エルミタージュ秋葉原［編集後記] 2011年の365日目。今年1年のエルミタを振り返る

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［編集後記] 2011年の365日目。今年1年のエルミタを振り返る
2011年12月31日 14:30 更新

　激動の2011年が終わろうとしている。今年は誰もが忘れる事ができない特別な1年になるだろう。暗い話題が多かったが、今年もエルミタ的にPC業界の1年を振り返ってみたいと思う。

■プレスリリース計1,906本、レビュー計67本から2011年を振り返る

　例によって2011年1月から12月までにお届けした「Press release」枠で、特に印象に残った記事を抜粋してみよう。

2011年1月（掲載本数：136本）
4日	［リリース] GIGABYTE、早くもAMD Fusion"Zacate"Mini-ITX「GA-E350N-USB3」発表
	［リリース] AMD、CPUとGPUを統合したAPU、「Eシリーズ」「Cシリーズ」発表
5日	［リリース] VIA、同社初となるデュアルコアCPU「Nano X2」プロセッサ発表
	［リリース] Micron、SATA3.0（6Gbps）インターフェイスSSD「RealSSD C400」シリーズ発表
	［リリース] AMD、「ATI Mobility」が消えたモバイル向けGPU「Radeon HD 6000M」シリーズ発表
6日	［リリース] インテル、Sandy Bridge Core i3/i5/i7正式発表
8日	[アキバ取材班] Sandy Bridgeカウントダウン秋葉原深夜販売&イベント現場レポート
9日	[アキバ取材班] インテル第2世代Core iシリーズ＆P67/H67デビュー。深夜販売に来たユーザーは純粋にSandy Bridge狙い
24日	［リリース] GIGABYTE、生粋のゲーマー向けマザーボード「G1-Killerシリーズ」発表
25日	［リリース] NVIDIAミドルレンジGPU、GeForce GTX 560Ti発表～各メーカーから続々登場～
29日	［業界動向] 株式会社ソリッドマイクロが営業停止。Photo Fast製品サポートは台湾本社で継続へ
2011年2月（掲載本数：124本）
1日	［障害情報] Intel 6シリーズチップ（Cougar Point）に不具合で出荷停止＆リコール
7日	［リリース] ドスパラ、T-ZONE跡地に「ドスパラパーツ館」を3月4日オープン
2011年3月（掲載本数：142本）
2日	［リリース] さよなら「かのぷ～」。グラスバレー株式会社に商号変更で「カノープス」が消滅
4日	［取材班] 秋葉原に日本最大級のPCパーツ専門ショップ「ドスパラパーツ館」オープン
8日	［リリース] SAPPHIRE、Radeon HD 6990搭載グラフィックスカード「SAPPHIRE HD6990 4GB PCI-E」発表
	［リリース] 日立製作所、Western DigitalにHDD事業譲渡を発表
11日	［取材ネタ] 14時46分発生の平成23年（2011年）東北地方太平洋沖地震により、秋葉原のPCパーツ各店舗のほぼ全店閉店
18日	［リリース] ASUSTeK、修理に関する業務（受付、出荷）は依然休業中。復旧目処たたず
24日	［リリース] NVIDIA、シリーズ最上位モデルのデュアルGPU「GeForce GTX 590」正式発表
	［リリース] ASUSTeK、P67/Intel H67搭載マザーボードの販売再開を発表
29日	［リリース] Intel、25nmプロセスの第3世代SSD「320 Series」発表
2011年4月（掲載本数：182本）
5日	［リリース] AMD、シリーズ初のミドルレンジモデル「Radeon HD 6790」を正式発表
20日	［リリース] SAMSUNG、HDD部門をSeagateに売却。WD/HGST猛追とSSD事業拡大へ
28日	［リリース] マイクロンジャパン、読込415MB/s、書込260MB/sの「Crucial m4 SSD」発表
