エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.280
2013.11.18 更新
文:GDM編集部 松枝 清顕
オールインワン水冷ユニットを構成する、ポンプ一体型ウォーターブロック、ラジエター、冷却ファン、そしてチューブに至るまで、全てのチェックが完了した。通常ならばこの後にテストを始めるところだが、今回は趣向を変え、禁断の分解に挑戦してみたい。
今さらお断りするまでもなく、オールインワン水冷ユニットはメンテナンスフリーで設計されているため、設置後は製品寿命まで手間いらずで使用できる。水冷で最も取り扱いに注意が必要なクーラント液が予めユニット内に封入されているおかげで、誰でも手軽に使用できるワケだ。一方で出荷状態での水漏れ対策が万全なだけに、メーカーはいかなる改造行為も認めてはおらず、2年の製品保証はツルシ状態での使用が条件だ。
そもそもクーラント液の補充ができないように設計されているため、ネジ類を外して液漏れを起こせば、たちまち使用不能になる。つまり分解になんらメリットはない。今回の試みはあくまでイレギュラーであり、事前にメーカーおよび代理店には了解を得ている。内部を見たい欲求は本稿で満たし、くれぐれも真似をしないで頂きたい。
分解厳禁のオールインワン水冷ユニットだが、よく見ると多くのネジが剥き出しになっている。その殆どにヘクサロビュラタイプのネジが使用されていた。高いトルク伝達性で知られ、精密機器ではよく使われるネジだが、一方で簡単に外す事ができないため、この手の製品には都合がいい。
何はともあれ、まずはポンプ一体型ウォーターブロックからバラバラにしていこう。
禁断の分解作業がスタートしたワケだが、この後はいよいよベースプレートにある8本のネジを外していく。念入りなネジ本数からも分かるように、この中にはまさにクーラント液が閉じ込められているだろう。つまりネジを外した時点で、封入されたクーラント液が漏れ出す事を意味する。そこでここからはトレイを用意し、液漏れ対策を行った上で作業を進めていこう。
用心深く取り付けられた8本のヘクサロビュラタイプネジを、専用工具を使いひとつずつ丁寧に外していく。タルに剣を刺し、ハズレを引くと黒ひげの人形が飛び出す玩具さながら、どのネジを外した時点からクーラント液が漏れ出すのか、にわかに緊張感が増してくる場面だ。ジワジワ漏れ出すのか、はたまた内圧で一気に噴出するのか。一連の作業で最初の山場を迎える。
ベースプレートを外したところで、特許取得「SCT」(Shunt Channel Technology)をじっくり見ていこう。分解しなければ普段はお目に掛かることがないベースプレートの裏面には、ヒートシンクのようにフィンが装備されている。この四角い固まりの中央部には縦に溝が設けられており、クーラント液の流れを作りだす。滞留を排除する事で通常よりも効果的な熱伝導と冷却性能向上が図られているというワケだ。