エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.243
2013.06.18 更新
文:GDM編集部 松枝 清顕/池西 樹
ENERMAXのCPUクーラーといえば、2011年7月に検証したサイドフロー型「ETS-T40」シリーズが記憶に新しい。すでに2年が経過しようとしている製品だが、その高い冷却能力は、市場に大きなインパクトを残した。
その数か月後、今度はトップフロー型「ETD-T60」シリーズを投入し、さらに2012年末には待望のオールインワン水冷キット「ELC120/240」シリーズをローンチ。先にお届けした検証でも好成績を収めた。
トップフロー型「ETD-T60-TB」(左)と以前お届けした検証でも好成績を収めた「ELC240」(右) |
このようにENERMAXは、決して新製品を乱発することなく、着実かつ堅実にCPUクーラーカテゴリを育てている。今回取り上げる「ETS-T40-W」は、第1弾となる「ETS-T40」と同一型番。末尾の枝番に「-W」を付けられている事から、単にバリエーションモデルの登場と解釈する人もいるだろう。実は当初、筆者も同じように考えていたが、スペックシートや資料を見ると、単なるカラーリングで目先を変えただけのモデルではないらしい事が分かった。
リリースタイミングから読み解けば、これはHaswell世代に向けた新製品であることは明白。エルミタの検証でも好成績を収めた「ETS-T40」シリーズの新モデルは、約2年の歳月を経てどのように進化しているのだろうか。
「ETS-T40-W(White Cluster)」市場想定売価税込5,980円 製品情報(株式会社クーラージャイアント)(株式会社リンクスインターナショナル) |
冒頭触れたように、「ETS-T40」シリーズと同一型番である事から、少々その存在が分かりにくい新作「ETS-T40-W」。手元資料で既存モデルと新作のスペックを見比べてみると、外形寸法もヒートシンクの特徴、さらに受熱ベース部に至るまで変更は加えられていない。ただしCPUクーラーとしては珍しく、ヒートシンクが白色に塗装され、さらに白色LED搭載冷却ファンがマウントされている点は外観上の大きな特徴といえる。これだけならアイキャッチだけでオシマイだが、実はこの塗装に進化の秘密が隠されているらしい。
同一シリーズながら、パッケージデザインが刷新された「ETS-T40-W」(White Cluster」。TDP200W+ Supportの文字が高冷却ぶりをアピールする。対応ソケットは、Intel LGA2011/1366/1156/1155/1150/775、AMD Socket AM2/AM2+/AM3/AM3+/FM1/FM2 |
コーティングに使われている塗料はただのカラーリング要素ではなく、熱伝導性の高いTCC(Thermal Conductive Coating)と呼ばれ、ENERMAX曰く「世界トップクラスの熱抵抗性能0.085℃/Wを実現」するという。これこそが、既存「ETS-T40」との大きな違いだ。
PCパーツの冷却機器で目にする熱抵抗性能(熱抵抗値)とは、”熱の伝わりにくさ”を表すもので(1Wあたりの温度上昇を表す値)、数値が大きくなればなるほど、熱が伝わりにくい(例:断熱材なら、この数値が大きいほど熱遮断効果が高くなる)。一方、CPUクーラーのような冷却機器の場合、数値が低いほど性能が高くなる。また、熱伝導率という数値もよく目にするが、こちらは”熱の伝わり易さ”を表し、逆に数値が大きくなるほど、熱が伝わり易い。いずれも数値による客観的データであり、前者はCPUクーラー、後者はサーマルグリスの性能判断では重要な数値だ。
これらを覚えておき、いろいろなCPUクーラーと見比べる事で、「ETS-T40-W」の熱抵抗性能0.085℃/Wは非常に優秀であることが分かるはずだ。ただし付け加えると、この数値は熱源や使用環境により変化することも知っておく必要がある。
新型「ETS-T40-W」のキモとなる、TCC(Thermal Conductive Coating)。ヒートパイプ末端までコーティングが施され、既存モデルよりも高い熱抵抗性能を実現する |