エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.195
2012.12.07 更新
文:GDM編集部 松枝 清顕 / 池西 樹
電源ユニットは標準のAntec EarthWatts EA-650-GREEN(650W/80PLUS BRONZE)が搭載されていた。+12V 2系統(38A)で、120mm口径の2ボールベアリングファンを搭載。奥行き155mmのショートタイプだけに、採用ケース「Prodigy」にはちょうどいい選択といえるだろう。なおカスタマイズでは、同じく容量650WでAntec EarthWattsシリーズの「EA-650-PLUTINUM」(80PLUS PLATINUM)等も選択できる。
「Prodigy」へのマウントは、ATXサイズのフレームに電源ユニットをネジ固定。さらにそれをハンドスクリューでボディにマウントする |
ここまで「G-Master Cutlass-ITX」の内部・外部を余すところなくチェックしてきたが、次にサイコムの“組み込みの妙”を紹介しておきたい。前半、左サイドパネルを開いた画像で非常にスッキリとした内部をご覧いただいたが、ここでは右サイドパネルを開き、ケーブルマネジメントについてチェックしてみよう。
近頃のPCケースのアピールポイントとして、ケーブルマネジメント機構は必須。内部容積に限りがあるMini-ITXケースにとっては苦手項目かもしれないが、BitFenix「Prodigy」には右サイドパネル側にケーブルがまとめられるように、ケーブル配線用スルーホールがレイアウトされている。ちなみに筆者は一度構成パーツの大部分を外し、再度組み直す作業を行ってみたが、BitFenix「Prodigy」は決して組み込みのし易いPCケースではなかった。しかしサイコムではこのケーブルマネジメント機構を上手に使い、“楽屋裏”に不要なケーブルが見事に収められていた。
むやみにタイラップで結束するのではなく、最小限で見事に“楽屋裏”にケーブルを隠すあたり、月産1,000台を1台1台手作りで組み上げるサイコムの技が見て取れる |
最後に採用されているBitFenix「Prodigy」の内部スペースを計測しておこう。「G-Master Cutlass-ITX」はBTOだが、「将来的に拡張したい」「手持ち資産を増設しておこう」といった場合、役に立つはずだ。
まずCPUクーラーの有効スペースは実測約150mm程度だった。標準でCORSAIR「CWCH60」がマウントされているため、換装ニーズは少数かもしれないが、Mini-ITXケースとしては十分に確保されている。次に重要視される拡張カードスペースは約320mm。HDDケージを外す事が前提だが、ストレージ搭載数との折り合いがつけば、HDDケージの存在は気にする必要はない。また電源ユニット搭載スペースは、奥行き約170mm。さすがにこれだけは及第点レベル。言うまでもなく電源ユニット本体サイズの他、ボディから伸びるケーブルを考慮する必要がある。
主要箇所の有効スペースを計測。Mini-ITXケースであることを考えれば、十分な広さが確保されている |
冒頭でも触れたように、自作派を自認する人にとっては、BTOは無縁の存在に感じるだろう。使い手みずからパーツを選定し、ネットに溢れる情報を集め、少しでも安いSHOPを探し、時に懐具合とも相談しつつ、思い通りのPC(いや、時に期待外れもしばしば)を作り上げる。時に見舞われるトラブルも、スキルアップには必須といえよう。
一方で、自作を楽しむ人たちも多様化しており、いつしか“作る楽しさ”よりも“使う楽しさ”に比重が移り、メーカー製PCやプライベートブランドPCを選択する人が増えている。トラブルフリーの完成型PCは、箱から出すだけですぐにPCゲームやネットを楽しむ事ができる。ここは最大の強みだ。
数日間に渡りサイコム「G-Master Cutlass-ITX」をじっくりと検証して、まず思うのは、大量生産されるメーカー製PCにはない“自作感”だ。およそPCには似つかわしくないが“風合い”とでも表現すれば分かりやすいだろうか。サイコムがラインナップするPCは、自作派が選定するであろう構成パーツをカスタマイズ項目にズラリと並べ、およそメーカー製PCでは考えられない“自作風”完成型PCが多数ラインナップされている。自作の醍醐味である詳細なパーツ選定ができる点は、数多あるBTOメーカーの中でも屈指のカスタマイザーと言えるだろう。さらに以前取材したサイコムの作業風景を振り返ると、自作好きのSTAFFが、詳細に指定された構成表を前に、ひとつひとつ丁寧に組み上げてくれる。
単なる“自作代行”ではなく、市場の流行やニーズを敏感に察知し、自作でしかありえないスタイルのPCを提供するサイコム。自作パーツショップにとって、なかなか手強い存在になるかもしれない。