サイドフローなのか？トップフローなのか？

• 編集部：
  サイドフロータイプとトップフロータイプの違いやこだわりはありますか。
• 杉田氏：
  こだわりはないですが、CPUを冷やすということを第一に考えるのなら、サイドフロータイプが最適だと考えています。
• 編集部：
  それはなぜでしょう？
• 杉田氏：
  ヒートパイプの向きです。理想はなるべく重力に逆らわないように熱移動する方がいいわけですから。
• 渡辺氏：
  PCの有り様によって、サイドフロータイプとトップフロータイプの両方の使い分けが必要だと思います。ロープロCPUクーラーを作る場合のデザインは、トップフロータイプ一択と言っても過言ではありません。それぞれのタイプで最適な設計とデザインを常に心掛けてます。

ワンオフで製作してもらったという杉田氏特注のCPUクーラー検証台。PCケースに組み込んだ状態を想定し、なるべく実際に利用する条件に近い環境を再現できる

• 編集部：
  オリジナルのCPUクーラーですが対応TDPの表記がない事に、なにか理由があるのでしょうか。
• 渡辺氏：
  昔から敢えて表記していません。200Wや300WというTDPを謳うメーカーもありますが、テスト環境や計測方法の根拠が示されていないなど、誰もが納得できる客観性に乏しく、中には事実上意味を成さない表記も残念ながら見受けられます。ショップからは「記載してほしい」と言われることもありますが、そんなときは「販売しているCPUであれば大抵は冷やせます」と答えるようにしています。
• 編集部：
  オリジナル水冷クーラーの予定はあるのでしょうか。
• 渡辺氏：
  作ろうと思えばそれほど難しくありません。ただし、現在では市場が飽和気味で、ライバル製品も多いため、今から参入するメリットをあまり感じていません。現在扱っている「APSALUS3-120」で十分かなと。

サイズブランドの120mm口径ファンラジエターモデルでは3代目にあたる「APSALUS3-120」。製造元はAsetek

• 杉田氏：
  中には冷えないモデルも少なくないですね。中途半端に水冷を使うくらいなら、空冷クーラーでしっかりと冷やしてあげた方が絶対にいいですよ。
• 編集部：
  ではケースファンについても少し話を聞かせてください。開発は台湾でおこなっているんですよね。
• 杉田氏：
  そうです。向こうの大学の研究室を借りてテストを行っています。試作品ができると持ちこんでテストというのを繰り返しているようです。

ブレード（インペラ）部のスリットは、台湾開発チームの“ファンマニア”によるもの。「試作機ができるとすぐに研究室でテストして、なにやらニヤニヤしながら帰ってくるんです」とは杉田氏の談

• 編集部：
  開発はあくまでファン単体で、CPUクーラーとのマッチングなどは考慮していないのですか。
• 杉田氏：
  開発段階ではファンのことしか考えていません。CPUクーラーに搭載するモデルを選ぶ段階で、回転数等の設定を一緒に詰めます。ただ、サイズのCPUクーラーはファンの回転数をどうしても低めに設定するんですね。例えば「虎徹」が採用するファンは「隼120」のPWMモデルで、回転数は400±200rpm～1,400rpm±10％です。正直なところ個人的にはもう少し高めに設定してもいいのではないかと思うところもあるのですが。

「小軸＆大型ブレード」という特徴を継承しつつ、スリットを備え空気抵抗を軽減した「隼120」。「虎徹」では回転数400±200rpm～1,400rpm±10％のPWMモデルが採用される

• 編集部：
  最近では120mmクラスで2,000rpm前後のモデルも珍しくないですからね。
• 杉田氏：
  ここは難しいところです。人によっては800rpmでもうるさいと感じる方もいますから。「虎徹」の1,400rpmにしてもキリが悪いため、なぜなんだと開発チームに聞いたところ、1,900rpmくらいから回転数を徐々に落としていき、一番性能が落ち込む寸前のポイントに設定したということです。また全開で回しても気にならない回転数というのを目安にしています。それが「虎徹」の場合は1,400rpmだった。