エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.175
2012.09.21 更新
文:テクニカルライター 藤田 忠
なかなか、魅力ある性能を見せてくれた「GV-N670WF2-2GD」だが、本グラフィックスカードのキモは、その高い冷却性能で高ブーストクロックを可能にする「WINDFORCE 2X」クーラーだ。ここでは、そんな魅力あるクーラーの挙動をチェックしてみよう。
各種ベンチマークとゲーム実行時のGPU温度とファン回転数をハードウェアモニタツールの「HWiNFO64」で記録。アイドル時と最も高温、高速回転時の数値を抽出した。なお、テスト機材はPCケースに組み込んでいないので、実際の場合は若干GPU温度とファン回転数はアップすると思われる。また、室温は約27℃の状態で実行している。
3Dベンチマークとゲームを実行しても、最大GPU温度は67℃と、優秀な結果を記録している。ちなみに、アイドル時は省電力機能が働きクロック、電圧とも低下するため、いずれも30℃前半と低くなっている。
ファン回転数は最大でも52%となる1650rpmまでしか上がらず、PCケースに組み込まない状態でも、非常に静かだった。アイドル時こそ静かだが、高負荷になると意外と爆音なVGAクーラーも多いのだが、「WINDFORCE 2X」は、そんな心配はまったく無用なクーラーと言える。PCケース内のエアフローにもよるが、ファンの回転数には余力が十分残っているので、長時間や深夜のゲーミングも安心して行えることだろう。
最後に「GV-N670WF2-2GD」の消費電力をチェックしたい。測定は富士通コンポーネント製「スマートコンセント(FX-5204PS)」を使用して、ログを記録。GPU温度などと同様に、3D負荷のないアイドル時とテスト中に最も高くなった数値を抽出している。
なお、テスト環境のCPUは、TDPが130Wと高いLGA2011の「Core i7-3930K」のため、計測値はIvy Bridge CPUで構成した場合よりも、アイドル、高負荷いずれも高くなっているので注意してもらいたい。
「Kepler」世代は、1世代前の500(GF110/GF114)シリーズに比べると大幅にTDPが低下しているだけあって、ハイエンドのGTX 670でもシステム消費電力は270W前後と低くなっている。GTX 670のTDPは170Wで、高いコストパフォーマンスで人気となった「GeForce 560 Ti」と同じだったりする。
ひと通りパフォーマンスをチェックしてきたが、まだまだ「GV-N670WF2-2GD」は魅力を秘めている。本項では、なかなか使い勝手の良いGIGABYTEのチューニングツール「OC GURU II」と余力十分な「WINDFORCE 2X」の冷却性能を見極めるため、オーバークロックにもチャレンジしてみた。
なお、オーバークロックはメーカーの保証対象外なのはもちろん、すべての製品で今回達成したクロックが動作する保証はないのを、覚えておいてもらいたい。
というわけで、さっそく「OC GURU II」を使ってベースクロック(ブーストクロックは同期)とメモリクロックを変更。目標をGTX 680のベースクロックとなる1,006MHzに決めて、クロックアップとベンチによる動作確認を行なっていったが、すんなり目標クロックに到達。ベースクロック1,006MHz設定時のブーストクロックは、なんと1136.6MHzまでアップしてしまった。調子にのってメモリも6,008MHzから7,000MHzまで上げると「3DMark 11 Version1.0.3」のプリセット「Extreme」のスコアーは11%近く向上する「3203」を記録した。
オーバークロック時はGPUの発熱が増大するが、「WINDFORCE 2X」の高い冷却性能と静音性のおかげで、GPU温度は最大でも66℃にとどまった。もちろん、ファンの回転数は80%の2220rpmまで自動でアップしたが、この状態でも十分静かと言えるレベルで、PCケースに収めた状態なら回転数のアップに気がつかないかもしれない。
30,000円台半ばで購入できるリファレンス仕様のGeForce GTX 670搭載グラフィックスカードと比べると、4,000円前後高くなる「GV-N670WF2-2GD」だが、高い冷却性能と静音性を備える「WINDFORCE 2X」クーラーのみでも、その価格差を埋めて十分お釣りがくる価値があるだろう。
値下げ基調になっているミドルレンジのGeForce GTX 660Tiも気になる存在だが、11月には「Battlefield 3」と同じ3Dエンジンを採用する「Medal of Honor Warfighter」。そして来年には激重必至!?の「Crysis 3」といった注目タイトルが控えていることを考えると、少しでも上のGPUを狙っていきたいところだ。もちろん、最上位のGTX 680もアリだが、グラフィックスカード1枚に40,000円オーバーは、なかなか出せないもの。38,000円前後になる「GV-N670WF2-2GD」は、コストパフォーマンスが高いとは言えない価格帯だが、抜群に高い冷却と静音性を備える「WINDFORCE 2X」クーラーと高品質な「Ultra Durable VGA」を考えると、多くのゲーミングユーザーが満足できるグラフィックスカードと言えるだろう。