デンマークのDanamicsは、液体金属テクノロジーを採用するCPUクーラーの新モデル「Danamics LMX」を発表した。ワールドワイドでのローンチは2009年11月17日で市場想定売価は160ユーロ(28日現在136レート換算:21,760円)。
■リベンジなるか?Dantherm社のliquid metal採用クーラー新モデル
・「Danamics LMX」 160ユーロ
http://www.danamics.com/lmx/
1958年に設立された、サーマルテクノロジー分野を得意とする“Dantherm”グループに属する“Danamics”社は2005年からその活動を開始した。PCパーツメーカーと呼ぶには少々頼りなく、ラインナップは実質1モデルとなる。
実は今回リリースされる「LMX」の前に「Danamics LM10」というサイドフロー型CPUクーラーが存在するが、セールスは成功せず、結果は惨敗であった。
「LM10」は同社のチャレンジモデルとすれば、今回の「LMX」はリベンジモデルで、前出のDanthermの技術を活かした液体金属(liquid metal)を使用、それをニッケルメッキ加工が施されたパイプに封入し、熱移動および放熱フィンに熱を拡散させる能力を高め、120mmファンで一気に冷却させてしまおうというもので、外見だけでは見向きもされないオーソドックスさとは裏腹に“特殊な”技術が盛り込まれている。
この液体金属は、一般的なヒートパイプ構造とは異なり、熱の上昇による気化および液化の自己循環はできず、1W未満とされる電磁ポンプで循環させるもので、「LM10」搭載品よりも300%の循環効率が実現されているという。これについては今回のモデルの良さを褒めるべきか前作のひどさに驚くべきか意見の分かれる所だが、ここが最大のポイントとなっている。
なおこのポンプ駆動による電磁波がPCに引き起こす影響についても前作より大幅に改良がなされているそうだ。
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サーマルイメージ。トップ部に液体金属が溜まるスペースが用意されており、右側にあるポンプの駆動により循環させる仕組み |
ファンクリップにも工夫がみられ、オレンジ色のフックを外す事で簡単にファンが着脱できる |
スペックはL158.2x H170.5x D99mm、重量1180g(ヒートシンクのみ)。マテリアルは、放熱フィンがアルミニウム製(ニッケルメッキ)、液体金属管が銅製(ニッケルメッキ)で、外装部にプラスチックを使用。搭載ファンは120x 120x 25mm、2000rpm/75.7CFMとなり、1m距離での騒音値は28.6dBA、軸受けはハイドロベアリングで、オペレーティングボルテージは6.0-14.0V。なお搭載個数は吸気排気各1基がヒートシンクをサンドイッチするように搭載されている。
対応ソケットは、Intel LGA1366/1156/775、AMD Socket AM3/AM2+/AM2となり、1kg超の重量級なため、すべてネジ留めとされている。
執筆時点では国内発売のアナウンスは無く、同社サイトのインフォメーションを見る限り、販売網の狭さは否めず、チャレンジにせよリベンジにせよ、まずはこの課題をクリアさせなければ市場想定売価のダウンも見込めず、前作の二の前となる可能性は大いに秘められている。なお台湾の自作掲示板では早くも話題になっているものの、価格の高さから現実的ではないとの烙印が押されている。
とは言え、自作市場にとってこのようなチャレンジモデルは常に必要である。この製品の行く末に関してはこの時点ですでに大凡の予測はつくものの、自作ユーザーを楽しませてくれる新たなテクノロジーは称賛されるべきで、同社のチャレンジにお付き合いする国内流通はいないものだろうか。しかしながら、販売網のないヨーロッパのメーカーで、ここまで高いMSRPの商品を導入するには少々勇気がいる事だろう。売価3,000円程度でよく冷えて静かなCPUクーラーがいつでも購入できる日本市場に入り込む余地はゼロに限りなく近い。 |