エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.22
2009.12.26 更新
文:GDM編集部 松枝 清顕
「Fortress」らしさを感じさせてくれる1枚 |
もし筆者がケースメーカーのプロダクトマネージャーであったならば、このケースを初めて見た時「やられた」と思うに違いない。そして残念ながら、別メーカーがこの先同様のレイアウトで新しいPCケースを作ったとしても、常に「RAVEN」や「Fortress」がつきまとう事になるだろう。
今回も数日間このケースと共に過ごし、またレビューは終始“褒めっぱなし”となってしまい、リアリティに欠ける気もするため、最後にひとつだけ“ダメ出し”をしたい。それはケーブルマネジメントだ。
「RAVEN 2」レビューでも指摘したが、ボトム部の占有面積はほぼ全て3基の180mmファンで占められている。実際には電源ユニット搭載部下に数センチの余裕は残されているものの有効面積とは言い難い。広大なエアフローを生み出す為には非常に優れているとはいえ、モジュラータイプではない電源ユニットを搭載させた場合の、ケーブルの逃げ場が無い。
ある程度はマザーボードトレイ背面に追いやることもできるが、特にマルチグラフィックス対応電源等はケーブル本数も多く、EMI対策が施された硬質で太いメッシュケーブルであれば、どうしてもケース内部に取り残されてしまう。
レビュー撮影中、カメラが故障するトラブルにも遭遇 |
この余分なケーブル類をボトムファン上に載せることは、想像以上に抵抗感を抱いてしまう。せっかくのエアフローを僅かでも犠牲にしたくないと思わせてしまうだけに、この点は悩みどころとなるだろう。
最もこの悩みは今回テストで使用した「SST-ST1000-P」のようなモジュラータイプを搭載させれば解消されてしまうだけの話で、つまりこれは“贅沢なダメ出し”なのだった。
ともあれ、2009年度最後の「エルミタ的速攻撮って出しレビュー」は、非常に良い製品で締めくくることができたと思う。年末進行の最中、あまり手を煩わすことが無かった「Fortress」は非常に出来の良い優等生でもあった。
仕事柄、これまでにたくさんのケースと接してきたが、恐らく個人的にはベスト3に入るPCケースと言って良いだろう。そこで今年一番のPCケースとして、「エルミタ的2009年PCケースEDITORS CHOICE」の称号を贈りたいと思う。
劇的な変化は難しいカテゴリに成熟してしまったPCケースの中で、まだその余地があったのかと思わせてくれた「RAVEN」シリーズと「Fortress」シリーズ。陳腐な言い方を敢えてするならば、長く使いたいケースを探している方には間違いの無いモデルとして自信を持ってお薦めしたい。
そして最後に、「このケース、貰えませんかね?」。