2019.01.23 00:00 更新
2019.01.23 取材
ガジェットライフにどっぷりハマる、ギークな野郎は毎日何を考えている?「ギークの殿堂」でお馴染みなアノ人が、スマホやデバイスのアレコレから、業界事情やオトクな契約プランに至るまでを徒然に語る。今回は、いよいよオワコンかと騒がれているApple情勢について、勝手に考えてみることに。
2019年の年明け早々、まず最初に飛び込んできたニュースが株価の下落と急速な円高だった。1ドル109円前後で推移していた為替も、一時104円にまで急上昇。「いったい何が起きているのか?」と世界を騒がせた。
経済界では、その原因の一つがApple社の業績下方修正にあると指摘されている。同社はこれまでも「iPhoneが予想より売れていない」などの理由により、2年おきくらいで“株価暴落”と何事もない回復を繰り返してきた。ところが今回の場合、やや事情が深刻なようだ。
最新iPhoneの不振から、約20年ぶりの業績下方修正を発表したApple。主力モデルと位置付けた「iPhone XR」も伸び悩み、結果的に株式市場の混乱を招いてしまった |
CEOのティム・クック氏によれば、中国圏でのシェアが縮小したことが大きな要因だという。ただし「iPhone XS」や「iPhone XR」が10万円を超えるせいで日本でも買い控えが目立っており、中国圏だけの問題とも思えない。Appleの業績下方修正は20年ぶりとあって、「いよいよAppleもオワコンか」という声もあるが、果たして本当にそうなのだろうか。
ここ1~2年のスマホ市場に目を向けると、すっかりディスプレイの大型化がトレンドとなっていることが実感できる。ベゼルレス化にともない、2018年には「Galaxy Note9」や「Find X」のような、画面サイズが6.4インチに達するモデルが相次いで登場した。
この流れがAppleにも波及しており、2018年には6.1インチの「iPhone XR」、6.5インチの「iPhone XS Max」がリリースされた。6.5インチ前後のスマホは、確かに従来“ズルトラ難民”と言われた大画面の愛好家やギーク層にはヒットするだろう。
「Galaxy Note9」や「Find X」などベゼルレスモデルの台頭もあり、昨今の最新スマホの画面サイズは大型化を続けている |
しかし一般的なユーザーには、むしろ小型スマホを求める声が多い気がしてならない。実際に「iPhone SE」がディスコンになりAppleストアから消えると、すかさず在庫を求める人が秋葉原へ駆け込んだ。約28,000円で販売されていたのに、翌週には買取価格がほぼ同額に跳ね上がるなど、近年稀に見る特需が起こったのは記憶に新しい。
それだけ“まともな4インチスマホ”は貴重な存在なのであり、需要も高い。ここで「iPhone SE2」(仮)が登場すれば、大ヒット間違いなしだったハズだ。
「iPhone SE」がディスコンになった際は、アキバでも在庫が一瞬で売り切れる騒ぎに。やはり小型スマホを求める声は根強いようだ |
実はディスプレイ大型化のトレンドはiPadにも言えること。2012年に登場した「iPad mini」は毎年好評で、それなりにヒットしていた。とにかく軽く、持ち運びやすい。大きいiPadは持っていなくてもminiなら持っている、という人もいるかもしれない。ところが2015年の「iPad mini4」リリースを最後に、AppleはiPadでも大型化路線を突き進むことになった。
現時点におけるminiシリーズ最後のモデル「iPad mini4」。コンパクトなiPadはAppleによって切り捨てられたのだろうか? |
2018年には11・13インチの「iPad Pro」が登場。その豪華な機能やスペックは、一部のクリエイター以外には使い切れないほどのレベルに達した。それは価格にも反映され、とても気軽に手が出せる代物ではなくなっている。もちろんそれ以外の層に向けては「iPad 2018」などの無印モデルがあるものの、Appleのラインナップは全体的に「iPad Pro」シリーズが占めており、スペックで差をつけても稼ぎにくい体質になっている気がする。
「iPad mini」の黄昏と同時に姿を現した、巨大モデルの「iPad Pro」シリーズ。ラインナップを見ても、AppleがProシリーズを売りたがっているのが分かる |
なんとも暗い話ばかり!一体全体Appleはオワコンになってしまったのだろうか?・・・と聞かれれば、そうだとは思わない。同社は時価総額ランキング2位(執筆時点)、乱暴に言えば「世界で二番目に儲かっている会社」なのだ。業績も20年ぶりに下向いたというだけで、ティム・クック氏も「ちょっと大型化しすぎたかな、テヘ!」くらいに考えているのかもしれない。
世界一優秀なデザイナーやエンジニアが集結し、今やすっかりジョブズ体制から脱却したApple。Androidなど周囲のトレンドに流されず、むしろ周りを巻き込んでいく原点回帰の姿勢を見せてほしい。次なる一手で世界をアッと言わせるまでの間をもたせるとしたら、ひとまず「iPhone SE2」や「iPad mini Pro」あたりを出してはどうだろう。自分を含め、ファンは黙ってついてくるハズだ。
文: 太田 文浩(イオシス アキバ中央通ヨコ店)