エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.1439
2024.07.19 更新
文:撮影・編集部 松枝 清顕
ここまで手つかずだった背面の広い空間に、グラフィックスカードを搭載してみる。なお有効スペースは長さ325mm、幅56mm、高さ(厚さ)145mmまで。あらゆる数値を厳密に開示するのはFractal流だ。
搭載テストは2パターンを実施。まず1つ目には、MSI「GeForce RTX 4060 GAMING X NV EDITION 8G」を用意した。外形寸法は幅130mm、長さ247mm、厚さ41mmの2スロット占有デザイン。補助電源コネクタは8pin x1で扱い易さ優先で選定を行っている。
搭載手順は、PCI-E Gen. 4 Riser Cable(PCI Express 4.0対応ライザーケーブル)に接続し、下向きの拡張スロット金具をネジ留め。PCI Express補助電源コネクタにケーブルを接続する。ライザーケーブル経由と下向きに固定する特異なスタイルだが、作業自体はスムーズに行う事ができるはずだ。
拡張スロットの固定ネジはフレームのサービスホールからドライバーを挿してねじ込む | グラフィックスカードのバックプレートと電源ユニット通気孔までの距離は約10mm |
有効スペースの長さ324mmにたいし、247mmのグラフィックスカードはさすがに多くのスペースを残し、搭載する事ができた。実測で搭載後のクリアランスは、トップの180mmファンまでが実測で約80mmを残している。選択したグラフィックスカードには十分な居住スペースであり、その分組み込みもし易かった。
2つ目には、NVIDIA GeForce RTX 4070 Founders Editionを用意した。カードサイズは実測で長さ約242mm、幅約112mm、厚さ約40mm(2スロット厚)となり、先に搭載したMSI「GeForce RTX 4060 GAMING X NV EDITION 8G」とほぼ変わらない。ではなぜ搭載を試みたのかと言えば、電源ユニットが12VHPWRコネクタを備えたATX 3.0準拠であり、”ちょっとやってみたかった”というのが正直なところ。
GeForce RTX 4060 GAMING X NV EDITION 8G同様、わざわざ計測するまでもなく、上部180mmファンまで広くスペースを残している |
グラフィックスカード搭載後の底面の様子。電源ユニットに接続した電源ケーブルや映像出力関連のケーブル類など一切はここから背面の開口部に抜ける格好になる |
とかく省スペースデザインPCケースによる自作は、ある程度のスキルと特有の緊張感、細心の注意が必要になってくる。Moodも例外では無く、ミドルタワーPCケースとは異なる独自ルールのもと、マニュアルを確認しながらの作業となった。とは言え、完成してしまえば思いの外、小うるさい神経質な箇所は限定的で、上手に隙間を埋めていく組み込み作業は、進めるにつれ見えてくるゴールを感じながらの楽しい時間でもあった。
Fractalらしい外観のMoodだが、この時点で多くの読者がどうしても”詰め込み系Mini-ITXケース”につきまとう冷却への懸念は払拭できていないはずだ。ただしこの手の製品をチョイスして楽しむには、既にそれなりのスキルを持っている事が前提であり、自作経験があればそもそも無茶なハイエンド構成で組み込むべきではない事は理解されているのではないだろうか。システムに高いパフォーマンスを期待するなら、Fractalがラインナップする多くのミドルタワーPCケースを選ぼう。
ちなみにMoodの冷却の要はトップに搭載される180mmファン「Dynamic X2 GP-18 PWM」だ。筒状の筐体を煙突に見立て、上部へ熱を排出するスタイルは、これまで他にも例があった。ここで誤解してはいけないのは、吸気側(筐体側)と排気側(天板側)ではまったく空気の流れが違うということ。
排出側は強いエアフローを感じるが、吸気側は思いの外エアフローを感じない。これはブレードの向きから当然の結果であり、筐体内部に吸気の風が吹き荒れることはあり得ない。仮にMoodの外装が超密閉空間であれば状況は変わるだろう。しかしラジエーターやグラフィックスカードに搭載される冷却ファンの”呼吸”には、外装に通気孔を設ける必要がある。スピーカーに見立てたファブリック素材の通気孔の役割はそんなところにある。
トップ部の180mmファンは、内部に熱が滞留しないように設置された排気機構であり、過剰に期待してはいけない。ほどほどのシステム構成で楽しむべき筐体がMoodだ。
提供:Fractal Design
株式会社アスク