エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.237
2013.05.26 更新
文:GDM編集部 松枝 清顕/池西 樹
ここからは冷却機器としての実力を見極めるべく、冷却性能テストを実行していく。測定は、ケースファンなどケース内エアフローの影響を受けないよう、ケースには組み込まないバラック状態で実施。ストレスツールはおなじみの「OCCT 4.4.0」で、「CPU:OCCT」テスト30分間を実行して温度を測定している。
また「FX100」には、前述の通り92mmファンスペースが設けられていることから、ZALMAN「ZM-SF2」を用意し、冷却ファンを搭載した状態でも測定を行なっている。なおテスト機材構成は以下の通り。
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サメのヒレを模した“シャークフィン”ブレードが特徴的な92mmファン「ZM-SF2」。回転数はBIOS読みで1,930rpm前後、付属の抵抗ケーブル使用時は1,450rpm前後 |
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「OCCT 4.4.0」によるCPU温度計測(室内温度22.5℃) |
Intel Core i7-3770K定格動作の計測では、アイドル時42℃、高負荷時86℃とやや高めながらファンレス駆動でも負荷テストをクリア。ちなみにこの後、さらに30分間テストを継続してみたが、数値に大きな変化はなく一般的な運用であれば十分実用できるレベルにあることがわかる。
また冷却ファンの効果を確認すると、アイドル時は約10℃、高負荷時は20℃以上と大きく冷却性能が向上。ファン回転数の影響は小さいことから、これから暑くなる季節に向けて、保険のため低回転の静音ファンを搭載しておくのもいいだろう。
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「OCCT 4.4.0」によるCPU温度計測(室内温度22.5℃) |
定格動作に続いて、EasyTune 6のプリセットで4.18GHz(コア電圧1.284V)にオーバークロックした状態でもテストを実施した。アイドル時こそ42℃と定格から大きな変化はないが、負荷テストを開始するとグングン温度が上昇。開始わずか3分20秒で温度が95℃を超えてテストが停止した。プリセット設定ではクロックだけでなくコア電圧も大幅に昇圧されており、ファンレス駆動には少々荷が重いということだろう。
また冷却ファン駆動では、1,450rpmで最高88.0℃、1,930rpmで最高87.0℃まで温度が上昇するが、いずれも負荷テストをクリア。最近のCPUクーラーとしては、口径の小さい92mmファンでもその効果は大きいことがわかる。
どんなに静音対策を施してもいつしか耳が慣れ、知らぬ間に”静音許容レベル”がどんどん高くなっていく。なんとも厄介な「法則」だが、これに頷いた人の中には、「0dBAの世界」を目指した経験者も少なくないだろう。
ファンレス設計の「FX100」は、大型ヒートシンクと10本のφ6mm径ヒートパイプを巧みに組上げ、「0dBA」を目指した。Core i7-3770Kの定格動作では、アイドル時こそ42℃ながら高負荷時で86℃を計測。一般的なCPUクーラーと比較しては酷だが、ヘビーな使い方をしなければ、常用も可能だろう。
今回の検証で感じたのは、これほど万全な冷却機器をもってしても、高負荷時で80℃が切れないということ。「FX100」を通じて、ファンレスの限界を知ったような思いだ。ただし補足しなければならないのは、検証はあくまでバラック状態である点。PCケース内に搭載すれば、ケースファンによる風の流れが筐体内に存在し、その恩恵から冷却能力が向上する事は容易に想像できる。さらにサンプルがTDP77WのCPUである点も付け加えよう。公称対応TDPが95Wとはいえ、ファンレスPCを構築するなら、末尾「T」や「S」をチョイスすべきだ。
「FX100」は、92mm口径の冷却ファン搭載にも対応し、検証では高負荷時60℃台を計測している。CPUクーラーとしてのポテンシャルは、既存のアッパークラスと肩を並べる実力であることが証明された。ただし、冷却ファンを搭載する事を前提にするならば、積極的に「FX100」をチョイスする理由が若干薄くなってくる。やはりファンレスで使いたい。
個人的な趣味が高じ、これまでファンレスを謳うCPUクーラーを数種類テストしてきたが、「FX100」は現世代モデルだけあって、最上位レベルであることは間違いない。言い換えれば、「FX100」で駄目なら完全ファンレス化を見直すか、諦めるしかないだろう。