エルミタ的「一点突破」CPUクーラー編 Vol.27
2012.08.13 更新
文:GDM編集部 松枝 清顕
次にシングル/デュアル/トリプルファン、各Low/Highモード時個別の騒音値をテストしてみよう。 計測にはデジタル騒音計を使用。室内騒音値は29.1dBAだった。
高負荷時を見ると冷却ファンの搭載個数に関わらず、Highモードはすべて50dBAを超えている。実際耳に聞こえてくる風切り音もスイッチを切り替えると突如大きくなり、さすがに38mm厚の高静圧は迫力がある。これは明らかにオーバークロックユースを見越した仕様であり、一般的な使い方であれば、Lowモード固定と割り切りたい。なおLowモードは高負荷時でも静かで、デュアル/トリプルの複数稼働状態の数値は誤差の範囲内。このレベルなら常用気になることは無いだろう。
次は冷却ファンの回転数をチェックする。ここでもシングル/デュアル/トリプルファンそれぞれで計測を行い、加えてLow/Highの数値もみておこう。なおモニタするのは標準搭載140mm(38mm)ファンのみとした。
Highモードにフォーカスすると、冷却ファンの個数が増えれば、回転数が落ちる傾向が傾向が現れている。これは140mm(38mm)ファンがPWM仕様である事から、冷却能力が上がり、CPUコアの温度が下がると回転数が落ちてくるというワケだ。このようにPWMの性格を考え、冷却ファンを複数搭載させる事で静音化が図れる場合があるという事を覚えておきたい。
テストセッション最後は、高負荷状況下でのヒートシンクポイント別温度計測を行う。計測にはいつも通り、非接触型温度計を使用した。
結果を見ると、ヒートシンクはポイントによって7℃以上も温度に違いが出る事がわかる。CPUに近い部分で温度が高くなるのは予想通り。一方、CPUから遠い上部で温度が高くなっていることから、熱移動を行うヒートパイプが効果的に仕事をしており、さらに放熱フィンへきちんと拡散できている事も分かる。CPUクーラーは見た目より、工作精度の高さと、ヒートシンク全体に熱が行き渡っているかが重要。見た目が悪く、ややフィニッシュが雑に見えるCPUクーラーでも、そこそこ冷える事があるのは、そんな理由があるからだ。
SilverStoneブランドからリリースされた、久々のハイエンド志向CPUクーラーは、及第点以上の出来映えだった。ツインタワー型ヒートシンクは決して珍しいものではなく、独自の特徴を出す事は難しい。冷却機器である以上、冷えることが大前提。加えて自作派の食指が動くギミックを加える必要がある。SilverStoneのブランド力をもってしても、CPUクーラーカテゴリでの生き残りは難しいことだ。
十分な熟成期間経て投入された「SST-HE01」は、大型サイドフロー型CPUクーラーではネックになる、メモリスロットとの干渉をヒートシンク幅を変える事で上手に回避し、ハイエンド志向のユーザーが好んでチョイスする大型ヒートスプレッダ付きメモリを難なく使えるように設計した。小さな事かもしれないが、実によく考えられており、自作をよく知る老舗ブランドらしい計らいといえるだろう。SilverStoneらしさが光る意欲作だった。
SilverStone 「SST-HE01」総合評価 | |