2011年5月（掲載本数：144本）
11日	［リリース] ASUSTeK、Z68 Expressチップ搭載マザーは5モデル。5月中旬より順次発売開始
12日	［リリース] VIA、NanoBGA2対応クアッドコアプロセッサ「VIA QuadCore Processor」発表
17日	［リリース] ASUSTeK、「DirectCU II」搭載のGTX 560 OCモデル「ENGTX560 DCII TOP/2DI/1GD5」など2製品
30日	［COMPUTEX TAIPEI 2011] アジア最大級のPC見本市、「COMPUTEX TAIPEI 2011」明日開幕
	［リリース] NVIDIA、モバイルゲーマー向け向け新グラフィックスチップ「GeForce GTX 560M」発表
31日	［リリース] GIGABYTE、最新チップセットAMD900シリーズ搭載マザーボード4モデル発売
2011年6月（掲載本数：187本）
27日	[リリース] AMD、デスクトップ向け「AMD A」シリーズ対応チップセット「AMD A75」および「AMD A55」を正式発表
30日	［リリース] AMD、デスクトップ向けAPU「Llano」こと「AMD A」シリーズを正式発表、3日から店頭販売へ
2011年7月（掲載本数：168本）
7日	［アキバ取材班] 今日のコレオシアキバ店員のオススメパーツ PC DIY SHOP FreeT　「Xeon E3-1260L」※コレオシ第1回
	[リリース] NOFAN、無音システムPC自作用キット「Nofan A40」「Nofan A43」月末発売決定
9日	[業界動向] 迷走PhotoFast。国内正規代理店は結局サントラストで決着
14日	[エルミタ取材班] 明日オープンの「リンクスSR（リンクスショールーム）」。ひと足お先に行ってみた
21日	［リリース] Western Digital、2.5インチ9.5mm厚の容量1TB HDD「WD Scorpio Blue」出荷開始
2011年8月（掲載本数：176本）
2日	［リリース] 東芝、容量1TBの9.5mm厚2.5インチHDD「MQ01ABD100」量産開始
2011年9月（掲載本数：174本）
21日	[エルミタ取材班] 台風15号秋葉原接近中。一部パーツショップでは繰り上げ閉店も
2011年10月（掲載本数：154本）
6日	[業界動向] アップル創業者、スティーブ・ジョブズ氏死去
12日	[リリース] AMD、"ZAMBEZI"こと初の8コア搭載CPU「AMD FX」シリーズを発表
22日	［リリース] 気が早いASRock。未発表CPU「Core i7-2700K」のサポートリストを同社Webサイトにて公開中
2011年11月（掲載本数：159本）
10日	[業界動向] Indilinx新型コントローラー「Everest」採用SSD、OCZ「Octane」11月末～12月上旬発売
14日	［リリース] インテル、ハイエンド向けのLGA2011プラットフォームを正式発表
15日	［リリース] ASUSTeK、X79 Expressチップ搭載マザーボード「P9X79 DELUXE」など計3モデル発売
2011年12月（掲載本数：160本）
3日	[アキバ取材班] PC自作イベントの"聖地"「リナカフェ」閉店を惜しむ声
13日	[リリース] HGST、業界最速10,000rpmの2.5インチHDD「Ultrastar C10K900」シリーズ出荷開始
18日	[エルミタ取材班] 今冬登場の新製品をチェックしておこう。「2011 AKIBA-PC-DIY EXPO 冬の陣」開催
22日	［発表] AMD、新型ハイエンドGPU「Radeon HD 7970」を正式発表
24日	[取材ネタ] 重盛さと美さんもキタ！「第4回秋葉原PCゲームフェスタ」が今日から開幕！
27日	[リリース] ついに出た。ZALMANからSandForce SF-2281搭載のSATA3.0 SSD「SSD-F1」シリーズ国内上陸

