。そして検証を通して感じたのは、ハイエンド構成であればなおのこと、ほとんどが冷却ファンの無い水冷搭載時のCPU周辺の冷却について、今一度見直しが必要かもしれない。
機材協力:株式会社サイズ