エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.1361
2023.11.20 更新
文:編集部 池西 樹/撮影:松枝 清顕
続いて「Far Cry」シリーズの最新作「Far Cry 6」のゲーム内ベンチマークのスコアを確認していこう。「画質」は“最高”、「DXR反射」「DXRシャドウ」は“オン”に設定。解像度はフルHD、WQHD、4Kの3種類で計測を行った。
レイトレーシングを使用する重い処理ということで、グラフィックスカードの影響が大きいこともあり、いずれの解像度でもスコアは横並びになった。
ゲーム系ベンチマークのラストは、オープンワールド型アクションRPGの大作「Cyberpunk 2077:Phantom Liberty」のゲーム内ベンチマーク結果を確認していこう。解像度はフルHD、WQHD、4Kの3種類。「クイックプリセット」は“レイトレーシング:ウルトラ”に設定している。
「Far Cry 6」と同じくGPUの影響が大きいこともあり、いずれのCPU/解像度でもフレームレートに大きな差は出なかった。最新アーキテクチャを採用し、最高クロックも引き上げられたRyzen Threadripper 7000シリーズであれば、多くのゲームでメインストリーム向けハイエンドモデルに匹敵するパフォーマンスが期待できる。
テストセッションのラストは消費電力とCPU温度を確認していこう。アイドル時は起動直後10分間放置した際の最低値を、高負荷時は「CINEBENCH 2024:10 minutes」実行時の最高値を採用している。
アイドル時の消費電力については、Ryzen Threadripper 7970Xでも167.03W、Ryzen Threadripper 7980Xでは203.8Wとコア数が多いRyzen Threadripper 7000はどうしても不利になってしまう。また高負荷時の消費電力はRyzen Threadripper 7970Xが529.38W、Ryzen Threadripper 7980Xが557.98Wで、Ryzen 9 7950Xからはそれぞれ約185Wと約210Wも高くなっている。ただし、Power Limit無制限設定のCore i9-14900Kと比べるとRyzen Threadripper 7980Xは約15W多いだけ。Ryzen Threadripper 7970Xに至っては約13W少なく、マルチスレッド処理におけるワットパフォーマンスは極めて優秀だ。
続いてCPU温度を確認するとRyzen Threadripper 7980Xが最高87.5℃、よりクロックが高いRyzen Threadripper 7970Xでも90.6℃で、TDPが350Wに設定されている割には低く抑えられている。今回使用したような360mmサイズラジエーターを搭載するオールインワン型水冷ユニットなら、問題なく冷やすことができるだろう。
2022年9月に登場したRyzen 7000から遅れること約1年。ようやくRyzen ThreadripperにもZen 4アーキテクチャを採用した製品が投入されることになった。今回検証したHEDT向けRyzen Threadripper 7000は、コア数こそ64コア/128スレッドで前世代のRyzen Threadripper PRO 5000 WXと同じだが、アーキテクチャの刷新やコアクロックの引き上げにより、マルチスレッド性能は実に40%以上も向上している。
またこれまでメニーコアCPUがどうしても苦手としていたゲーム性能も大幅に改善されており、特に最新のゲームであればメインストリーム向けのハイエンドモデルとも十分に張り合うことができるパフォーマンスを発揮してくれた。このクラスのCPUを積極的にゲーミングPCとして使う層は少ないだろうが、クリエイティブな作業もゲームもこれ1台で済ませたいというニーズには、しっかりと応えてくれる。
CPU自体も非常に高価で、マザーボードやメモリも買い直す必要があるため、導入するにはかなり初期投資は掛かるがそのパフォーマンスはまさに圧巻。メインストリーム向けCPUを使っていてマルチスレッド性能に不満を感じている人はもちろん、Ryzen Threadripper PRO 5000 WXなどのワークステーションCPUからのアップグレードを考えている人にとってもRyzen Threadripper 7000はまさに待望の製品になるはずだ。
そして今回検証することができなかったが、さらなるマルチスレッド性能を求めるなら、Ryzen Threadripper初の96コア/192スレッドに対応するRyzenThreadripper PRO 7995WXの導入を検討してみるといいだろう。
協力:日本AMD株式会社