エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.29
2010.02.25 更新
文:テクニカルライター Jo_kubota
80PLUS BRONZE認定を受けながら元々評価の高かったPRO82+との比較において、明確とも言える差をつけて高効率ぶりを発揮したPRO87+の性能を疑う余地はないと言っていいだろう。また80PLUS GOLD認定ながら小型、使いやすい容量、手頃な価格というのも魅力だ。PRO87+ 500Wの実売価格は、1万5000円ほど。確かに容量あたりのコストパフォーマンスは高いとは言えないが、Peak表記の電源にならえば本製品は600W級であり、なおかつ80PLUS GOLDという最も高効率の電源がこの価格で手に入ることに意義がある。とはいえ、電力代に換算すれば電源購入代をペイできるほどの差はない。80PLUS認定を受けてない普通の電源ユニットと、PRO87+の差が時間あたり20Wとあったとして、24時間、365日運用、1kWh=22円で計算すると、
となり、年間で4000円弱の差となる。一般的な500~600Wの電源ユニットは実売で7000円しない程度と考えると、2年ほど使えば元を取れる計算だ。
が、実際にはもう少し別の要因も絡んでくる。PRO87+は、その効率の高さから発熱が低く、部屋の気温が上がりにくいという側面がある。例えば夏場にエアコンをつけるとして部屋の設定温度を1℃下げられるとしたら、それだけで月間で350円程度、4ヶ月使ったとして1,400円くらいの節約となる。もちろんPCがそこまで温度を押し上げるかどうかは、PCの台数や部屋の間取り、住んでいる地域に左右されるが、少なくともPCにおいて大きな熱源となるパーツの一つが、低発熱になることのメリットは微小とはいえ存在する。筆者宅では、2台のPCを365日24時間稼動しているが、夏場、本当に暑いときは1台のPCをシャットダウンするだけで、エアコンの設定温度を2℃ほどあげることできたりする。そんな実体験もあり、ここ数年、メインとなるPCは省電力、低発熱、低騒音という自作を心がけている。半年~1年毎にPCの中身は電源ユニットを含めて入れ替えているが、今年は80PLUS GOLDの電源ユニットを本気で検討しようと、本記事を書きながら思った次第だ。
高効率で低発熱ということもあり、PRO87+は言うまでもなく、非常に静か。80PLUS認定電源ユニットで、騒音が気になる製品自体、少ないが、本製品は同社の静音電源「ECO 80+」シリーズと比較しても、さらに静かであり、騒音が耳につくことは無い。
さて、今回分解するにあたって、メイン基板が簡単に外せる構造だったのは、意外だったが、実装されている部品を外すのに苦労した。破壊してしまえば簡単だが、なるべく外観を損ねずに取り外すには、部品の足を切るかハンダを外すほかない。しかし、中央の大きなトランスが全く外れず、そのため12Vラインのスイッチングレギュレータ部分も外せないという壁に当たってしまった。逆を言えばPRO87+は、かなり精巧に部品が実装されていると言えるだろう。分厚いGNDラインや、板状のジャンパーライン、そして考えぬかれた回路パターンをこのサイズに納めつつ、いずれの部品も無理なく実装されているPRO87+は、それだけでもコストが掛かっていることが分かる。
何やら次回も別の電源ユニットを今回のようにバラす記事にしたいと編集部より打診があった。より簡単に部品が外せるよう工具を準備しようかどうか悩みつつ、また次回に続く。