2019.03.29 00:00 更新
2019.03.29 取材
先月開催された「MWC 2019」にてメインテーマの一つになった、次世代通信規格の「5G」。今年からいよいよ一部でサービス開始、大手メーカーが対応スマートフォンを続々披露するなど「新しい時代」が間近に迫っているようだ。一体どんな技術がいつやってくるのだろうか?
バルセロナで開催されたモバイルの祭典「MWC 2019」では、今年のメインテーマとして次世代通信規格の「5G」に注目が集まった。Samsungやファーウェイ、OPPO、ZTEなど、大手メーカーもこぞって「5G」対応の端末を披露している。でも「5G」とは、そもそもどんなものだろうか?
さすが次世代の規格と言われるだけはあり、現行の4Gに比べて100倍速いという驚速の通信規格。4K動画のリアルタイム配信や巨大なファイルの瞬速ダウンロードもお手のものだ。2019年は「5G元年」などと言われており、実際に今年からサービスが提供される。ところが本気なのは韓国とアメリカくらいで、実際にサービスを開始する国はとても少ない。
世界全体での5G普及率は、2025年でもわずか15%に留まるという調査結果も |
Samsungのお膝元である韓国では、早くも4月5日の「Galaxy S10 5G」の発売に合わせて、世界初の5G通信がスタートする。しかしエリアはごく一部の都市どころか、ほんの一握りの場所のみ。2020年までのインフラ整備を目指しているものの、その頃のユーザー数はわずか5%、90%に達するのは2026年だという。その見通しも実際のところは疑わしい。
そして限定的なのは、なにもエリアだけの話ではない。ことスマートフォンに限った話でも、対応端末が非常に少ないのだ。そもそも5Gのアンテナが大型で、小型のスマートフォンに収納するのが難しいらしい。
Samsungの「Galaxy Fold」やファーウェイの「HUAWEI Mate X」といった“フォルダブルフォン(曲がるスマートフォン)”は、大型アンテナを無理なく収納し、「5G」コンテンツを受信させるに相応しいディスプレイサイズという背景もあって登場した。しかし既報の通り、端末が20~30万円という驚きの価格。購入して使える人も限定的というワケだ。
「Galaxy Fold」も「HUAWEI Mate X」も超高価。「HUAWEI Mate X」に至っては約29万円らしいが、いったいどんな人が購入するのだろうか |
さらに現時点では、効果的にスマートフォンで「5G」を使えるコンテンツがない。ゲームにしろ動画にしろほとんどが4G通信で事足りるほか、Wi-Fi 6こと高速なIEEE 802.11ax環境であれば、理論上「5G」同等クラスの速度が出せる。外で通信できるのが「5G」のメリットだと言っても、仮に大画面で4K動画を垂れ流しにしようものなら、端末のバッテリーがもたないだろう。そもそもスマートフォンは、4G以上で通信することを想定していないデバイスと言えるかもしれない。
結局のところ、そんなにすぐにはやってこない「5G」だが、未来を担う規格であることに違いはない。IoTが当たり前になるには、接続端末が圧倒的に増えるという「5G」通信が必要だし、そういう環境でこそ「5G」対応スマートフォンを持つ意義がでてくる。2時間の映画を3秒でダウンロードできるような世界なら、今とはまったく違うコンテンツ消費の考え方になっているかもしれない。
さらに「5G」は超高速で遅延がほぼゼロなため、AIやロボティクス技術を組み合わせて、医療現場では遠く離れた場所からゴッドハンドの遠隔手術も可能。車の自動運転の監視・制御でも、遅延ゼロの「5G」技術が必要とされている。重要な社会インフラを支える通信技術として、いま「5G」には熱い視線が向けられているというわけだ。
日本でも数年前から「5G」の開発と実験が行われてきた。スマホのような端末単位ではなく、社会全体を変える可能性をもっている |
スマートフォンの登場で私たちの暮らしは大きく変わった。それと同じくらいの革命が「5G」到来でもう一度起こると言われている。こうなったら黙ってはいられない。ほんのわずかなエリアでも、世界を飛び回って「5G」の電波を一刻も早く感じたいものだ。
文: フリーライター 太田 文浩