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エルミタ的「一点突破」 CPUクーラー編 Vol.2
Thermalright 「Venomous X」検証
2010年3月2日 16:00
TEXT:G&D matrix編集部 松枝 清顕
 
高価なCPUクーラーにはそれなりに理由があるはずだ

 前回の「一点突破 CPUクーラー編」では、Scytheの「夜叉」をチョイスした。実勢価格4,000円台のモデルに秘められたパフォーマンスは20点満点で19.5点という高得点が付き、Scytheならではとも言える汎用CPUクーラーの実力を見せつけられる結果となった。
 実は掲載後、編集部内外から第1回にしては高得点を与えすぎではないか?との声も聞かれたが、それは問題としない。なぜならば、Intel Core i5-750純正のリテールクーラー基準でのポイントであり、実用レベルで言えば“わざわざ換装させる必要がない”パーツとも言えるカテゴリとなるため、裏を返せば高いポイントが付かなければそもそも製品の意味が無くなってしまう事になる。
 回を重ねる毎にコンセプトはご理解頂けると思うが、今後も常に満点になるような製品が店頭に並ぶ事を期待するばかりだ。

Venomous X
あか抜けてしまったThermalrightの外装パッケージ
  さて、実売4,000円クラスモデルの後に登場するのは、価格にしておよそ2倍、国内市場では信頼性の高いThermalright社のサイドフロー型で、先日発売されたばかりの「Venomous X」だ。同社が採用する高品質部材と“工作美”とも言える精度の高さは、未だにブランド志向の強い国内市場で根強い支持を集めており、多少高くても売れてしまう。(ZALMANも同じ部類に属す希有なメーカーと言えるだろう)また、一部に残る“信仰心”として、冷却系部品は「価格が高い方が冷えるのではないか?」という潜在的なファクターも人気の一因となっているのではないだろうか。デフレ時代に全く妥協する振りすらみせないThermalright社期待の新製品「Venomous X」冷却本来の実力の検証と併せて、人気の秘訣を読みとって行こう。



エルミタ的レギュレーション 計測環境および計測方法

エルミタ的レギュレーション
CPUクーラー計測環境および計測方法

1.マザーボードはケースに組み込まない状態で計測する
(ケースファンなどケース内エアフローの影響を受けない状態で、できる限りCPUクーラー本来の性能を見る)
2.マザーボードなどの各種設定はデフォルトのまま行う
3.CPU全コアに100%負荷をかけ、5回テストを行う
(計5回テスト中、平均値のスコアを掲載)
4.騒音値は、ファンから10cmの距離で計測
(騒音計はファンと垂直方向に設置)
5.高負荷状態は「OCCT 3.1.0」を使用
(アイドル時および高負荷時(100%/20分)の数値を計測)
6.コア温度およびファン回転数は「SpeedFan 4.40」を使用
(アイドル時および高負荷時(100%/20分)の数値を計測)

検証使用機材
CPU Intel「Core i5-750」 Lynnfield
(2.66GHz/TB時最大3.20GHz/TDP95W)
マザーボード GIGABYTE「P55A-UD3」
(Intel P55チップセット/ATX)
メモリ OCZ「OCZ3P1333LV4GK」
(1333MHz/PC3-10666/CL 7-7-7-20/1.65v)
SSD OCZ Vertex Series 120GB(SATA2/2.5インチ)
VGA XFX「HD-567X-YNFC」
(Radoen HD 5670 512MB DDR5)
OS Windows 7 Ultimate 64bit
放射温度計 AD-5611A(非接触型温度計)
測定範囲(D/S比)11:1
騒音計 TM-102(国際規格IEC651 TYPE2適合)
検証ツール
高負荷状態 OCCT 3.1.0
温度/回転数 SpeedFan 4.40

※本稿では、Intel Core i5-750同梱の純正クーラーを基準としてテストを行っている。独自に設けたレギュレーションは以下通りで、各テストの平均値を採用。なお隣接するグラフィックスカード(Radeon HD 5670 512MB)のGPUクーラーは稼働しており、CPUソケット周りはより使用環境に近い温度および騒音値で計測している。
(Core i5-750純正CPUクーラーのテスト詳細はこちらを参照



「Venomous X」ディテールチェック

 テストを行う前に「Venomous X」の外観をチェックしておこう。まず触れずにはいられないのが外装パッケージだ。Thermalrightと言えばいわゆる茶箱に日本代理店(Scythe社)によるシールが貼られた箱というイメージだが、このモデルは専用の化粧箱に収められている。さらに同梱品が詰められた「Accessory Pack」なる箱も用意され、ついにThermalrightもリテールパッケージに本腰を入れたのかと思わずにはいられない。(「TRue Black 120 REV.C」等のブラックパッケージも存在はしていたが)

 次にヒートシンクを見ると、さすがにThermalrightらしさは健在、総ニッケルメッキ処理が施された47枚からなる放熱フィンは重厚そのもの。また銅製ベース部は鏡面仕上げで、さらにφ6mm×6本のヒートパイプで構成されている。

