2018.08.29 00:00 更新
2018.08.29 取材
ガジェットライフにどっぷりハマる、ギークな野郎は毎日何を考えている?「ギークの殿堂」でお馴染みなアノ人が、スマホやデバイスのアレコレから、業界事情やオトクな契約プランに至るまでを徒然に語る。今回は、すっかり最新スマホの潮流として定着した、ディスプレイ上の“ノッチ”について考えてみることに。
ここしばらくで、スマートフォンのディスプレイ枠(ベゼル)を限界まで細くした「ベゼルレス」モデルが増えてきた。枠を取り去ってディスプレイが広くなれば、そのままのサイズでより大画面を楽しむことができる。市場が飽和状態になる中で、少しでも他社との差別化を図ろうという、メーカーの技術戦争的な側面もあるだろう。
その源流の一つに挙げられるのが、2014年に発売されたシャープの「AQUOS CRYSTAL」だ。なんとも未来感あふれる“三辺狭額縁”と呼ばれた革新的なデザインは、当時大きな話題になった。ところがその後はしばらく追随するメーカーは現れず、再び脚光を浴びるのは、2016年にXiaomiからリリースされた「Mi MIX」の登場を待つことになる。
初めて実用的なベゼルレススマホとして登場した、シャープの「AQUOS CRYSTAL」。先進的なデザインとは裏腹に、あまりに平凡なスペックだったことからヒットには結びつかなかった。むしろオマケの高級スピーカーが転売で話題になることに・・・ | ベゼルレス仕様に再び脚光を浴びせる存在になった、Xiaomiの野心作「Mi MIX」。発売時はマニアも勇んで購入、中国版にGoole Playを無理やり入れて実用化したりしていた |
これが実に衝撃的な端末で、その洗練されたデザインやスペック、素材に至るまで、すべてが世界中のマニアを魅了した。今思い返せば、この時点が真の“ベゼルレススマホの夜明け”だったのかもしれない。
そしてやってきたベゼルレスブーム。「Mi MIX」が登場した翌年の2017年には、Samsungが「Galaxy S8」「Galaxy S8+」を発売する。エッジで左右ベゼルが消滅、さらに必要なセンサー類をギリギリまで削った上部ベゼルに控えめに収めるという、いわば「正統ベゼルレス派」と呼べるデザインだ。
ベゼルレスを目指すスタイルの中でも、従来の延長線上で追求しているのがSamsung。「Galaxy S8」シリーズやその後継でも、ある意味で正統派なデザインを採用した | アップルが「iPhone X」で採用した全画面ディスプレイ。「上から下まですべてがディスプレイ」と発表会で豪語していたものの、上に何かがあるような・・・ |
もちろんライバルのアップルも黙っておらず、半年後に「iPhone X」を投入する。「すべてがスクリーンのiPhone」や「デバイスそのものがディスプレイ」と謳うほぼ全面をディスプレイとした端末だったが・・・上部の“切り欠き”の存在が大きな議論に火を点けることになった。
そもそも現行のスマートフォンは、ことごとくディスプレイ上部にカメラやセンサーを搭載している。これは自撮りや顔認証を正確かつシンプルに行うためで、どうしても取り除けない部分が残ってしまったというワケだ。この妙な残留物は、英語で“切り目”や“くぼみ”を意味する「ノッチ」と通称されることになる。
現行のスマホには不可欠なインカメラやセンサー、スピーカーなどを収めた「ノッチ」部分。限りなくベゼルレスではあるものの、実質的なベゼルの残留物として存在を主張している |
当然ながらノッチの是非は論争になり、「そもそもベゼルレスとは呼べないのでは」という意見、「見た目がダサい」というデザイン上の拒否反応に至るまで(もちろん意に介さない人もいた)、世界中で話題になった。ところが多数のメーカーがこれに追従、ファーウェイも「HUAWEI P20 Pro」でノッチスマホの名乗りを上げる。ここにきて、世界シェア第1位から第3位までの巨大メーカーがベゼルレスを主力としたことで、このキーワードは今日のトレンドとしての地位を確立することになった。
2018年はベゼルレスがトレンドとして定着、世界3位のファーウェイも「HUAWEI P20 Pro」でノッチを採用した。「iPhone X」に比べれば、かなりサイズを絞っているのが分かる |
もっともファーウェイは「iPhone X」に比べてノッチの面積が小さいことをウリにしており、アップルが「大ノッチ派」とすれば、ファーウェイは「小ノッチ派」ということになるだろうか。