「極端に安い製品には要注意」な電源ユニット
- 編集部:
電源ユニットのラインナップの豊富さにも定評のあるサイズですが、今の電源カテゴリはいかがでしょう。
- 渡辺氏:
最近の急激な円安のせいでしょうか。一時なりを潜めていた80PLUS非対応の激安電源ユニットが増えてきましたね。相変わらず品質の悪さは変わっていません。容量を100W~150Wは詐称しており、謳っている数値は出ません。
- 編集部:
電源ユニットを扱うメーカーとして、店頭でユーザーでも分かる判断基準などあるのでしょうか。
- 渡辺氏:
店頭で見るだけでは難しいですね。知識を持って中身を開けてみないことには分かりません。ただしPCパーツに限らず「極端に安いものはおかしい」です。もちろんセール等で安い場合もあります。弊社でも在庫の関係で値下げをする場合がありますから。そういう時はどんどん買っていただいて構わないのですが、「いつでも安い」というのは、絶対になにか理由があります。
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2011年1月の発売以来、ロングセラーとなっている人気の電源ユニット「剛力短2プラグイン」。奥行き123mmを実現したショートタイプのプラグインケーブルモデルだ |
- 編集部:
秋葉原の店員も、電源ユニットを自分で買う際にはお金をかける傾向にあるようです。安い電源を使っているという話はまず聞きませんね。何かあった場合、結果的に高くつきますから。
- 渡辺氏:
難しいと思いますが“モラル”の問題ですね。ひいては自作市場に対する信頼性や自作市場そのものの健全性にも関わってきますので、その点には大いに危惧しています。
- 編集部:
購入する側も、粗悪品を買わない判断をする目が必要なのかもしれませんね。
- 渡辺氏:
もうひとつ言っておきたいのが、”自作”イコール”安い”という考えはもはや過去のものです。現在はむしろ逆に、自分の納得のいく性能やデザインのパーツを相応の価格で組み合わせていくものに変わったと思います。我々自身この変容を忘れ勝ちで、この”自作”イコール”安い”というある種の”神話”を引っ張り過ぎたような気がします。もちろん安く組もうと思えば可能です。でも自作PCの魅力は、メーカー製PCにはない自分だけのこだわった部分がある、趣味性の高いところですよね。安いPCが欲しければ、いくらでもメーカー製がありますから。
なぜサイズなのか?
- 編集部:
サイズ製品のネーミングルールというのはあるのでしょうか。「鎌」が付いたり、CPUクーラーだと「阿修羅」や「虎徹」だったりと、なんとなくジャンルのようなものは推測できますが。
- 渡辺氏:
特にありません。日本発信という意味で漢字表記にはこだわっていますが。CPUクーラーなどは台湾の開発チームが決めていますね。電源ユニットは「鎌力」時代から自分だったりします(笑)。
- 杉田氏:
あ、そうなんですか?すいません、今初めて知りました(笑)。
- 編集部:
なんで「サイズ(Scythe)」なんですか?英語で「大きい鎌」みたいな意味ですよね?
- 渡辺氏:
当初、武器の名前を会社名にしたいと。PCパーツというエッジの効いたものを取り扱うに当たって攻撃的なイメージにしたかったのです。それでいろいろ調べたのですが、ほとんど商号として取られていた。あったのが「サイズ(Scythe)」だったというわけです。ちなみにEU圏では「スカイズ」という発音になります。彼らとの打ち合わせで「スカイズ」と言われても初めは気付きませんでした。
- 編集部:
最後になりましたが、自作ユーザーに一言お願いいたします。
- 渡辺氏:
今まで通りのサイズで、変わらずにいきたいと思っています。魅力的な製品を作り続けますので、自作からしばらく離れていたという方も、是非この機会に戻ってきてもらいたいですね。
らしさを追求したモノづくりに邁進する「サイズ」ブランド
今回のインタビューを通じて感じたのがサイズらしい「中庸」な製品に対してのプライドだ。「なるべくいい性能でなるべく安く」のモノづくり精神に基づき、高い技術力と蓄積したノウハウ使い、コストパフォーマンスに優れた製品を市場に提供し続ける。これこそ、浮き沈みの激しいPC業界において、長年に亘りユーザーから多くの支持を得続けている理由ではないだろうか。
今後も国内では希少なPCパーツメーカーの代表として、国内のみならず世界に向けて魅力ある製品を発信し続けてくれるにちがいない。