エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.39
2010.05.05 更新
文:GDM編集部 松枝 清顕
PC自作パーツのほとんどはアジア圏から日本市場にやってくる事はご存じの通り。多くのHQ(ヘッドクォーター)は台湾にあり、大陸(中国)がASSYを請け負い、PCケースをはじめ、LOTの嵩む商品は広州や香港の港からFOB(Free On Board)で国内に入荷してくるという流れが一般的となっている。(CPUはアメリカ発だが)
またCPUやグラフィックスカード、メモリやHDD/SSD等の小口荷物、または入荷スピードが重要な製品は、飛行機(=エア)が利用されているというワケだ。
工場出荷から船便の場合1ヶ月程度(通関含め)、エアの場合3~5日程度で製品は到着すると言われている。エンドユーザーからすれば入荷は早ければ良いと考えるのが自然の事とは言え、当然エアは航空運賃がネックとなる。送料を加算して製品の卸値および売価に反映させるにもやはり限度があり、少しでも利益を乗せたいと考える商社(代理店)側からすれば、日数がかかっても船便を選ぶだろう。しかしここにも問題が潜んでいる。
例えばPCケースの場合、20フィートのコンテナにはミドルタワーケースで400台以上(大型外装箱の場合は300台前半)積み込むことができる。送料を安く抑えるためには、できる限り隙間なく詰め込む方が有利だが、どんどん売れる人気モデルならまだしも、初めて導入する高額なモデルともなればファーストロットの導入数は慎重に行きたい。万一大量の売れ残りが出れば、その分の倉庫代が日々嵩み、せっかく設定した利益幅も値引きや在庫一掃セールで手段を選ばず泣く泣く捌き、利益どころかマイナスになる事も。いずれの業界も同じだが、PCパーツ関連のブランチや代理店は、営業、拡販、サポートだけでなくギャンブルも重要な業務のひとつである事をこの際知っておきたい。
DIMASTECHの「Bench Test/Table」は、アリタリア航空のフライトにより到着した |
アジア圏発の多いPCパーツだが、実は最近ヨーロッパ勢の製品がおもしろい。ネットを巡回していると、まだ国内に流通していないメーカーを見つけることも多く、「なぜ日本で手に入らないのだろう?」と不思議に感じることもあるだろう。これは前述通り、流通の問題が解消されない事がその理由のひとつとなっている。
残念ながら“数打ちゃ当たる”的なギャンブルができるほど、今も昔もPCパーツ業界に余裕は無い。せめてHQが欧州でも、ブランチが台湾・中国・韓国にあればどうにかなるものの、“おもしろい”と思ったパーツに限って、商圏が完全に欧州のみだから不思議だ。さていよいよ本題に入ろう。
今回採り上げるDIMASTECH SYSTEMS SNCも本拠地はイタリアで、ディストリビューターもベルギー、ドイツ、イギリス、ポルトガルと、完全にアジアは圏外。もちろん現時点国内市場では知られていないメーカーだが、とあるきっかけから互いにやりとりを進めるうちに、“こいつは凄いぞ”とばかりに突如エアで送られてきたのが本稿の主役「Bench Test/Table」となる。
その名の通り、よくあるベンチマーク用テスト台(通称まな板)だが、これが意外にもクォリティが高く、日本市場で流通する“簡易台”の範疇からは逸脱している。イタリアのイメージはパスタとフィアットとACミラン程度の筆者にとって、認識を改める必要に迫られる事になった「Bench Test/Table」。では早速ご紹介して行こう。
DIMASTECH SYSTEMS SNC 「Bench/Test Table Easy V2.5 Metallic Grey」 http://www.dimastech.it/EN/c/bench-test-table-easy-v25-metallic-grey/ 売価:119.99ユーロ(14,800円前後 2010年5月4日現在) |
とにかくデカい。ベンチマーク用テスト台と言えば、せいぜいE-ATXサイズほどのベース部に電源・ドライブエリア分の高さがある程度という認識でいたが、心の準備も無く到着した箱の大きさにまず驚かされた。このサイズだと、ZALMANかSilverStoneのいわゆるHTPCケースと変わらない。この時点でただの“まな板”では無い事は想像がつく。恐る恐る箱を開けてみる事にしよう。
実測値550×540×310mmの外装箱。メーカーから提供された画像なので中はブラックモデルとなっているが、実際には「Grey」(シルバーではないらしい) |
そして中はこのようになっている。なぜか発砲スチロールが対角線にカットされており、各構成部品はサイズぴったりのスリットに収められている。よくできているように見えるが、カットがイタリアクォリティ。切りカスがそのままで、部屋中スチロールだらけに。さらにシャーシ幅ぎりぎりにはめ込まれたスチロールは寄せ木細工さながら、取り出すまでに1度休憩を入れたほどだ |
次からは順を追ってシャーシの組み立てを行ってみたい。と言ってもそこはベンチ台。その体をなすまでにはそれほどの工程を必要としないが、オプション品のひとつひとつを画像中心にご紹介しようと思う。