エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.277
2013.11.08 更新
文:GDM編集部 松枝 清顕
すでに解説済みだが、「Enthoo Primo」は電源ユニットが2台搭載できる。なおメインの電源ユニットの搭載エリアは、マザーボードトレイ背面であり、表面マウントではケーブルマネジメントがしにくい。
さて電源ユニット搭載スペースだが、メインエリアは標準で実測220mm、搭載スペース延長線上にあるポンプ専用設置台「PUMP BRACKET」を移動すれば実測240mmが確保できる。またセカンダリエリアは実測345mmだった。
横幅に制限があるため縦マウントされる電源ユニット。だが、これができるのも650mmもの高さがあってこそ。意外に違和感がない |
「Enthoo Primo」における、ケーブルマネジメント機構は、一般的なミドルタワーPCケースとは少々事情が違う。今さら説明するまでもなく、メインの電源ユニットをマザーボードトレイ背面にマウントすることで、そもそもケーブルの「出所」がPCケースのメインエリアに無い。自ずと裏配線からスタートする設計だけに、「いかにケーブルを背面に引き回すか」ではなく「いかにケーブルを表面に引き回すか」がポイントになってくる。
実際に配線を行ってみたところ、大型PCケースだけに、マザーボードトレイ面積も広く、ケーブルマネジメントホールも複数あり、使い勝手は極めて良好。スムーズに作業を進める事ができた。
マジックテープ式のケーブルバンドを複数箇所に装備済み。これをマザーボードトレイの穴に通し、要所に固定されていた。実に使い勝手が良く、全てのPCケースで採用すべき装備品だ |
CPUクーラーメンテナンスホール(カットアウト)とケーブルマネジメント(裏配線)の使い勝手を左右する、マザーボードトレイとサイドパネル間の空きスペースも忘れずに確認しておこう。
CPUメンテナンスホールの開口部は実測で最大縦約150mm、横約205mmだった | マザーボードトレイとサイドパネル間は公称30mm |
フルタワーPCケース「Enthoo Primo」の検証もいよいよフィナーレ。おしまいにボディ外周を彩る発光ギミックをご紹介しよう。
このモデルはフロント140mm口径冷却ファン2基(標準搭載)にBlueLEDが内蔵されており、動作中はフロント部分を鮮やかに彩る。加えて本体右端のぐるりをブルーのラインが発光するという、これまた美しい仕掛けも用意されている。POWERスイッチボタンを中心に、トップパネルとフロントパネルの縁を直線の光が走る。決して過度な演出では無く、チープな感じは一切ない。
適度な輝度により、派手な印象は一切無い。さらにLED ON/OFFスイッチにより、フロント140mm口径冷却ファンのLED共に消灯も可能 |
再三触れてきたように、「Enthoo Primo」はDIY水冷の、それもヘビーユーザー向けに企画・設計されたフルタワーPCケースだ。
PhanteksのPCケースカテゴリ第1弾としては十分過ぎるほどのインパクトは、世界中の自作PCメディアが注目し、その詳細は数多く紹介されている。ちょうど本稿の掲載がスタートする頃には、国内市場でも間もなく発売が開始れるという辺り。さて日本の自作派にはどのように受け入れられるのだろうか。
ここまでの検証から、DIY水冷に特化した数多くの仕掛けばかりが目立つものの、非水冷ニーズとの折り合いが適度につけられた設計である事が分かった。一風変わった内部構造は、従来の空冷ユーザーでも十分楽しめるだろう。
とはいえ、やはりDIY水冷のヘビーユーザー視点から作られたPCケースである事に変わりはない。恐らく設計者は、これまで市場に流通した同種コンセプトのPCケースを熟知し、その差分を盛り込んだに違いない。ポンプ専用の台座、リザーバーのマウントスペース、大型ラジエターのために割り当てた上面と底面のスペース、チューブ配管用の内部ホール等、どれをとっても抜かりはない。さらに事前に詳細を出さないメーカーが多い中、各々のスペースやネジピッチ等の詳細図面が開示されている点は実に心得ている。「買ってみなければ分からない」は極めて不親切であり、心当たりがあるメーカーは「Enthoo Primo」を見習うべきだ。売価35,000円前後はなかなかの迫力だが、それに見合っただけの価値は、十分感じられた。
褒めてばかりでは気味が悪い。そこで敢えてマイナス点を指摘すると、移動時に持つところが少ない点はいかんともし難い。大型PCケースの場合、構成パーツを組み込むとかなりの重量になる。設置時や増設時、さらにバックパネルI/Oへのアクセス時等、都度苦労する事になりそうだ。これについては次回作以降に期待しよう。PhanteksのPCケース部門はまだ始まったばかりだ。