エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.164
2012.08.14 更新
文:GDM編集部 絵踏 一
果たして「OC PANEL」のGPU Vcore昇圧でカードの挙動はどう変わるのか、ここではGPU温度とファン回転数の違いからその様子を垣間見てみよう。計測対象は1.2125V設定時と1.0750V設定時、出荷時の3パターンだ。ベンチマークは先ほど同様「3DMark 11 Version1.0.3」の「Performance」設定を使用し、「GPU-Z 0.6.3」による計測を行った。
なお、「GTX680-SOC WHITE」は動作の仕様上、1.2125V設定時と1.1750V設定時、出荷時の計測結果となる。
まずは順番に「GTX560TI WHITE3」の計測結果から。GPU温度は出荷時に比べ最大出力時で14℃上昇し、ファン回転数も1,000rpm近く変化している。「OC PANEL」による電圧調整がカード側の温度変化にかなりの影響を与えていることがよく分かる結果となった。
回転数は約90%ほどと稼働率も高く、オーバークロック動作と組み合わせれば温度上昇はさらにヘビーになる。限界に近づけば近づくほど繊細な操作が必要になりそうだ。
一方「GTX680-SOC WHITE」はすべてにおいて横一線。恐らくカード側の温度や負荷、消費電力をモニタリングしてパフォーマンスを最適化している「GPU Boost」機能の影響と思われる。逆に温度の問題さえクリアすれば伸びしろが期待できるということでもあり、さらにパワフルな冷却機構を用意して上を狙ってみるのも面白そうだ。
電圧をダイレクトに調節している以上、消費電力にもそれなりの変化があるはず。ということで、先ほど同様に3パターンの計測環境による電力変化を追ってみることにする。こちらもベンチマークには「3DMark 11 Version1.0.3」の「Performance」設定を使用し、ワットチェッカー計測時の最も高い数値を比較した。
「GTX560TI WHITE3」は、最大出力時で通常時の113W増というかなり大きな差がついた。信頼性に優れる電源確保はもちろんのこと、容量も余裕をもったモデルを用意する必要がありそうだ。
その一方で、GTX680-SOC WHITE」は先ほどと変わらず横並びの結果に。やはり「GPU Boost」機能の影響が出ているということなのだろう。今回は恐らくGPU温度がボトルネックになったと思われるものの、改めてGeForce GTX 680の“無理をしない”利口さがよく分かった気がする。
正直を言えば、かなり気になるアイテムである反面、厄介な案件が舞い込んできたな、というのが製品を受領した際の感想だった。何しろ製品に詳細なマニュアルがあるわけでなし、オーバークロックという行為の性質上正解のアプローチというものも曖昧で、完全なるエンスーなテリトリーのアイテムだ。果たして限られた環境でどこまで使えるものか、と身構えつつのテスト開始。ところがなかなかどうして、自在に挙動を変えるグラフィックスカードの変化を追うのは意外に楽しく、終わってみれば空冷でも結構遊べて面白いという印象に変わっていた。何よりカードの限界を自分自身の操作で動的に乗り越えるというスタイルが独特で、これまでのオーバークロックから一歩踏み込んだ“新しい遊び方”を提案してくれるアイテムのように思える。
しかしこの「OC PANEL」が真に能力を解放するのは、やはり規格外の温度域で戦う極冷環境においてだろう。出力操作による温度変化はかなり顕著なため、冷えすぎてPCが停止してしまう“コールドバグ”をユーザーの手で回避することができるのだ。瞬時に出力を上げて温度上昇を呼び込める多数のオフセット設定もそのために用意されたと言っても過言ではなく、使いこなせれば遠慮なしの冷却でガツガツしたオーバークロックも楽しめるだろう。
決して万人向けのアイテムでないことは先刻承知。ここは極限OCやギリギリのさらに上を目指すエンスージアストにこそ、その楽しさを試してもらいたい。「OC PANEL」を乗りこなしてのベンチマーク完走には、普段のオーバークロックとは趣きの違う格別の達成感があるハズだ。