エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.303
2014.02.17 更新
文:GDM編集部 松枝 清顕
最後に水冷について考えてみたい。結論から言えば「RVZ01」は水冷システムの構築について、「可能」としている。水冷ヘッドに関しては、近頃のオールインワン水冷ユニットのポンプ一体型は非常にコンパクトにできており、CPUクーラー有効高83mmのスペースは十分と言えるだろう。意外にも「RVZ01」では、オールインワンよりもDIYタイプの水冷が推奨されており、ポンプの設置場所として、フロントパネル中央裏に位置する2.5インチシャドウベイ(トレイ)が使用可能とされている。
マニュアルに掲載されている、ポンプの取付穴位置の図。若干日本語が怪しい点はご愛敬ながら「十分な予算がある場合、当社はDIYの水冷を使うようお勧めいたします。(ママ)」と明記されているのだ |
次にラジエターだが、ボトム部(横置き時)に120mm口径ファン×2基が並ぶことから、240mmサイズのラジエターがマウントできる計算だ。実際にオールインワンタイプながら240mmサイズラジエターで搭載を試みたところ、左右方向には余裕があり、問題無くマウントできた。ただしひとつ気にしなければならないのは、「RVZ01」の設計上、ラジエターの上面にグラフィックスカード・サポートブラケットが覆い被さる点だろう。
スモールPCの限られた空間では、とかく互いの構成パーツ同士がトレードオフの関係になることがある。ここでは、240mmサイズラジエターを搭載することで、2スロット占有タイプのグラフィックスカードは搭載できず、1スロットタイプを選択する事になる。なおDIY水冷を推奨する「RVZ01」としては、グラフィックスカードの水冷化も想定されており、突起の少ないフルカバータイプのウォーターブロックをチョイスするように推奨されている。
COMPUTEXで展示されていたモデルのグラフィックスカードには、ウォーターブロックが装着されていた |
Mini-ITXマザーボードに搭載されるチップセットは、主力であるATXフォームファクタとなんら変わりがなく、17cm四方の基板サイズながら、十分にハイパフォーマンスなPCを組み上げる事ができる。ただし、搭載できるスペースがあれば、という条件付きだ。
一方でMini-ITXをチョイスする第一義は、スモールPCにあるはずだ。いくら対応するとはいえ、フルタワーPCケースにMini-ITXを載せるという人は極少数(いや皆無に近い)だろう。拡張性も重要視しつつ、できる限りコンパクトなPCにしたいと思うのが、Mini-ITXユーザーの多くの声ではないだろうか。
これらを整理すると、「ATX並のポテンシャルを秘めたMini-ITXマザーボードに、ミドルハイクラスのグラフィックスカードが搭載でき、かつスモールPCのスタイルを崩さない」、このベストミックスが現在Mini-ITX対応PCケースに求められている。
新作「RVZ01」は、「RAVEN」シリーズの新境地として投入された。歴代の大型ゲーミングPCケースをイメージする自作派にとって、Mini-ITX対応スリム型PCケースというスタイルは理解しにくかっただろう。しかし今回検証を行い、紛れもなく「RAVEN」である事が分かった。誰もが想像する従来のスリム型PCケースとは違い、「RAVEN」シリーズ開発者が提唱する新たなスモールPCの形がそこにある。ただ実用的PCとして組み込むのではなく、所有欲を満たすことも忘れていない。自作の楽しさやこれまで培ってきたテクニックを存分に発揮できるベースとして、十分に役割を果たしてくれる。
ある意味、歴代「RAVEN」シリーズ中、最も「RAVEN」らしいモデルではないだろうか。