エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.288
2013.12.21 更新
文:GDM編集部 松枝 清顕
「ARC Mini R2」の特徴でもある、ラジエター搭載スペース。数あるMicroATX対応ケースの中から、このモデルを選択する大きな理由にもなり得る、まさに「ウリ」の部分だ。ここでは現実的なマウントを想定し、トップ部の搭載スペースにラジエターを搭載してみることにしよう。
「ARC Mini R2」ラジエター搭載可能スペース(マニュアル抜粋) |
トップ部には選択肢の多い240mmサイズのみならず、5.25インチオープンベイユニットを取り外す事で、120mm口径ファン3連となる360mmサイズのラジエターも搭載できる。とてもMicroATX対応ミニタワーとは思えないが、水冷ユーザー用に最適化された設計により、ミドルタワーにも劣らない高冷却環境を構築する事ができる。
27mm厚ラジエターに25mm厚120mm口径ファンを組み合わせ、トップ部にマウント。マザーボードとの距離も十分で、物理的干渉を起こすことは無かった |
組み込み後のCPUクーラーの換装に利便性を発揮する、CPUクーラーメンテナンスホール。説明するまでもなく、マザーボードを取り外すことなく、CPUソケット背面にアクセスできる便利なギミックだ。とはいえ、ギミックと呼ぶにはおこがましく、単に該当部分を切り取っただけだが、「ARC Mini R2」ではそのカット範囲が少し足りないようだ。
今回搭載したマザーボードは先日詳細レビューをお届けしたMSI「Z87M GAMING」だが、ソケット位置の関係でCPUクーラー用の穴下2つがちょうどマザーボードトレイに隠れてしまった。
高さは十分だけに、全体的にカット位置を下方向にずらすべきだろう。このままではバックプレートを使ったCPUクーラーに換装する事はできなかった |
CPUクーラーの有効スペースも確認しておこう。「ARC Mini R2」はMicroATX対応ミニタワーにカテゴライズされるものの、横幅はミドルタワーPCケースクラスの210mmだ。よって、CPUクーラーの搭載スペースも高さ約165mmまでサポートされている。無茶をしない限り、通常のサイドフロー型CPUクーラーなら問題無くマウントできるワケだ。
約165mmもの高さがあれば、大型サイドフローCPUクーラーも搭載できる。ちなみに左サイドパネルはフラット構造だけに、出っ張りが干渉する等の心配も無用 |
フロントトップ部の右端には、スライドスイッチ式のファンコントローラーが装備されている。せっかくのギミックだけに、動作確認をしておこう。
PowerスイッチやUSB3.0ポート等が並ぶフロントトップ右端には、3段階切替式のファンコントローラーが装備されている |
3段階切替式のファンコントローラーは電圧制御タイプで、5V、7V、12Vの3パターンで設定が可能。接続できる冷却ファンは最大3基で、ファンコントローラーユニット部からは3pinコネクタケーブル3本を装備。接続された冷却ファンを一括で制御するというものだ。
室内騒音値(28.6dBA) |
標準搭載される3基の冷却ファンを接続し、動作を検証したところ、最低回転となる5Vで29.6dBA、7Vで30.6dBA、12Vで34.1dBAという結果だった。耳に聞こえる感覚では、5Vと7Vの違いは感じる事はできず、ようやく12Vで回転数が上昇している事が分かる程度。30dBA程度の騒音値であれば、最大回転でも十分に静音状態を保つ事ができる。
机上で鎮座する私物の某MicroATXケースを尻目に、ここまでFractal Design「ARC Mini R2」を検証してきた。細部のチェックを進めるうちに、このモデルのコンセプトは明確な「高冷却志向」にあることが分かる。MicroATXである事を決して言い訳にせず、ラジエターの搭載スペースを気前よく割り当て、それでいてコンパクトなミニタワーのプロポーションは崩さない。
完全密閉がFractal Designのお家芸と思いきや、フロントメッシュも気にならず、標準搭載される「Silent Series R2」シリーズの動作音は極めて静か。音に敏感な人でもファンコントローラーで5Vまで電圧を絞ることができる。ストレージ格納力も平均点を楽にクリアし、長モノグラフィックスカードへの準備もできている。唯一、CPUクーラーメンテナンスホールの位置でつまずいたが、印象を悪くするほどのダメージではなく、総じて非常に完成度の高いPCケースという感想に変わりはない。
売価1万円を切るPCケースとは感じさせない工作精度もあいまって、ライバルモデルと人気を二分する存在となりそうだ。