エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.1473
2024.11.11 更新
文:撮影・編集部 松枝 清顕
軸受けにはSSO2 bearingが採用されている。ちなみにSSOとは、self-stabilising oil-pressure bearingの略で、直訳すれば”自己安定化油圧ベアリング”。歴代の名だたるNoctua製品での採用実績があり、信頼性の高さは世界中のユーザーが愛用している事で実証済みと言えるだろう。
オイルが封入された流体ベアリングと、ローター軸の自己安定化をサポートする磁石で構成。一般的なボールベアリングおよびスリーブベアリングよりも、高い精度と優れた寿命を特徴としている。
出典(https://noctua.at/en/sso2-bearing) |
なおSSO2はSSOからさらにブラッシュアップされたVersion.2(第2世代)で、射出成形技術により製造された金属ベアリングシェルにより、ローター軸と磁石のマージンを改善。結果、安定性と軸受けとしての精度、さらに耐久性が向上されている。
SSO2ベアリングの補足事項として、構成パーツには全て真鍮製のCNCミル加工ベアリングシェルの採用がアピールされている。製造精度および最小の許容差、これに付随する長期安定性は、部品ひとつのこだわりから成り立っている。
「NF-A12x25」や「NF-A14 PWM」にはNE-FD1 PWM ICが使われていたが、NF-A14x25 G2では新世代に移行されている。中心部に搭載されている新しいetaPERFモーターの特徴は、抵抗が減り、電流量が増える極めて低いインピーダンスを実現。高感度なホール効果センサーを内蔵し、最新のNE-FD6ドライブシステムによりエネルギー効率を最適化させている。専門用語も多く、独自の名称も相まって今ひとつ分かりにくいかもしれないが、要約すると極めて電気的ロスが少ないetaPERF モーターは、ほとんど動作音が聞こえない静かなモーターというワケだ。
出典:(https://noctua.at/en/etaperf-motor) |
なお従来型NE-FD1と新型NE-FD6をベースとしたモーターは、冷却ファンのモデルや回転数等のチューンにより異なるものの、平均改善率は10~15%。具体的には「NF-A14」(2,000rpm)に新しいetaPERFモーターを搭載すると、エネルギー効率は約13%向上するという。
冷却ファンにとって、空冷クーラーのヒートシンクや、水冷クーラーのラジエーターはエアフローの壁になり、背圧が発生。これに逆らう格好で動作すると僅かに回転速度が低下し、結果的にパフォーマンスが落ちるとされる。これを解消してくれるのが、NE-FD6ドライバーICにより実現した「SupraTorqueテクノロジー」だ。次のグラフでは、背圧等による気流抵抗が上昇するとトルクが継続的に増加し、回転が一定の数値を保つ状態を表している。
出典:(https://noctua.at/en/supratorque) |
そして、次のグラフはP/Q性能を表したもの。縦軸は静圧=Static pressure(mmH2O)、横軸は風量Airflow(㎥/h)で、グラフが示す曲線からスペクトルの上限で最大静圧が20%高く、背圧が低く(流体抵抗が低い)回転数が低下しないスペクトルの下限では、曲線の幅が狭くなっている。この結果から、背圧が掛かる環境において、SupraTorque搭載ファンが有利である事が分かるだろう。
出典:(https://noctua.at/en/supratorque) |
ちなみにNoctuaによるヒートシンク(空冷)とラジエーター(水冷)に対する吹きつけでの検証によると、SupraTorqueテクノロジーが約100rpmの速度低下を補う事で約0.3~0.6℃の範囲で冷却性能が向上。逆にラジエーター対して吸い込みの状態では、最大1.4℃の大幅な向上が見られるという(仮にSupraTorqueテクノロジーが無ければ回転数は150rpm遅くなる)。
NF-A14x25 G2 PWMは、最大回転数1,500rpmから最低回転数300rpmまでの範囲でPWM制御される。さらにオプションで、ボリューム式手動ファンコントローラー「NA-FC1」を使う事で、システムに合う最高のパフォーマンスまたは、無音に近い状態に調整できる。
ちなみに「NA-FC1」は、2017年5月17日(現地時間)に発表されたNoctuaの冷却系アクセサリー。国内市場ではやや遅れて販売がスタート。入手性は必ずしも良くないが、現在でもWeb通販など検索すると取り扱い店が確認できる。
付属品紹介のセッションから再びの登場となる「Low-Noise Adaptor」。Noctua製品ではお馴染みの“冷却ファン回転数減速ケーブル”で、PWM制御による冷却ファンの最大回転数を制限することで静音化が図れる。一方で風量が減り、静圧が落ちるのは当然のことで、使用環境に合わせて接続すればいい。ちなみに略称「L.N.A」の製品型番は「NA-RC16」とされる。
こちらも付属品紹介セッションから再びの登場。「NA-EC1」は4pinコネクタの延長ケーブル。デフォルトで200mmのケーブルを、プラス300mm延長できる。ケーブルはスリーブタイプで、システムによっては付属のY字ケーブル「NA-YC1」との併用も便利。
NF-A14x25 G2には、逆極性、過電圧、過電流(短絡)の各種保護機能を搭載。EMC(Electromagnetic Compatibility)についても、ノイズの放出が非常に低いため、電気干渉が重要な用途にも好適とされている。また万一ケーブル等の物理的干渉で意図せず回転が停止した場合でも、過負荷保護によりモーターの焼損等のトラブルが発生しない。
一般的に流通している安価な冷却ファンとは一線を画し、NF-A14x25 G2は電気安全性をはじめとする耐性等について徹底的にテストされており、CE、TÜV、UKCA、ULの認証を取得。該当するすべての標準(EN 62368-1、EN 55035、EN 55032、UL-507)を満たしている。
「NF-A14x25 G2」シリーズには6年間のメーカー保証が付く。これは全てのNoctua製冷却ファン同様で、150,000時間を超えるMTTF(Mean Time To Failure:平均故障時間)を誇る。
協力:Noctua