2020.01.13 12:00 更新
2020.01.13 取材
そしてカンファレンスの最後に発表されたのが、クライアントPC向けのシングルCPUとしては世界初の64コア/128スレッドを実現した「Ryzen Threadripper 3990X」でした。第3世代のRyzen Threadripperシリーズは昨年11月に発表されており、すでに一部製品が発売済み(エルミタ的速攻撮って出しレビューを参照)。「Ryzen Threadripper 3990X」は2020年内の登場が予告されていたものの、今回のCESで初のお披露目となりました。
満を持して登場する「Ryzen Threadripper 3990X」。3,990ドルが国内販売時にはいくらに設定されるのかも気になるところ |
他の第3世代Threadripperと同じく、中央のI/Oダイ(cIOD)に複数のCCDを接続するチップレット方式を採用。64コアを実現するため、8基ものCCDを搭載します。ソケットはsTRX4、AMD TRX40チップセットに対応し、定格の動作クロックは2.9GHz、ブーストクロックは最大4.3GHz。8基ものCCDを接続した結果、トータル288MBの膨大なキャッシュを獲得しているのも見逃せません。メモリはクアッドチャネルのDDR4-3,200MHzをサポート。なお、PCIe 4.0のレーン数は88レーン(最大利用可能レーン数は72)で、TDPは280Wとなります。
CINEBENCH R20のマルチスレッドテストの結果を示した棒グラフ。「Core i9-9900KS」や「Ryzen 9 3950X」を含めた結果、スコア25,399の「Ryzen Threadripper 3990X」の棒グラフが会場のディスプレイ3枚を使うほど長くなるインパクトあるスライドに会場も盛り上がっていた |
さらに、デュアルCPU構成の「Xeon Platinum 8280」(計56コア/112スレッド)と「Vray」によるレンダリング速度を競ったところ、同じテスト内容で「Ryzen Threadripper 3990X」はレンダリング完了まで1時間3分、デュアルXeon Platinum 8280は完了まで1時間30分の時間を要したとのこと。作業時間を2/3まで短縮でき、価格は約1万6000ドル安いという結果は、かなり衝撃的でした。
市場想定価格は3,990ドル。前述のとおり、場合によっては競合製品よりも100万円以上安価で性能は上、というコストパフォーマンスの良さが最大の魅力。販売開始は2月7日を予定しています。
コストパフォーマンスの良さを強くアピールしたデュアルCPU構成のXeon Platinum 8280とのレンダリング速度ベンチマークグラフ | 3,990ドルが安く見えるほどの衝撃的な性能で市場にプレッシャーをかける「Ryzen Threadripper 3990X」 |
全体としてサプライズと言えるような発表はなかったものの、AMDの好調ぶりを強く印象付けるようなカンファレンスでした。特にノートPC向けCPUの強化により、ここまで競合に対し不利だった分野での競争力アップ、「AMD Smart Shift」によるノートPC向けディスクリートRadeonへの期待感の醸成など、この数年で築いてきた強みを生かしつつ、着実に勢力を広げるようなプロダクトの展開は非常に巧み。2020年もAMDの動向から目が離せない1年になりそうです。
余談ですが、アメリカ行きの航空機では機内からオーロラが見えることがあるらしく、朝方に撮影した写真にそれらしいものが映っていました。暗かったせいか、ちゃんと目視はできなかったのですが…… |
さて、5日に現地入りし8日の早朝には帰国の途につくという弾丸取材となった今回のCES 2020。普段から不規則な生活を送っていたため、時差ボケもそれほどないだろうと高をくくっていたのが大間違い。帰国して家に着くなり、原稿そっちのけで一気に12時間以上寝続けてしまいました。僕自身初めての経験で驚きましたが、もし次回も取材に行くことがあれば、そのあたりの対策はしっかりしていこうと思います。
文: 松野将太
日本AMD: https://www.amd.com/ja/