エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.198
2012.12.15 更新
文:GDM編集部 池西 樹
「OC Genie II」では、CPUやメモリなどシステム構成を自動的に判断して最適なチューニングを施してくれるため、比較的安全にパフォーマンスを向上させられる。ON/OFFの切り替えも「Click BIOS II」や「Control Center」から簡単に行うことができるため、もう少し処理速度を上げたい時などにオススメのオーバークロック手法だ。
「OC Genie II」は「Control Center」から1クリックでON/OFFが可能 |
「OC Genie II」を有効にすると、CPU倍率“42倍”の4.20GHz動作へとオーバークロックされた |
「OC Genie II」によるオーバークロックでは、OSやベンチマークは特に問題はないが、「OCCT 4.3.1 POWER SUPPLY」テストでは各コアとも90℃まで温度が上昇した。元々Ivy bridgeは負荷時のコア温度が高く、リファレンスクーラー使用時は定格でも80℃前半まで温度が上がるため、オーバークロック動作はかなり厳しい印象だ。特にコンパクトケースで運用する場合は、利用方法によってはオーバーヒートする可能性もあるので、十分注意して行なって欲しい。
続いてコンパクトPCを作る上でよりメリットが大きい低電圧動作についても試してみることにしよう。Core i7-3770シリーズには、TDP65Wの「S」やTDP45W「T」モデルも用意されているが、いずれも動作クロックはやや低め。パフォーマンス面を考えればCore i7-3770Kを低電圧動作させたほうが、有利であることは言うまでもない。
電圧調整には「Control Center」を使用した。電圧を下げすぎて動作が不安定になった場合でも、再起動で設定が初期化されるので調整作業を楽に行うことができる |
「Control Center」を使いCore電圧を調整したところ設定値「0.9950V」、測定値「0.9680V」までは安定動作が可能だった。ちなみにこの設定で「OCCT 4.3.1 POWER SUPPLY」テストを実行するとコア温度はいずれも70℃前半に収まり、定格から約10℃の温度低下を確認できた。
オーバークロックと低電圧動作が確認できたところで、「CINEBENCH R11.5」を使ってパフォーマンスをチェックしていくことにしよう。
CINEBENCH R11.5 |
まず定格と低電圧動作の比較だが、動作クロックが変わらずTurboBoost機能も働いているため、当然ながら性能にまったく違いはない。また「OC Genie II」によるオーバークロックでは4.20GHzまでクロックが上昇しており、シングルコアで約9%、マルチコアで約14%と順調にパフォーマンスを伸ばしている。
最後に消費電力についても確認しておこう。アイドル時は10分間放置した中で最も低い値、高負荷時は「OCCT 4.3.1 POWER SUPPLY」テスト実行中で最も高い値を計測している。
消費電力 |
「OC Genie II」によるオーバークロックでは、アイドル時、高負荷時とも定格から約30Wとかなり消費電力が増えており、コンパクトケースで運用する際には冷却をしっかりと行う必要がある。
一方、低電圧動作ではアイドル時こそほとんど変化がないが、高負荷時は定格から約25W減りACアダプタ駆動も十分可能なレベルに収まっている。CPUの個体差もあるため一概には言えないが、パフォーマンスと消費電力のバランスを考えるとCore i7-3770Kの低電圧動作はとても魅力的だ。
今回は「Z77IA-E53」を中心にハイパフォーマンスから省電力向けまで4枚のMSI製Mini-ITXマザーボードを検証してきたわけだが、お気に入りの製品は見つかっただろうか。最近ではマザーボード自体の多機能化が進み、拡張スロットを利用する機会はグラフィックスカードやチューナカードぐらい。ATXやMicroATXマザーボードを購入しても、拡張スロットは遊ばせているという読者も多いのではないだろうか。それならば今回の検証を元にお気に入りのマザーボードをチョイスして、Mini-ITXデビューしてみることをオススメする。
コンパクトPCでもハイエンドPCでも自由に構築できるフレキシビリティに加え、実装パーツが少ない分、無駄な消費電力を抑えることが可能。またMicroATXやATXケースと組み合わせてやれば、これまでにない広大な作業スペース確保でき、筆者のように細かい作業が苦手なユーザーでも極上の組みやすさを味わうことができるだろう。