2023.12.09 00:00 更新
2023.12.09 取材
決して広くはないお店に、同人ハードやレトロゲームなどがあふれるカオス空間。ここ家電のケンちゃんにて、“家電のHRDちゃん”こと店長の原田さんにディープなアレコレを語ってもらう「教えて!HRDさん」。今回は、令和の時代にも関わらず盛り上がりをみせている、レトロゲーム機のカスタムについてのユルめな雑談です。
毎週のようにやたらとレトロゲーム機の改造キットが入荷するのを見て、なんでこの令和の時代に?と疑問に思ってる人もいるかもしれません。ファミコンやスーファミから、ゲームボーイ、ゲームギア、その他マイナーハードに至るまで。いまや懐かしのレトロハードに関するカスタムパーツが、店頭にもたくさん並ぶようになってます。
そもそもレトロハードで遊ぶモチベーションとしては、往年の名作を実機で遊びたい、というロマンが一番分かりやすい。8bitや16bitな古めかしい世界に、逆にエモさを感じるという声もあるでしょう。ただし無数にあるゲームの中にあって、移植されるようなタイトルはメジャーなものばかりなので、それ以外は実機で遊ぶしかないという事情も。面倒なところでは、権利関係が分からなくなって移植自体ができない、なんて話も少なくありません。
そんなゲームを遊びたくなったら、いよいよ実機のレトロハードと付き合うしかなくなるわけです。
単純に構成部品の経年劣化で改造が必要になる場合もある |
それでいざ往年のハードを取り出してみても、まともに動かないなんてのはザラ。何しろ何十年も前の機械ですからね、電解コンデンサが液漏れしていたり、液晶が映らなくなっていたり。そこで出てくるのが、件の改造キットやらカスタムパーツたちというわけです。レトロハードは中のシステムが今のハードと違ってシンプルですから、改造も比較的簡単なんですよ。
もっとも昔はこうしたジャンルも玄人の腕試し的な要素が強くて、結構なパワープレイで改造したりケースを加工しないといけなかったりと、だいぶハードルが高かった。ところが海外を中心にアレコレとチャレンジする人たちが徐々に洗練させていった結果、割りと簡単な工作で組み立てられるパターンが増えてきました。それもここ数年の話ですね。
レトロゲーム機改造の同人ハードが広まる火付け役になったという「GGLCD」(こちらは後期型のrev3) |
TFT液晶だった初期型でも実機との差は歴然 |
ちなみにこの手のレトロゲーム機改造のキットやパーツが出回るキッカケになった火付け役といえば、ゲームギアの液晶を換装する「GGLCD」ですね。特に携帯ゲーム機は液晶の換装が一番恩恵を実感しやすい改造で、比べ物にならないくらい画質がアップします。いまは換装する液晶もIPSパネルが一般的になって、実機と比べると「昔ってこんなに暗かったっけ?」と驚かされますよ。
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それにモジュールに搭載されるマイコンの性能も上がってますから、色味を変えたりスキャンラインを出して当時の雰囲気を再現したりと、OSDメニューでアレコレとカスタマイズできるまでにレベルアップ。技術の進歩という意味では、昔はできなかった極薄のフレキシブル基板を使うキットまで出てきたりと、やれることの範囲が本当に広くなった印象です。
フレキシブル基板のような現行の技術によって、かつては不可能だった改造を可能にするキットも |
昔は個人が設計して細々とやっていたものが、売れて数が出せるようになれば基板屋に作らせることができるわけで。こうしたコストのかかる基板も扱えるようになるということですね。30年前の機械に今の技術を使って変身させる、なかなかロマンを感じる世界だと思いませんか。
ちなみにそもそもの話、こうしたレトロゲームを遊んでいた人たちがアラフォーからアラフィフになって、お金を持っているというのも大事な要素(笑)。高価な部品を使ってコストがかさんだり、ちょっとニッチなハード向けで生産数が少なかったりで高めの値段になっても、確実な需要があれば商売になりますからね。そうした安心も、この手のジャンルの裾野を広げている理由だと思います。
文: 編集部 絵踏 一
家電のケンちゃん: https://www.gdm.or.jp/shop/2017/0101/193926