2023.06.01 01:08 更新
2023.06.01 取材
エルミタ編集部とはなにかと縁のあるStreacom(本社:オランダ)。オリオスペック(店舗:東京都千代田区)による取り扱いでも知られ、国内でも思いのほか容易に入手ができるメーカーのひとつだ。
Streacomブースで記念撮影。右から2番目がStreacom CEOのFatih Ozgoren氏 |
Streacomは主にPCケースを企画・開発。それも一般的なミドルタワーPCケースとは距離を置き、総アルミニウム製のベンチ台から、全身ヒートシンク型Cubeケース、外観デザインにもこだわったMini-ITXケースなど、一風変わった路線を貫いている。COMPUTEXも常連で、ブースを構えるものの、常に主要1~2機種程度のプロトタイプを展示。来場者からの意見に耳を傾け、それらを参考に製品化まで漕ぎつけるという手法をとっている。
編集部からの問いに対し「間もなく完成するよ!」の回答から、およそ半年後に評価サンプルが出荷されるという、どこかのんびりしたメーカーでもある。そして4年ぶりのリアル開催となった「2023」の台北に持ち込んだのが「SG10」だ。
製品コンセプトは完全ファンレス。主素材にアルミニウムを使い、放熱フィンさながらの格子と両サイドには内部を露出する強化ガラスを装着。トップ部はまさしくヒートシンクで、冷却ファンを一切使わずシステムを安定動作させている。ちなみにカテゴリとしては「ゲーミングPC」で、ハイエンド志向の構成パーツが平然と動作していた。
CPUおよびGPUは水冷式。特殊な冷媒が充填されており、蒸発する力を利用して循環させるポンプレス水冷システム「ループヒートパイプ方式」が採用されている |
実はこのモデルは、PCケース(いわゆる筐体)はStreacomオリジナルだが、冷却機構についてはCalyos(本社:ベルギー)が担当しているそうだ。つまり2社によるコラボモデルになる。
Calyosについては、2017年3月30日付プレスリリースにおいて取り上げている。今回の取材で分かったのは、冷却機構はほぼ完成に近かったものの、どうやらPCケースの製造のノウハウが足りなかったそうで、パートナーを探しているうち、Streacomに白羽の矢が立てられたというワケだ。Calyosからすれば、苦節7年による製品化(恐らくもう少し掛かりそう)となり、喜びもひとしおだろう。
Calyosの冷却技術が採用されたトップ部。巨大ヒートシンクは冷却ファンとポンプが一切使用されていない。ちなみに対応はCPUが250Wまで、GPUが350Wまで |
デモ機にはIntel Core i9-13900K、グラフィックスカードにNVIDIA GeForce RTX 4080が搭載。なおGeForce RTX 4090の冷却は厳しいとのこと。またグラフィックスカードの有効スペースは280mmだが、ハイエンド志向のRTX 40シリーズも冷却ファンカバーやヒートシンクを外したむき出しの状態では短い基板だけに、問題はないそうだ。
気になる発売時期は「順調なら年内」とのこと。これまでの実績を考慮するならば、デビューは来年の春頃だろうか。また現時点の想定売価は999ドルだそう。「1,000ドルを切った方が見栄えが良い」事が理由のひとつらしい。
文: 編集部 松枝 清顕/取材:池西 樹
Streacom: https://streacom.com/