●「Sandy Bridge」で賑わった自作市場。一転、リコールで大騒動に

　Intel Sandy Bridgeから2011年の自作業界が幕を開け、身を刺す寒さの中での深夜販売は大いに盛り上がりを見せた。しかし好調なスタートから一転、翌月には6シリーズチップセットのリコールから大騒動に発展。店頭の陳列棚からは対応マザーボードが全て撤去されるという前代未聞の出来事は、自作業界にとって大打撃となった。旧正月直前のトラブルに、台湾メーカーは休日返上で対応に追われることになる。
　不具合の内容はSATA2.0（3Gbps）ポートにデバイスを接続すると、徐々に速度が低下していくというもので、少々お粗末と言わざるを得ない。
　たいへん期待されたプラットフォームだっただけに、Intelはもとより関係各社は“全勢力を挙げて”対応にあたり、比較的早い段階で販売再開にこぎ着ける事ができた。

Sandy Bridge登場の翌月にはリコールと相成った6シリーズチップセット。各メーカーは交換対応方法を相次いで発表し、“余計な仕事”を余儀なくされた。ちなみに編集部のテスト用マザーボードも見事にビンゴ。交換対応を受けるまでテスト漬けにしたが、5月届けられたピカピカの新品（Bステップ）には、オマケのグリスが同梱されていた

●タイの洪水被害によるHDD価格の高騰で右往左往の自作業界

高騰だけでなく品切れ状態に陥り、遂に価格表には“時価”の文字が

　タイの甚大な洪水被害は人的被害はもとより、多くの企業が大打撃を受け、未だ復旧の目処が立たない現地工場も少なくないと聞く。こと自作業界にとっても対岸の火事ではなく、HDD価格が高騰したことは記憶に新しい。自作には必須のストレージデバイスとあって、コンシューマはもとより、法人需要にも大きな痛手となった。反面、利幅の少ないHDDの高騰に便乗し、通常では考えられない利益を流通業者が手にしたとも伝えられている。
　他方で同じく記憶媒体であるSSDに一部シフトされる動きもみられ、某SSDメーカーによると前年同月比で4割増しの出荷量になったところも。とは言え、大容量記憶媒体として、HDDは絶対的に必要なPC構成部品。早期の現地工場復旧による供給の安定化が待たれる。

●スティーブ・ジョブズ氏、逝く

Steve Jobs（1955-2011）

　アメリカ・アップルの創業者、スティーブ・ジョブズ（Steve Jobs）氏が亡くなったのは10月5日だった。享年56歳はあまりにも早すぎる。自作＝Windows（Microsoft）という図式から、自作派にとってアップルは対局にあるように感じる事もあったが、いつの間にかその距離は縮まっていた。それはiPodであり、iPhoneであり、iPadである事は言うまでもない。
　ジョブズ氏が鬼籍に入り、国内外問わず多数のドキュメンタリーが放送され、氏のカリスマ性はもとより、想像力、発想力、行動力にはあらためて驚かされる。1976年（昭和51年）の「Apple Computer I」販売開始から没年の2011年（平成23年）までの“わずか”約35年間で世界を変えたジョブズ氏。バラク・オバマによる「ジョブズの作ったデバイスにより、世界中の人々が彼の訃報を知った」という追悼スピーチが心を打つ。

●さようならリナックスカフェ

店内奥に用意されたプレゼンスペース

　「カフェソラーレリナックスカフェ秋葉原店」が12月25日に閉店した。ビルの改装計画に伴う閉店は、業界関係者だけでなく、多くのユーザーから惜しまれる声があがった。
　説明するまでもなく、メーカーや代理店の週末イベント会場、さらに深夜販売ではランドマーク的存在となっていた自作の“聖地”が無くなってしまった事は実に寂しい。
　店内奥で行われたプレゼンテーション、右側にレイアウトされたカウンターで振る舞われたフリードリンク、決して広くない展示スペースで新製品に触れ、じゃんけん大会で賑わったあの光景をもう見る事はできない。
　UDXやベルサール秋葉原などの“代替えスペース”はあるものの、リナックスカフェが醸し出す、自作にマッチした一種独特な雰囲気は作れまい。余談だがイベントによる1日貸し切り料金は40万円程度だったという。

●2011年度アクセスランキング

　今年お届けした「Press release」とレビュー枠、計1,973本のアクセスランキング上位5位は以下通りとなった。

1位	エルミタ的速攻撮って出しレビュー　Vol.82　次世代 AMD 9シリーズがやってきた「AMD 990FX + SB950」検証（5月21日）
2位	エルミタ的速攻撮って出しレビュー　Vol.77　SilverStone「RAVEN 3」～ルールを再定義～（3月31日）
3位	エルミタ的速攻撮って出しレビュー　Vol.79　エルミタ台湾特派員、「Z68 Express」マザーボードを買う（5月8日）
4位	［障害情報] Intel 6シリーズチップ（Cougar Point）に不具合で出荷停止＆リコール（2月1日）
5位	[アキバ取材班] Sandy Bridgeカウントダウン秋葉原深夜販売&イベント現場レポート（1月8日）

