エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.7
2009.05.19 更新
文:テクニカルライター Jo_kubota
そこで、前回同様にオリジナルの負荷装置をEES350AWTのPCI Express補助電源コネクタに挿し、どのくらい電流が流せるのかをテストしてみた。
テストはOCCTのCPUまたはP/Sテストを実行し、電源ユニットのPCI Express補助電源コネクタに、負荷抵抗を接続し、7A~16Aまでを接続し、PCが落ちずに動作するかをチェックした。
その結果が、下記のグラフ2だ。
圧巻なのが、OCCT P/Sテストに16Aの負荷をかけたとき。このときワットチェッカーが示した最大消費電力はなんと504W。冒頭で紹介したように、この電源ユニットには、オーバーロード保護回路があることを考えると、内部では110%負荷(350×1.1=385W)以下になっていると思われる。110%として、385Wで計算すると、このときの効率は77%ほどだ。80PLUSでは100%負荷で80%と決められているが、定格を超えた負荷時の効率までは言及されていない。それでも定格を超えた状態で77%をキープしているのは立派な数字である。
16A以上はどうだろうか?とPCI Express補助電源コネクタに17Aを掛けたら、すぐに電源が落ちてしまった。本当にかなりギリギリの数字だったようだ。またこれによりオーバーロード保護回路も正しく機能していることが確認できた。
この結果をグラフィックスカードに当てはめて考えると、16A×12V+59W(HD 4670の最大TDP)=251Wまでの製品なら、長時間使用は無理としても試すことくらいは可能のようである。250W以下だと、GeForce GTX 280が236W、GTX 275が219Wで、このあたりくらいまでは定格ギリギリで使えそうな計算だ。もっとも本当に挿して、動くどうかは別だが・・・。
抵抗器によるテストは、車で言えばシャーシダイナモの上で計るようなもの。つまり実テストでありながら、机上の空論を検証するための特殊なテスト方法だ。
やはり“本物”の負荷をかけて、実際に動作するのか、見てみたいのは人情である。
というわけで、手持ちのGIGABYTE製のGeForce GTX 285搭載カード「GV-N285-1GH-B」を使ってテストを行った。その結果が、グラフ3だ。
OCCT P/Sテストで474Wを記録したものの、この状態で30分以上放置しても落ちることなく、動作した。先のテストで500Wオーバーを見てるとはいえ、プログラムの動かない単なる熱源にしか過ぎない抵抗器と、GTX 285では状況は異なるため、正直「落ちるかもしれない」という不安が少しあったが、それは杞憂に終わり、見事にテストをパスしたEES350AWTは本当に凄いと思う。
GIGABYTE製GeForce GTX 285搭載カード「GV-N285-1GH-B」 |
EES350AWTの350Wという容量は、大容量電源ユニット時代を迎えた今、非常に小さく感じる人も多いのではないだろうか。筆者もことあるごとに迷ったら1ランク上の容量を選ぶべしと、いろんな媒体で述べてきたが、いざ実際にテストを行ってみると案外動いてしまうことに驚きを禁じえない。
しかし、他の電源ユニットでも同じとは限らない。電源ユニットの出力構成は、大抵コンバイン出力が設定されているが、この値が変わるだけでも今回のようなテストを行うと落ちる可能性は十分ある。メーカーと製品名は伏せるが、550Wの電源ユニットで予備テストを行った際、実はOCCT P/Sテストで落ちる現象が起きていた。そのため、EES350AWTも、想定していた最大負荷まで耐えられず落ちるだろうと予測していたのだが、想定を超える負荷をかけても動作したのは、まさに予想外だったのである。
ただ、このような負荷を長時間与えた場合、どこまで持つのかは未知数である。電源ユニットは、経年劣化するパーツなので新品の今は大丈夫でも、半年や1年、2年と時間が経つにつれ、その性能は落ちていく。こればかりは長期間使ってみないと分からない。