エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.306
2014.02.28 更新
文:GDM編集部 松枝 清顕
次に水冷ユニットをマウントしてみよう。搭載テストに用意したのは、以前検証を行ったオールインワンタイプのAntec「Kuhler H2O 1250」だ。Antecが各社横並びのスタイルに一石を投じ、冷却ファンとポンプを一体としてラジエターに固定させた、異例のスタイルが特徴。冷却ファンの回転数等が制御できるユーティリティソフトウェア「GRID」も同梱される意欲作だ。ただし、高冷却能力を狙うデュアルファン・デュアルポンプの240mmサイズラジエターは大型で、PCケースを選ぶデメリットが懸念されるワケだが、、、。
Antec「Kuhler H2O 1250」 市場想定売価12,980円前後 製品情報(株式会社リンクスインターナショナル) |
さすがに同一メーカーの新作PCケースだけあって、トップ部のラジエター搭載スペースは、一般的なミドルタワーPCケースよりも”嵩上げ”されており、「Kuhler H2O 1250」迫力の冷却ファン+ポンプ一体型ラジエターは、難なくマウントする事ができた。
冷却ファンに搭載されたポンプ、さらにL字に配管されたチューブの出っ張りが大きく、搭載が懸念されたが無事搭載完了。リア120mm口径ファンとの物理的干渉もない | |
トップ面からマザーボードの基板末端までの距離は実測約65mm。これだけのスペースが確保できれば、マザーボード搭載の大型ヒートシンクも回避できるだろう |
ケーブルマネジメント機構の使い勝手の良さも、良品PCケースの重要な要素のひとつ。「P100」は、マザーボードトレイに用意されたスルーホールを要所に備え、内部配線はスッキリ整理整頓。背面は決してケーブルを無理に押し込む事は無く、十分に確保されたスペースに収められるように設計されている。自作初心者でも、スルーホールからデバイスまで最短でケーブルを配線すれば、将来的な拡張も楽に行うことができるだろう。
ストレージデバイスを残すのみとなった、ほぼ完成状態の背面はご覧の通り。特別なことは一切しておらず、3本のタイラップを使っただけでもスッキリと配線できている | |
なおCPUクーラーメンテナンスホールのカットアウトは、横約220mm×縦約150mmだった。「Kuhler H2O 1250」のバックプレートが小振りに見えるほど開口部は広い |
最後のセッションでは、「P100」の静音性をデジタル騒音計でチェックしてみよう。3mm厚のスポンジを貼り合わせた「P100」的「二層構造」の静音効果はいかばかりか。
今回のテストでは、Intel Core i7-4770Kを「Kuhler H2O 1250」(600~2,400rpm PWM)で冷却。フロントおよびリア標準搭載ファンはいずれも「HIGH」の1,100rpm±10%設定とし、アイドル状態での動作音を計測した。ちなみにアイドル状態にした理由は、高い騒音状態より低い動作音状態の方が差が出にくく、シビアな環境での遮音効果を知ろうという狙いがある。
なお検証は「二層構造」の両サイドパネルを閉じた状態と、開いた状態それぞれをデジタル騒音計で計測している。
※デジタル騒音計を用い、フロント部から30cm離したポイントで計測 (室内騒音値28.6dBA) |
サイドパネルを開いた状態で32.6dBA、二層構造の遮音サイドパネルを閉じた状態では29.8dBAになった。耳で聞く感覚では、サイドパネルを開いた状態でも十分静音状態だったが、遮音サイドパネルで音を閉じ込める事で、さらに2.8dBAも静音化できる。「P180」や「P280」と違う遮音構造だけに効果を懸念していたが、どうやらその心配は無用のようだ。
今回取り上げた「P100」は、「P180」「P280」とは一線を画した設計により、「Performance One」シリーズのエントリーモデルという位置付けを担っている。その象徴が、製品のキモとなる「遮音パネル」の構造だ。
従来モデルが採用する硬質素材をサンドイッチさせた剛性の高いサイドパネルから、3mm厚のスポンジを貼り付けたものに取って代わり、コストダウンが計られている。実際「P280」のように、サイドパネルをコツコツと叩くだけで分かる独特な「安心感」を味わうことはできない。その感覚が好きだったAntecファンからすれば、「Performance One」シリーズらしからぬモデルと感じるかもしれない。
余談ながら、良品PCケースはフレーム状態でも立ち姿が美しい。「P100」もその素質を十分に持ち合わせている |
しかし評価サンプルの細部を見渡せば、Antecらしい内部設計は健在。グロメットやトレイの形状など、兄貴分の面影は随所に感じる事ができる。さらに懸念された新・遮音パネルによる静音効果については、サイドパネル有無による騒音値計測により、客観的な数値で実力を証明してみせた。
市場想定売価11,480円に設定されている「P100」だが、間違いなく同価格帯トップクラスの出来映えであり、現状ライバルを見つけることは難しい。Antec伝統の「Performance One」シリーズに属するだけの説得力は十分にあり、単なる廉価版と位置付けるのは間違いである事が分かった。年単位でロングセラーモデルになる可能性は高い。