エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.206
2013.01.30 更新
文:GDM編集部 松枝 清顕
次に120mmラジエターモデル「ELC120」シリーズの各種計測を行ってみよう。今回はT.B.APOLLISHタイプのブルーLEDファンを採用する「ELC120-TA」を用意した。「ELC-120-TB」搭載のT.B.Silenceタイプ冷却ファンとは回転数こそ同一ながら、ブレード形状の違いにより、騒音値や風量に若干の違いがある。ただしその数値は誤差の範囲内レベル。両者を比較し、明確な違いを出すことが難しいため、ここでは「ELC120-TA」のみで検証を行うことにした。
なお「TLC240」の検証結果から、Intel Core i7-3770Kでの定格運用ではCPU固有の”冷却の限界”が見えたため、敢えて4.4GHz(1.22V)でのオーバークロック状態のみでテストを実施している。
室内温度14℃/湿度45% |
結果を見ると、さすがに「TLC240」の性能には及ばないものの、60℃台に乗ったのは1回だけ。また回転数設定別にみると、上限1,500rpmと上限2,200rpmの700rpmアドバンテージを明確に表す数値にはならなかった。「ELC240」同様、低速回転でも十分に冷却できることから、むやみに高回転設定にする必要はないとみていいだろう。
騒音値は上限1,800rpm設定から40dBAを超え、「ELC240」同様、ハッキリとした風切り音が聞こえてくる。上限2,200rpm設定では、かなり勇ましい。そもそも「ELC240」同様、「ELC120」シリーズも2基の冷却ファンを使うことから、両モデルとは大差がないはず。長時間の常用を考えるならば、迷わず上限1,500rpm設定にすべきだろう。
最後に冷却ファン回転数をチェックしてみる。「ELC240」同様、高負荷時はそれぞれ最大1,355/1,527/1,776rpmという結果だった。こちらも公称値よりもやや低くモニターされているが、目くじらを立てるほどではない。
T.B.APOLLISHタイプの120mm冷却ファンが美しい「ELC120-TA」 |
ENERMAXが独自の特許技術「QSC technology」を携え投入した、同社初のオールインワン水冷キット「ELC」シリーズ。外観こそ市場に出回る既存モデルとなんら変わりはないものの、ポンプ一体型水冷ヘッドに隠された銅製コールドプレートの威力は期待以上だった。とにもかくにも、今回行った冷却能力テストは、これまでにない数値を叩き出している。にわかに信じがたく、複数回テストを行ったが、結果が変わることはなかった。
これまでCPUクーラーの検証は数多く実施しているが、テスト機材の変更はここ数ヶ月行っていない。また温度センサーの異常も疑い、リテールクーラーに換装してベンチマークを走らせると、3分足らずで落ちてしまった(Core i7-3770Kの4.4GHz(1.22V)時)。つまり手元の検証機材構成では、この検証結果を信じるしかない。言うまでもなく、各々の環境により同様の数値を保証するものではなく、あくまで編集部の構成という事を付け加え、参考にして頂ければと思う。
冷却機器だけに、その能力が高ければ文句のつけようがないワケだが、唯一注文をつけるならば冷却ファンの回転数を3段階に切り替えられるスイッチの位置だ。ENERMAXの汎用ファンは、美しいLED発光や、独自ブレードデザイン、さらに独自のTwister Bearingに定評がある。それらを「ELC」シリーズに生かしたワケだが、いかんせん切り替えスイッチがラジエターに面して固定される事から、手軽に設定を変更することができない。言うならば”切り替えスイッチ”ではなく、組み込み時に事前に決めておく必要がある”設定スイッチ”といったところ。回転数を変えてモニターしたい人には少々不親切と言わざるを得ず、ケーブルスイッチなどに改善してほしい。
そんな要望は小さな事と思えてしまうほど、高い冷却能力でインパクトを残した「ELC」シリーズ。評価機はまもなく返却と相成るが、どうにも気になるため、本気で購入を検討している。夏場にどんな挙動をみせるのだろうか。長い目で見守りたい気になるモデルだった。