エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.1390
2024.02.07 更新
文:編集部 池西 樹/撮影:松枝 清顕
16GBの大容量ビデオメモリを搭載しているRadeon RX 7600 XT。ゲームはもちろん、クリエイティブ系アプリケーションやAI処理での運用を検討している人もいることだろう。そこで、ここからはゲーム以外の性能をチェックしていこう。まずはレンダリングベンチマーク「Cinebench 2024」のGPUテストの結果からだ。
Radeon RX 7600からパフォーマンスは約8%向上しており、実際のGPUクロック以上の差がついた。このことからCinebench 2024でも、ビデオメモリが16GBに拡張された効果は確実にあるようだ。
続いて「Blender 4.0.0」の結果も確認していこう。レンダリングにはGPUを選択し、レンダリングサンプルは「monster」「junkshop」「classroom」の3種類を選択している。
「Cinebench 2024」に比べるとGPUへの負荷が軽いこともあり「monster」では約2%、「Junkshop」や「classroom」でもその差は約4%に留まる。テスト中のビデオメモリの使用量も8GBに達することはなく、「Blender 4.0.0」で比較的小規模なプロジェクトを処理するのであれば、安価なRadeon RX 7600を選択したほうがいいだろう。
続いて画像生成AI「AMUSE v1.1.2」のパフォーマンスを確認していこう。生成する画像サイズは512×512ドットで、モデルには「Comic-Diffusion」を使用している。なお比較的ブレが大きいテストのため計測は5回実施し、最大値と最小値を除いた3回分の平均値を結果として使用した。
今回は512×512ドットの比較的小さい画像を生成しているが、処理中のビデオメモリ使用量は10GBを超えている。そのためメモリ容量に余裕があるRadeon RX 7600 XTでは約16秒で完了するのに対して、メモリが不足するRadeon RX 7600では約56秒と3倍以上の時間が掛かってしまった。とりあえず生成AIを試してみるのであればRadeon RX 7600でもいいだろうが、本格的な運用を検討しているのであれば、ビデオメモリ16GBのRadeon RX 7600 XTの使用を強くオススメする。
「AMUSE v1.1.2」実行中のビデオメモリ使用量は10.1GB。8GBでは完全にメモリ容量が不足し、ボトルネックになる |
続いて、消費電力をチェックしていこう。ストレステストには「3DMark Speed Way Stress Test」を使い、実行中の最高値を高負荷時、起動後10分間何もせず放置した状態をアイドル時として計測を行った。
アイドル時は省電力機能により、GPUクロック、メモリクロックとも同等レベルまで下がるため、いずれのグラフィックスカードでも横並びになる。また高負荷時の消費電力はRadeon RX 7600 XTが約300Wなのに対して、Radeon RX 7600 XTは約330Wで、ほぼ公称TGP通りの結果になった。GPUに最大の負荷がかかる状態で330Wなら、Core i9-14900Kのような非常に消費電力の多いCPUを組み合わせた場合でも600Wクラスの電源ユニットを用意してやれば、電力が不足することはないだろう。
テストセッションのラストは、「PULSE Radeon RX 7600 XT GAMING OC 16GB GDDR6」に搭載されているオリジナルデュアルファンファンクーラーの冷却性能をチェックしていこう。なおストレステストには消費電力テストと同じ「3DMark Speed Way Stress Test」を使用している。
Hot Spot温度は57℃から87℃とブレが大きいものの、GPU温度は最高でも63℃までしか上がらず冷却性能は全く問題なし。ファンの回転数も1,680rpm前後、回転率も最高40%で頭打ちになり、オリジナルデュアルファンクーラーの冷却性能にもまだまだ余力が残されている。ちなみに冷却ファンのノイズも、CPU冷却用のオールインワン型水冷ユニットに実装されているファンのほうがうるさく、静音性は非常に良好だった。
Radeon RX 7600からビデオメモリが2倍に拡張されたRadeon RX 7600 XT。GPUクロックも向上しているが、比較的古めのゲームや、最新のゲームでもフルHD解像度までならビデオメモリが不足することはなく、Radeon RX 7600との性能差はそれほど大きくない。特にFPSゲームやバトルロイヤルゲームなど、解像度や画質を抑えてでもリフレッシュレートを稼ぎたい場合には、発売から時間がたち、価格もこなれているRadeon RX 7600を選択したほうがいいだろう。
一方で、最新のゲームを中心にWQHD以上の解像度では、Radeon RX 7600ではビデオメモリが不足するシーンが多く見られた。AFMFを併用して高解像度・高画質設定でゲームを楽しみたいならRadeon RX 7600 XTがオススメ。さらにビデオメモリを大量に使用する生成系AIでは大いにその力を発揮してくれることだろう。
そして今回の主役である「PULSE Radeon RX 7600 XT GAMING OC 16GB GDDR6」に目を向けると、現在発売中の製品の中では最も高クロックな設定ながら、価格は最安クラス。さらにVGAクーラーも冷却性能、静音性とも優秀なことから正直大きな欠点は見当たらない。Radeon RX 7600 XTグラフィックスカードの購入を検討しているなら最有力候補になる製品だ。
協力:株式会社アスク
SAPPHIRE TECHNOLOGY LIMITED