エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.7
2009.05.19 更新
文:テクニカルライター Jo_kubota
さて実際にCPUはどのくらい電力を消費するのだろうか。この「実際に」というのが厄介だ。アイドル時は当然ながら、Enhanced Intel Speedstep Technology(EIST)のおかげで、CPUは劇的に省電力モードへと移行する。そしてアプリケーションを起動すると、CPUパワーを解放するわけだが、例えば非常に電力を消費する重い3Dゲームでは、どのくらいCPUパワーを使っているのだろうか。
ゲームにおけるCPU使用率を調べたのが下記のグラフだ。
この2つを選んだのは、どちらも比較的消費電力の高いゲームだからだ。ゲームにおける消費電力は、GPUとCPUの活用度がどれだけ高いかを表しているが、重いゲームだから消費電力が高いというわけではない。なぜなら、極端に重いゲームの場合、CPUまたはGPUのどちらか、もしくは両方が遊んでしまうため、消費電力は低くなるのである。この2つのタイトルはGPUとCPUの両方をうまく使っているため、低性能なグラフィックスカードでも、低クロックのCPUでも、それなりに高い消費電力を記録するタイトルなのだ。
さてグラフでは、Hyper-Threadingを有効にしているため8コアが認識されている。そして注目したいのは、すべてのコアを使うわけではなく、ゲームでは最大でも2ないし4CPUまでしか使っていないということだ。いずれもピンクの太い線が、合計のCPU使用率だが、どちらも平均して20~30%程度に収まっていることが分かる。
つまりゲームにおいて、CPUとGPUを常に100%使うことは、ほとんどないのである。ついでにCorsair電源ユニットのテストと同様に、オーバークロックツール「OCCT」を使って、GPUに負荷をかけてみたが、このときのCPU使用率はわずか13%だった。
と、ここまでサラっと流してしまったが、EES350AWTで、Core i7-965 EEは問題なく動くのだ。ただし、グラフィックスカードは、「HD 4670」で、という条件は付くが。
では、今度はCPUをいっぱいまで使った場合、EES350AWTは耐えられるのだろうか。というわけでCPUを使いきると言えば、動画エンコードソフトの「TMPGEnc 4.0 Express」が有名だが、DVDサイズのMPEG2をBlu-rayサイズにアップコンバートしても、そのCPU使用率は合計で33%程度、消費電力も140W程度だった。
さらに過酷なOCCTの電源テスト「OCCT P/S」を実行すると、CPU使用率は63%に達し、今回試行錯誤した中ではもっとも高いCPU使用率となり、消費電力も276Wを記録した。OCCT P/Sは、ゲームをするよりも遥かに高負荷だが、これにもEES350AWTは耐えることができた。
Core i7-965 EEを本当に使い切るのは難しく、CPUだけを使うことを考えれば、EES350AWTでも、実は間に合ってしまうのだ。OCCTのCPUテストなら、Hyper-Threading/DualCoreにチェックを入れることで、擬似的にCPU使用率を100%に引き上げることができるが、ゲームやTMPGEnc 4.0 Expressなど実際のアプリケーションで100%にできない以上、100%にする意味はほとんどない。
ちなみに、Hyper-Threading/DualCoreのチェックを外して負荷をかけるとCPU使用率は52%に留まり、ワットチェッカーの消費電力は200Wを記録。チェック入れてCPU使用率を100%にすると、消費電力は233Wとなった。本当にCPUだけを100%使うような場面でも、EES350AWTは問題なく使えることが確認できたが、以降、OCCT CPUのテストを行う場合は、より一般的な使い方に近いHyper-Threading/DualCoreのチェックを外して行うものとする。
ここまでの消費電力とCPU使用率をまとめたのが下記のグラフだ。
さて、もっと高性能なGPUを搭載したとき、一体この電源はどこまで耐えられるのだろうか。
EES350AWTのラベル。12Vが2系統ありコンバイン出力は324W(27A)と、350Wクラスの電源ユニットとしてはかなり強力だ |
EES350AWTの12Vラインは2系統あり、各17A、コンバイン出力で27Aまで出力できる。ATXメインコネクタとATX12Vは12V1、それ以外の12Vは12V2から供給されている。そのため、CPU側で10A以上を消費すると、PCI Express補助電源側には17A以下しか供給できないことになる。最大でも17A、つまり12V×17=204Wまでのグラフィックスカードを挿せる計算だ。
実際には、PCI Expressスロット側で最大75Wまでをサポートするため、CPUの消費電力を考えなければ、204W+75W=279Wまでのグラフィックスカードに対応可能という計算が成り立つ。ただしこの場合、CPUは、10A×12V-75W=45Wを超えたらアウトだ。非常にアバウトかつ大雑把に計算すると、CPU使用率100%で130Wとすれば、45WでCPU使用率は35%程度が限界となる。
しかし、最初のテストで見たようにラストレムナントもCrysis WarheadもCPU使用率は、20~30%前後だったことを考えると、ものすごくハイパワーなGPUでも、ぎりぎり耐えられるかもしれない。