エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.260
2013.08.22 更新
文:GDM編集部 松枝 清顕
続いて動作音を計測してみる。冷却能力は文句なし合格の「Reserator3 MAX」だが、静音動作との両立は誰もが期待するところだろう。今回の計測は、PCケース前面から30cmの位置にデジタル騒音計を設置。アイドル時と高負荷時いずれも標準ファンのみを動作させた状態で計測を行った。なお室内騒音値は29.2dBAだった。
室内騒音値29.2dBA |
アイドル時は34.5dBAで十分に静音状態といえる。ポンプの動作音や冷却液の循環音もほぼ感じないレベルだった。ただし高負荷時は43.8dBAになり、30dBAをキープすることはできなかった。実際に耳で感じる音量も、数字に表れているとおり静音とは表現し難く、オープンフレームファンからの風切り音が耳に付く。今回のテストではPWMの設定はデフォルトのままだが、CPU温度との兼ね合いを見ながら、BIOSレベル(またはユーティリティ)で各自チューンを行えば音の問題は解決できる。ここは「大は小を兼ねる」と解釈しよう。
フレームが無いだけに、広い角度から風を取り込む事ができるオープンフレームタイプの冷却ファン。一方で大きな風量を生み出すことから、騒音値も大きくなる傾向にある |
テストセッション最後に、冷却ファンの回転数をチェックしておこう。このテストはデュアルファン構成時、標準搭載ファンの回転数に違いがでるのかがポイント。排熱能力が向上する事で、CPUクーラーとしての能力はUPしている。これにより標準搭載ファンの回転数は最大まで必要としないのではないかと期待してみたワケだ。なお数値は「HWMonitor」でモニタしている。
室内温度29.6℃/湿度56% ※増設ファンは1,200rpm(固定/表示確認済み) |
デュアルファン構成にした分、標準ファンの回転数が落ちるかと思いきや、全く変化はみられない。数値こそ掲載していないが、耳で聞こえるレベルでのデュアルファン動作時の音は、標準ファンのみの状態とさほど変わらなかった。つまり数値上でも違いがでるはずもなく、結果は期待外れ。デュアルファン構成にした場合でもその影響を受けることなく、最大/最小共に回転数は安定して動作し続けていた。
初代「Reserator 1」は巨大な円柱形状のファンレス、2代目「Reserator 2」はオイルヒーター風スタイルを採用し、いずれも自作市場で大きな話題を呼んだ。派生型は別として、今回取り上げた3代目となる「Reserator3 MAX」は、一見市場に出回る多くのオールインワン水冷ユニット同様の形に落ち着いてしまったかのうように思える。しかしトップフロー型CPUクーラーと見紛う「ラジエター」は、役割こそラジエターだが、実際にはZALMANがこれまで培った空冷クーラーの技術を応用した独自の「冷却機器」そのものだ。「Reserator」シリーズを冠する製品が、オーソドックスであるワケが無い。
その証拠に、ZALMANでは「LQ320/315/310」というモデル名でオールインワン水冷ユニットがひっそりとリリースされているが、「Reserator」の文字は見当たらない。ZALMANが「Reserator」を単なる水冷クーラーとしてではなく、特別な存在と位置付けている事は想像できる。製品リリースのロングスパンは無理もない。
前作から約5年の歳月を経て、再び自作市場に戻ってきた「Reserator」は、スタイルこそ違えど、その「理念」を脈々と受け継いだ冷却機器だった。