エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.1330
2023.09.01 更新
文:撮影・編集部 松枝 清顕/池西樹(テストセッション)
大型パッケージより本体を取り出し、今注目のハイエンド空冷クーラー・Assassin IVの外観デザインから詳細を確認していく。まず目を引くのは「IV」へ世代移行により、よくあるサイドフロー型CPUクーラーとはずいぶんと異なる外観だろう。
ホワイト色のPCパーツがにわか人気の只中、Assassin IVはオールブラック色を選択。下部にはヒートパイプと受熱ベースは確認できるものの、放熱フィンからなるヒートシンク自体はハッキリとしない。このスタイルは、冷却性能にどのような影響を及ぼすのか。本稿のポイントになりそうだ。
もう少し具体的に見て行くと、前作Assassin IIIと明らかに異なるのは、特異な「ボックス形状」の採用だろう。恐らく多くの読者の記憶からは消えているであろう、BTX Type IIクーラーを彷彿とさせ、現在流通するコンシューマ向け製品のどれとも似ていない。
売上も好調なDeepcoolの勢いを感じさせるチャレンジだが、キャッチーなスタイルの一方で、実機に触れた第一印象はプラスチックパーツの割合が多く、高冷却とは結びつきにくい。とは言えそんな懸念もテストセッションで払拭してくれる事を期待したいが、こうした背景にはDeepcoolなりに理由があるのだろう。
メッシュ素材のトップカバー(一部)を外した状態。後ほど解説するが、チラリと見えているのは内部に搭載された冷却ファンだ |
逆さまにすると受熱ベースとヒートパイプが確認でき、ようやく見慣れたサイドフロー型CPUクーラーの姿だ |
真横から見るとヒートパイプのレイアウトから、ヒートシンクが内部に存在している事が想像できる |
真上から眺める。向かって左手がマザーボードのバックパネル側になる格好 |
外観の印象を大きく変えているのが、新たに採用されたプラスチック製カバー。構造としては、サイドフロー型のヒートシンクがこのカバーでスッポリと覆われる格好。大胆にも思えるこの手法により、アルミニウム製ヒートシンクはほぼ露出しないスタイルが採用されている。これが冷却性能にどのような効果を及ぼすのだろうか。
冷却パフォーマンスについてはテストセッションで見極めるとし、ここでは構造をより理解すべくカバー自体を外してみよう。なお通常分解する必要がない部分であることから、ネジ穴は精密機器等で使用される六角穴で、トルクスドライバー(T8)を使用する。
コの字型のプラスチック製カバー。両サイドにはメタル製のメッシュパネルが装着されていた |
カバー天板からは伸びたケーブルに冷却ファンを接続する事で、切り替えスイッチが使用できるようになる |
両サイドのメタル製メッシュパネルと、背面からフタをするメタル製の枠 |
今回のレビューを行うにあたり、DeepcoolのProduct Marketing・Edison Liu氏に直接話を聞いている。自社製品について熱心に語るEdison Liu氏だが、まずは気になるプラスチック製カバーの採用について、その理由を尋ねた。
先ごろ来日を果たした、Deepcool・Edison Liu氏。肩書きはProduct Marketingで、本来はセールスを中心としたマーケティング活動だが、製品についての造詣も深く、誰よりも”Deepcool愛の強い”STAFFだ |
Edison Liu氏によると、1番の目的は「冷却ファンとヒートシンクのエアフローの効率化の向上」だという。前作までは解放状態だったアルミニウム製ヒートシンクだが、Assassin IVに限っては、カバー装着により冷却性能がアップしているという。
冷却面のみならず外観にもこだわったAssassin IV。カバー装着により冷却ファンの存在を隠すことで、よりシンプルに見せる事に成功。ワイヤークリップを使用せずにマウントさせる事も重要なポイントだった |
そして苦労した点に、先代「ASSASSIN III」からの小型化と、冷却性能を上げるための調整を挙げた。具体的には、ヒートシンクの厚みと間隔(フィンピッチ)は試行錯誤を繰り返し、ヒートパイプの効率的な組み合わせにはずいぶんと時間を掛けたそうだ。
そして受熱ベースプレートにも工夫があり、手に触れても分からない程度ながら中央に凹みを持たせているという。これは第13世代Intel Coreプロセッサの”特性”に合わせたもの。ちなみに先代にもこの凹みはあったそうだが、ASSASSIN IVはより深くなっているという。