アメリカや台湾、中国だけでなく中東からのアクセスも多かったAMD 990FXマザー記事が2011年アクセスNo.1

　1位はAMD 990FXチップを搭載したGIGABYTE「GA-990FXA-UD7」の「速攻撮って出しレビュー」となった。
　正式発表前のAMD 990FXマザーボードを独自ルートから入手。“都合により”日本国内超短期滞在のスケジュールから、大慌てで撮影からテストまでを行った。国内はもとより、海外から多くのアクセスを集め、ダントツの1位を記録した。
　2位につけたのはSilverStone「RAVEN 3」のレビュー記事。前作のヒットから、日本国内ユーザーの関心は非常に高く、1位とは倍以上の差とはいえ、CPUやマザーボードの記事よりも上位に付ける人気振りはエルミタらしい結果と言えるだろう。
　3位はフライング販売されていた台湾光華商場で入手した、Intel Z68 Expressマザーボード記事。「Z」シリーズの期待度が高い中での「速攻撮って出し」は好評だった。
　4位と5位はいずれもSandy BridgeとIntel 6シリーズチップセット関連。盛り上がったカウントダウンイベントよりも、リコール記事がランク上位と相成り、なんとも皮肉な結果といえる。

●2011年レビュー数計67本中、最も印象に残った製品

SilverStone「SST-TJ08B-E」

　レビュー枠で人気が集まるのは今年もSSDだった。平均的にアクセスが多く、ユーザーの関心が依然高い事が窺える。中でもADATAの「S510」シリーズをRAID化させたレビューは人気で、システム領域の高速化として導入するケースが多い中、価格が手ごろになってきたことで、ユーザーの関心はさらなる高速化にも食指が動いてきているものと思われる。
　最も印象深かった製品は、SilverStone「SST-TJ08B-E」だった。毎年のように単なる装飾レベルではない“実用的ギミック”を新たに盛り込んでくるSilverStone。今回のモデルもMicroATXの限られたスペースの中で、上手にエアフローレイアウトを配置し、説得力のある設計はライバル製品よりも1歩抜きん出ている。例えるならば、ライバルモデルが一般的な集合住宅なら、「SST-TJ08B-E」はデザイナーズマンションと言ったところだろうか。
　早くも同社の新型PCケースが編集部に到着している。来年1月掲載予定なので、こちらにも期待して頂きたい。

●嗜好品としての自作PC。「東日本大震災」のこと

あの日、我々には何ができたのだろうか

　本稿最後は、やはり3月11日に発生した東日本大震災に触れずにはいられない。
　地震発生直後、秋葉原取材班は自転車でアキバに向ったが、携帯電話がつながりにくく、PCパーツショップの営業時間切り上げを告知する張り紙の画像だけが編集部に送られてくるという状態。現地の被害状況をリアルタイムに流し続ける編集部内のテレビ映像を見ながら、アキバ取材班は果たしてこの状況を理解しているのだろうかと考えた。取材班が撮影した画像には、一部外壁が崩落したビルの様子も映し出されていたが、今まさに起きている東北の映像とのギャップを我々が埋められるはずは無い。
　PCはビジネスはもとより、日常誰もが無くてはならない道具だが、こと「自作PC」はただの道具ではなく嗜好品という側面が強い。その楽しさを伝えるエルミタが、無責任に震災直後の秋葉原の様子をやみくもに掲載し続けていいのだろうか。悩んだ末、多くの画像は掲載せず、早々に掲載打ち切りを決めた。
　年末、華視新聞とYahoo台湾合同で2011年度「十大幸福事件」（最も幸せなニュース）を募集したところ、その1位に「東日本大震災に台湾人が募金をして感謝されたこと」が選ばれた。台湾は日本の“隣国”であり、自作PCとは切っても切れない関係にある。日本では恐らく大きく報道されないであろうこんな話題こそ、スポットをあてるべきではないかと思う。

　さて、2011年もあと10時間あまり。来年も楽しく賑やかなサイト作りに精進していこうと思う次第。年明け早々からレビュースケジュールはすでに満杯状態で、年末年始も無く、エルミタ編集部は元気に稼働中。というワケで今年も1年、ご愛読頂きましてありがとうございました。そして心より、良いお年を。

TEXT：GDM編集部松枝清顕

■［編集後記] 2010年の365日目。今年1年のエルミタを振り返る
http://www.gdm.or.jp/pressrelease/201012/31_01.html

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