エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.1373
2023.12.24 更新
文:撮影・編集部 松枝 清顕
次に両サイドパネルに加え、時にはフロントパネルも取り外した状態で内部構造を詳しくみていく。ピラーレスデザインは外観の美しさもさることながら、内部の視認性の高さが特徴。一般的なPCケースに比べ、内部構造に目が行く機会が多いだけあって、マザーボードトレイのスルーホールはいずれもグロメット付きにするなど、意識の高さも窺える。魅せることを前提にしたPCケース、P30の内部構造に注目しよう。
マザーボードトレイには出荷時より、合計6本のスタンドオフが装着されている。使用されている(または付属の)ネジ同様、シルバー色のスタンドオフは、MicroATX規格に準じた用意だが、実際には右端縦列が不足する事になるはずだ。マザーボードの設計に依存する部分であり、足りない箇所は付属品で補う格好。なおマザーボード固定時の位置決めに便利な段差付きスタンドオフは使われていない。
“ただいま絶賛増殖中”のピラーレスデザインPCケース。今回の検証にあたり、同コンセプトの製品を見比べていて気付いたのは、P30のようにボトムカバーが装備されたモデルが少ないこと。ミドルタワーPCケースでは当たり前の装備だが、コンパクトな筐体が多いピラーレスデザインの場合、内部を広く見せたいという意識が働くのだろう。一方で煩雑になるケーブル類の隠し場所は、裏配線スペース頼りになる。使い勝手は組み込みセッションでの判断だが、P30の大きなセールスポイントになる可能性がある。
ピラーレスデザインだから有効とも言えるボトムカバー。内部高は実測で約98mmだった |
次にP30の冷却ファンおよびラジエーター事情を解説しよう。最も広い冷却ファンおよびラジエーターの設置スペースはトップパネルになる。ダストフィルターを兼ねたプラスチック製のトップカバーを外すと、シャーシ面には冷却ファン搭載用の開口部とネジ穴(スリット)、その他のエリアも有効に活用するパンチング加工の通気孔が設けられていた。
この面には140mmファンなら2基、120mmファンなら3基まで搭載可能。ラジエーターは120/140/240/280/360mmの各サイズがサポートされている。COMPUTEX TAIPEI 2023のZALMANブースでは本格水冷の作例が展示されていたが、実際にはオールインワン型水冷ユニットの導入が一般的だろう。CPUソケットに近く、設置条件もいいトップパネルは多くのユーザーが利用する事になる。
シャーシ側トップ面の取り外しは不可だが、フロントパネルが開放されるだけに冷却ファンおよびラジエーターの増設作業はしやすそう。なお冷却ファン固定用ネジ穴(スリット)は実測で約48mmだった |
背面には120mmファンが標準で装備されている。CPUソケットに近いだけに、内部の空気を常時外部へ排出する役割は重要。排出量を増やしたければ、140mmファンに換装することもできる。またラジエーターは120/140mmサイズをサポート。最もオーソドックスなAIO水冷を設置するには活用したいスペースだ。
なお標準装備品はARGBファンで、スペックは回転数1,100rpm±10%、風量42.1CFM(騒音値は非公開)。ケーブルは3pinコネクタとARGB用の2本を接続する必要がある。
リアファンの固定用ネジ穴(スリット)は実測で約30mmだった |
マザーボードトレイの右手、縦に2基並べて搭載されているのは120mm ARGBファン。フロントパネルが強化ガラスだけに、フレッシュな外気はここから筐体内部に取り込まれる。
画像を見て一瞬「まてよ」と思うかもしれないが、2基の標準搭載ファンはリアとは異なる「リバースファン」だ。両者を見比べると、ブレードの形状が逆ひねりである事が分かる。PCケース内部から見て回転方向は共に右回りだが、サイドファンは外気を取り込む吸気、リアは内部の熱を排出する排気で異なる役割を果たしている。なおこのスペースにラジエーターは搭載できない。
サイドファンは背面からテーパーネジで固定。搭載スペースはマザーボードトレイより段差が設けられている |
フロントパネルが強化ガラスで密閉されている反動か、P30の冷却ファンレイアウトは意外にも多彩だ。パンチング加工による通気孔仕様のボトムカバー天板エリアも無駄なく活用。ここにも140mmファン2基、または120mmファンが3基搭載できる。他のミドルタワーPCケースでもボトムカバー天板を増設スペースとして利用するパターンを見かける。搭載場所からボトムカバー内部の熱ごもり対策、または真上に位置するグラフィックスカードへの直接風などが想定される。
とは言え、筆者としては今一つピンとこない。ことP30はMicroATX規格対応だけに、グラフィックスカードとの距離が近くなる。ここを上手に活用する方法とは? |