エルミタ的「編集部で使ってみた」
2024.03.17 更新
文:撮影・編集部 池西 樹
まずはM.2 SSDの温度と転送速度をチェックしていきましょう。SSDのストレステストは「CrystalDiskMark 8.0.5」のデータサイズ64GiBを3回連続で実行し、GPUはアイドル状態とストレステストに「OCCT 12.1.15」の「3D Standard」を実行した状態でも計測を行っています。
GPUアイドル時の「CrystalDiskMark 8.0.5」の結果 | GPU高負荷時の「CrystalDiskMark 8.0.5」の結果 |
今回検証に使用したCrucial「T700」ですが、M.2 SSDの中でも特に発熱が多く、標準のアルミニウムヒートシンクでは温度が80℃を超え、サーマルスロットリングが発生します。さらにM.2 SSDヒートシンクではトップクラスの冷却性能を誇るターボブロワーファン搭載モデル「A-M2HS03-BK」を組み合わせた場合でも55℃まで温度が上昇していました。
一方で、「DUAL-RTX4060TI-O8G-SSD」では、GPUがアイドルの状態なら最高温度は43℃で頭打ちになり冷却性能は優秀です。そしてGPUがフルロードの場合でも「A-M2HS03-BK」より低い54℃までしか上がらず、GPUとSSDの共存も全く問題ありません。
また転送速度もほぼ公称値通りの読込最高12,324MB/s、書込最高11,554MB/sを記録しており、ゲームやレンダリング、生成系AIなどGPUの負荷が高い処理を行っている場合でもSSDの性能をしっかりと発揮することができます。
SSDの冷却性能や転送速度を確認したところで、続いてSSDを搭載したことによるグラフィック性能への影響についても確認をしておきましょう。なおベンチマークソフトには「3DMark Time Spy」と「3DMark Fire Strike」を使用しています。
SSDを搭載した状態でもGPUのPCI Expressレーン数が変わらないこともあり、いずれのテストでもスコアの違いは誤差の範囲でした。「DUAL-RTX4060TI-O8G-SSD」では、GPU向けとSSD向けのPCI Expressレーンは完全に分離されており、お互いの性能に影響が無いことがわかりました。
最後にGPUの冷却性能への影響をチェックしていきましょう。グラフィックスカードのストレステストは「OCCT 12.1.15」の「3D Standard」を15分実行し、SSDがアイドルの状態と、「CrystalDiskMark 8.0.5」のデータサイズ64GiBを3回連続で実施した場合の2種類で計測をしています。
ファンの回転数はファン1についてはほとんど変化がありませんでした。ファン2はSSDに負荷をかけると平均で50rpm高くなりますが、風切音に明確な違いはありません。またGPU温度についてはSSDに負荷をかけた場合は細かいブレが発生していますが、テスト実行中の平均温度はいずれも約66℃、ホットスポットの温度も約83℃で差は出ませんでした。
もともとSSDに比べて遥かに発熱量が多い、GPU(およびビデオメモリや電源回路)を冷却するために設計されているVGAクーラーにとって、PCI Express 5.0(x4)接続のハイエンドモデルでもM.2 SSDの発熱はそれほど負担にならないということでしょう。
GeForce RTX 4060 Tiでは余ってしまうPCI Expressレーンを活用して、M.2 SSDを搭載できるようにした「DUAL-RTX4060TI-O8G-SSD」。テスト結果から分かる通り、グラフィック性能、SSDの転送速度ともしっかりとそのポテンシャルを発揮できており、(イロモノっぽい見た目ながら)とても理にかなった設計であることがわかりました。
そしてもうひとつの懸案だった冷却についても、高性能なVGAクーラーのお陰で、GPUがアイドル時はPCI Express 5.0(x4)SSDにも関わらず、40℃台前半という驚異的な冷却性能を発揮します。さらにGPUに負荷がかかる状態でも50℃半ばまでしか上がらず、SSDとVGAの両方の発熱を完全に抑えることができました。
PCI Express(x16)スロットのレーンを分割する必要があるため、マザーボードを選ぶ点はデメリットですが、あらかじめチェックしておけば大きな問題になりません。また同等スペックの「DUAL-RTX4060TI-O8G」との価格差が1万円以上とやや大きいのは気になるところ。とは言え、M.2スロットを搭載する唯一無二の存在であることを考慮すれば許容できる範囲でしょう。
特にx16スロットはPCI Express 5.0に対応しているにも関わらず、M.2スロットがPCI Express 4.0に制限されるマザーボードを使っている人にとっては要チェック。レーン分割さえできれば、グラフィックスカードを搭載しつつ、PCI Express 5.0(x4)接続のSSDも使えるようになるアップグレードパスとして、実用的かつ現実的な選択肢になってくれるはずです。
協力:ASUS JAPAN株式会社