Venomous X Venomous X
Thermalrightの一貫したデザインはそのままに、改良が重ねられたその答えが「Venomous X」という事になる フィン枚数は47枚。貫通された放熱フィンとの接合具合も高レベルで、剛性の高さも良好。ベース部は鏡面仕上げが施されている
Venomous X Venomous X
放熱フィンにはこのように切り込みが入る事で、熱離れを素早くさせる工夫が見られる 放熱フィンは水平ではなく、ウェーブ状になっている。恐らくは放熱フィン間の風の流れを少しでも落とさないため=冷却能力の向上がその目的と思われる
Venomous X Venomous X
受熱ベース部厚は実測値で15mm。なおセンター部にある穴は、「Pressure Adjustable mounting plate」と呼ばれるパーツを装着するために設けられている 非常に美しい鏡面仕上げの銅製受熱ベース部。ヒートパイプの接合部も丁寧に作られており、工作精度の高さが窺える
Venomous X Venomous X
外装パッケージの中に入れられた「Accessory Pack」。中からリテンションやネジ等がゴッソリと同梱されている (右上)Chill Factor 2 Thermal Paste、(右下)Angled Wrench、(左上)12cm Fan Wire Clip、(左下)Anti-Vibration Strip
Venomous X Venomous X
(右)Thumbscrew cap、(左)Pressure Adjustable mounting plate (右)Anchoring bracket mount、(左上)Multiple support backplate、(左中)Backplate cap for 775 platform、(左下)Screw pillar
Venomous X Venomous X
Multiple support backplateのスライド可動部。右からLGA1366→1156→775用。 Anchoring bracket mountにも3種ソケット用に穴が空けられている。3種類とも穴が完全に分かれるほどのピッチの違いでは無いため、“雲”のようなシルエットに。これを見るだに統一させないIntelの策略(?)が、、、



一見複雑な台座作成。順を追ってチェックする

 ヒートシンクのみの重量は755gとなる「Venomous X」は、Intel純正CPUクーラーが採用するいわゆるプッシュピンタイプでは心許ない。そこでこのモデルはバックプレートを使った専用リテンションでマザーボードに装着させる事になっている。
 ディテールチェックでその構成部品の概要を紹介したが、ここでは装着方法について順を追って見て行きたい。
Venomous X Venomous X
Multiple support backplateをソケット周り4箇所の穴に装着 突きだした「Multiple support backplate」に
Venomous X Venomous X
マザーボード基板に接触する基礎部「Screw pillar」には予め絶縁の役割を果たすシリコンブッシュが装着されている 「Anchoring bracket mount」を載せたところ。徐々に“それ”らしくなってきた
Venomous X Venomous X
使用するマザーボードはLGA1156になるため、「Anchoring bracket mount」の穴はセンター位置を使用する事になる 手回しネジで四隅を固定。相変わらずの精度の高さは同社ならでは。なおグリスを塗布する事をお忘れ無く
Venomous X Venomous X
ヒートシンクを仮搭載し、位置決めをする。ベース上部にある窪みは、CPUにテンションを掛けるために重要な「Pressure Adjustable mounting plate」のセンター部分にあたる Pressure Adjustable mounting plate」を「Anchoring bracket mount」に装着し、ヒートシンクを固定する。今回は手っ取り早くプラスドライバーで締め付けを行ったが、マニュアル通り行けば同梱されているレンチを使用のこと
Venomous X Venomous X
Pressure Adjustable mounting plate」センター部にあるネジにはギミックが隠されている。「Angled Wrench」を使って締め付けることで最大31.75kg、緩めることで最小18.14kgのテンションが任意で調節が可能



小軸&大型ブレード設計「KAZE JYUNI」をチョイス

 このモデルのひとつ前に「MUX-120」というサイドフロー型CPUクーラーがリリースされており、固定回転型の「Ultra low noise X-Silentファン」120mmファンが付属されていた。Thermalrightも遂にファン同梱にシフトするのかと思いきや、
「Venomous X」ではまたファンが別売りとなっている。そこで今回のテストには、Vol.1でお届けしたScythe「夜叉」にも同梱されていた小軸&大型ブレードで静音+大風量を実現させた「KAZE JYUNI」PWM可変ファンをチョイスした。詳細スペックついては前回レビューを参照頂くとして割愛するが、拡張ブラケットに装着するファンコントローラーにより、PWM可変帯域を最大(740-1900rpm)-最小(470-1340rpm)で任意設定する事ができる。
Venomous X Venomous X
拡張ブラケットに搭載させるPWM可変帯域を調整するボリュームファンコン。ギミックとしては秀逸で、稼働状況により簡単にファンの性格を変更する事ができる。なおヒートシンクへの装着には「12cm Fan Wire Clip」を使用。リブ無しファンのみが装着できる。若干分かりにくいが、ファンとヒートシンクの間に挟まっているのは振動防止用ラバー「Anti-Vibration Strip」。片側両面テープ付きで扱いがし易い

次のページからは、冷却能力、騒音値、回転数のテストを行う事にしよう。比較対照サンプルは本稿の基準として第1回でテストを行ったIntel Core i5-750の純正CPUクーラーだ。なかなか良い結果が出ているのでご期待あれ。
 

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Venomous X
・サイズ:127×63×H160mm(クーラー本体)
・対応ファン:リブ無し120mm(別売り)
・対応CPU
Intel LGA775/1366/1156
・ヒートパイプ径 6mm径×6本
・本体重量:755g
・付属品
グリス、図解入り英語マニュアル、ファン固定用クリップ×2セット
・パッケージサイズ
220×175×113mm/1310g
・実勢価格税込8,000円〜9,000円前後
(2010年3月現在)
メーカー製品情報
 
 
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