|
|
|
|Cherry軸考【その1】 Cherry MXスイッチとは?
ごく一般的なメンブレンキーボードの荷重は60g前後と言われているが、キーの支えとなるアクチュエータ(構造体)に柔らかいゴム碗を使用しているため、その不安定さから実際は指に想像以上の負担がかかってしまう。その点Cherry MXスイッチの機械的機構は規則正しい挙動をするため、常に一定の負荷しか掛からないという利点がある。つまり荷重特性に優れたCherry MXスイッチを採用する「Quick Fire Rapid」シリーズは、長時間の使用でも指が疲れにくいというわけだ。
ちなみにCherry MXスイッチのキーストロークは4mmで、それぞれストローク半ばの2mm付近に到達したタイミングで認識点を迎えるように設定されている。対して一般的なキーボードはキーのほぼ全てを押し込まなければ反応しないものが多いことは留意しておきたい。
|
高級メカニカルスイッチのCherry MXスイッチ。画像に写る「赤軸」は生産数の少ない希少なモデルだ |
|
|
日本でメカニカルキーといえば、もはやCherryスイッチのことと言っても過言ではない。スイッチ自体の機構はずいぶん昔に設計が完成されたものだが、いまだに人気を保つ異例のロングランスイッチだ |
|
|
Cherry MXスイッチは「Quick Fire Rapid」が採用する「茶軸」「黒軸」「赤軸」に「青軸」を加えた4種類が広く流通しているが、色を冠した名前を聞いただけではやや抽象的で違いが分かりにくい。そこでまずCherry MXスイッチを打鍵感(タクタイルフィール)でとらえ、大まかにグループ分けしてみよう。
【タクタイル】
押下した際に何らかのクリック感が存在するもの。入力を指先の感触で認識できるのが特徴で、「茶軸」がこれに該当する。
【クリックタクタイル】
押下した際にクリック感だけではなく明確なクリック音がするもの。指先の感触に加えて耳でも入力を認識できるのが特徴。「青軸」がこれに該当する。
【リニア】
押下した際にクリック感がまったく存在しないもの。押しこむほどに反発力が強くなるのが特徴。「黒軸」と「赤軸」がこれに該当する。 |
このように打鍵感の特性がそれぞれ明確に異なるため、Cherry MXスイッチは軸が変わればまったく別の表情を見せてくれる。好みでいずれを選ぶもよし、気分に応じて複数のスイッチを使い分けるのも楽しい。
それでは次項から「Quick Fire Rapid」シリーズそれぞれに採用される「茶軸」「黒軸」「赤軸」にフォーカスし、各スイッチの仕様を解説しよう。
なお、より詳細にスイッチの特性をイメージしていただくために、ZF Electronics Corporationの公式HPにある押下特性のグラフを並べてみた。荷重表記がcNになっているが、「1cN=0.98g重」のため、そのままgに読み替えていただいてよい。ただし、再後発のスイッチのためか「赤軸」の特性表だけは公式HPでも確認できなかった。参考に同様の特性をもつ「黒軸」のグラフを掲載しているので、一回り低い曲線をイメージして把握に役立てて欲しい。
|Cherry軸考【その2】 軽快で楽しい「茶軸」
|
茶軸の押下特性グラフ。反発点を過ぎた後に荷重が抜ける様子が示されている。勢いのまま一気に底打ちするため、認識点を意識することはないだろう |
|
|
荷重は約50±10g。1mmとかなり浅い部分に柔らかめの反発点が設定されており、そこを抜けると一気に荷重が抜ける特徴がある。そのため非常に軽快な底打ち感が楽しめるため、操作感は実に快適だ。
そして第一印象は「とにかく軽い」ということ。クセもなく、万人受けしやすいスタンダードなスイッチだ。とりあえずメカニカルキーボードを試してみたい、という人には無条件でオススメできる。
|
Cherry MXスイッチ「茶軸」。スタンダードな打鍵感で、Cherry軸の中では1番人気。その軽快さに惚れ込んで、長く使い続けているユーザーも多いのではないだろうか |
|
|
|Cherry軸考【その3】 高速打鍵に最適な「黒軸」
|
一定の割合で荷重が増えていき、底打ち時には約80gに達する。無理な底打ちは必要以上に指に負担をかけるため、あまりオススメできない |
|
|
荷重は約40〜80g。ストローク半ばの2mm付近で約60gの認識点を迎える。基本的にはそのあたりでスイッチの反発力にまかせ、そのまま指を戻すのが本来の使い方。底打ちをする必要がないので、フワフワとした(あるいはキートップを撫でるかのような)独特の入力方法になる。強力な反発力で始点と認識点を効率よく往復できるため、連続した高速入力には最適。しかし一般的なキーボードとかけ離れた指使いには、ある程度の慣れが必要だ。
|
Cherry MXスイッチの中では最もクセの強い「黒軸」。しかし一度慣れてしまえば、その独特の浮遊感に病みつきになるだろう。高速入力に適しているため、ゲーミングユーザーにもオススメ |
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|